参議院選挙で年金問題が大きな争点になっています。鶴岡市議会でも先の6月定例会でこの問題について討論がおこなわれました。日本共産党市議団が提案した請願に関して、黎明公明の秋葉議員が反対討論、私が賛成討論をおこなったものです(他に、みどり21の草島議員が賛成討論)。議会から一ヶ月余り経過しましたが、今時参院選に繋がる問題として、ご報告しておきます。
私の要約です。
(秋葉議員反対討論)
消えた年金記録とする表現そのものも、いたずらに国民の不安をあおるためにするセンセーショナルな表現。年金が消えたわけではなく、基礎年金番号に統合されていない記録が3億件のうち、いまだ5,000万件残っているということが真実。
5,000万件については、政府与党として対応策を矢継ぎ早に打ち出し、受給資格のある人が受給できないことのないよう、さらには年金制度そのものに対する信頼が根本から失われることのないよう配慮がなされている。
そもそも、なぜ今回のような年金記録問題が起こったのか。
第1に、基礎年金番号を導入する際の制度設計と導入後の統合システム上の問題点であり、基礎年金番号の統合をいつまでに完了するのか具体的な計画がなかった点や導入後のチェックシステム、進捗状況の確認などの体制が不備であった。
第2に、社会保険庁というお役所の職員団体に支配された、やる気のない業務効率の低い組織体質が問題。社会保険庁当局と職員団体との間で交わされた102件にも及ぶ覚書、確認事項、いかにこのお役所が国民の利益よりも労働条件を優先してきたか。
第3に、国民の立場に立ったサービス精神を欠く職員体質。大事な年金記録を間違いなく年金支給につなげるという責任感の欠如、加入者から指摘されるまで積極的に統合を進めようとしない庁の姿勢、保険料のむだ這い、年金記録ののぞき見など、公務員のモラルの欠如。
以上のような原因や責任をはっきりさせることが問題解決の第一歩であり、一部政党やマスコミのように実態に目をつぶり、選挙日当てに国民の年金制度に対する不信感をあおるような言動は、厳に慎まなければならない。
その上で、今回の意見書案である4点の要望項目を見ると、1については現在政府で現役世代も含めて調査対象とすることになっており、安倍総理も1年以内に5,000万件の調査を完了すると発言、これ以上重みのある言葉はない。
2の年金記録情報を該当者と想定される人に提供するという作業も、1年以内に名寄せを完了させ、それに基づくお知らせも、平成20年度中に完了させることになっている。加入履歴については、明年4月から、年金定期便ですべての年金加入者に、35歳、45歳、58歳など節目の年齢にお知らせすることになっており、政府与党として、この加入履歴のお知らせをすべての年金加入者に拡大するよう検討が進んでおり、近く発表される予定。
3は、第三者委員会を国が6月中に設置、7月には各都道府県に所在する総務省の出先機関に設置することになっており、証拠書類がない場合でも積極的に受給権を認める立場から、総合的に判断することになっている。
4も、電話相談はこれまでの6倍の人員を拡充するとともに、社会保険事務所についても従来の第2土曜日だけでなく、すべての土日についても相談窓口を開設するなど、手厚い相談実施体制がしかれることになった。
以上4項目全部について、既に政府与党で手だてが講じられることになっており、本議会からの意見書として改めて政府に要望する必要はないものと考える。以上、反対討論とする。
関 徹 賛成討論
国民が苦労して納めてきた保険料が年金の記録にだれのものかわからないものが発生するという、いわゆる消えた年金が、本意見が提案された時点での5,000万件に加えて、新たに1,430万件、国民の不安と怒りはますます広がっている。
年金制度を信頼できないという声が76%。「いたずらにあおり立てられた」結果ではなく、国民が正しく事態を判断し、心配をしていることのあらわれ。
意見書案が指摘するとおり、国民には今度の問題では何の落ち度もなく、全く国の責任によって生じた問題であり、国の責任で一人の加入者にも被害が発生しないように、既に起こされた被害には最大限の補償を行う手だてをとることが求められる。
しかし、今政府与党が示している対策は、そういう責任を果たし得るものではない。反対討論の内容も含めて、対策の誤りを明らかにすることによって、本意見書に賛成する討論を行う。
政府与党の対策の第1の問題は、未統合の5,000万件について、受給者、加入者の記録と突き合わせの作業を1年でやるという点。それには毎日およそ19万件を処理することが必要。1,000人の職員を配置して、1件を2分で処理しないと終わらないが、そういう人員配置は示されていないし、作業のプログラムが開発されるのが来年の3月などと言われ、実際の作業時間は1年よりずっと短くなる。
調査対象は、生年月日、性別、氏名の3条件で一致したものについてのみであり、作業は名前を照合する、いわゆる名寄せだが、これは既に1度行われた作業であり、その結果、宙に浮いたのが5,000万件と、他に1,430万件。これでは、本当に問題を解決し得る調査にはならないことは明らか。
第2に、そもそも政府与党は5,000万件についても1,430万件についても、何ら問題のない記録であるかのように述べている。基礎年金番号に統合されていない5,000万件、このうち現在年金受給年齢に達している方が2,880万件、既に死亡した方も少なからずいることが推測される。日本共産党の小池晃議員が参議院厚生労働委員会で、5,000万件の平均加入月数が最低の1カ月だとしても奪われた給付は3兆円を超え、6カ月だとすれば20兆円にも上ると試算を示したのに対し、厚労省はこれを否定できなかった。重大な問題が、現に生じている。
第3に、未払いが判明した場合、5年以上前までさかのぼって全額払う、積極的に証拠を認めていくとされてるが、問題は、どういう場合に支払うのかが不明確だということ。
雇用主の証明や銀行通帳の振り込み記録などという例を示しているが、今30年、40年前の記録がないので、多くの国民が支給対象から排除されているということが問題になっている。
第三者委員会が判断するというだけでは、何の保証にもならない。第三者委員会に示される基準自体が問題。同僚の証言であるとか、もっと幅広い状況証拠を認めることにし、国め側がそれを反証できなければ認めるという態度が求められる。
第4に、社会保険庁の解体も大きな問題。今回の事態で明らかになったことは、年金という事業が国民から莫大な保険料を預かり、それを何十年にもわたって、間違いなく管理しなければならないという極めて高い社会的責任が求められる巨大な事業であるということ。
その事業は、国会と内閣という仕組みを通して、国民が基本的に管理することのできる国の事業として行わなければならない。政府与党は、社会保険庁を民営化し、さらに民間企業へのアウトソーシングを推進するとしているが、それによってなぜ事業が改善されるのかということは明らかでない。今、民間企業の不祥事が相次ぐ中、「民間は善、公務は悪」などという決めつけには、何の根拠もない。
さらに、問題の原因が社会保険庁の労働組合にあるかのように主張しているが、みずからの責任をあいまいにしようという問題のすりかえ。もちろん公務労働を国民によりよいサービスを提供するために改善していくことは、いつの時代でも当然の仕事。
しかし、今回問題になった社会保険庁の問題は、本質は別。この間1985年から2004年の間に社会保険庁長官を経験した7人が公益法人などに天下って得た収入が9億3,000万円にも上るということが、国民の怒りを買っている。
また、今まさに問題となっている情報処理システムに67年度以来、公費や保険料が約1兆4,000億円も投じられたが、このシステムの運用管理を委託する関連企業4社に、社会保険庁の歴代幹部ら15人が役員や部長として再就職している。(関連企業は、自民党に2億円を超える政治献金)。
政党・政治家と高級官僚と大企業との政官財の癒着、こういう癒着腐敗構造こそ改めなければならない。社会保険庁の解体が年金事業を国民の関心から遠ざけ、事業を分割することによって、こういう癒着構造を一層拡大するもの。
以上、最初に述べたようにこの意見書案が提案された時点からさらに問題は拡大し、政府与党実の問題点も次第に明らかになってきた。すべての受給者、加入者に保険料の納付記録を直ちに送ること、社会保険庁解体をやめることなど、本来であればもっと盛り込みたいところだが、そういう点を勘案しても、消えた年金問題について政府与党が真の解決策を打ち出していない今、本市議会が意見書を採択することは大きな意義を持つものであることから、採択に賛成することを述べて討論とする。
その後、事態は進展し、共産党の主張通り、「全加入者、受給者への納付通知の発送」が認められました。しかし、最大の問題は、年金額が低すぎ、保険料の納付期間が長すぎるという、年金制度の貧しさです。
この点でも、日本共産党は抜本的で現実的な提案をおこなっています。