セレンディピティ ダイアリー

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こころに剣士を

2017年01月17日 | 映画

はじめまして。

これまでココログでダイアリーを続けていましたが、容量が残り少なくなったので、こちらで新しくブログを立ち上げました。まだ操作に不慣れで試行錯誤の状況ですが、少しずつ居心地よく整えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

さて記念すべき第一稿は、エストニアを舞台にした事実に基づくヒューマンドラマ、「こころに剣士を」(Miekkailija / The Fencer)の感想です。「ヤコブへの手紙」のクラウス・ハロ監督の作品というので、楽しみにしていました。

エストニアと聞いて思い出したのは、ジャンヌ・モロー主演の「クロワッサンで朝食を」。バルト三国のひとつで北欧に近いという以外、私にはほとんどなじみのない国でしたが、中世以降、数々の近隣諸国に支配され、第2次世界大戦中はナチスドイツ、そして戦後はスターリン体制のソ連に占領されるという悲しい歴史を背負っている国だということを、今回初めて知りました。

元フェンシング選手のエンデルは、戦中ドイツ軍にいたということでソ連の秘密警察に追われる身となり、ハープサルという小さな町に流れ着き、小学校教師の職を得ます。名まえも経歴も偽ってひそやかに生きるエンデルでしたが、ひょんなことから生徒のひとりに懇願され、課外授業で子どもたちにフェンシングを教えることになるのです。

もともと子どもが苦手なうえに、心を閉ざしているエンデルは、最初は接し方がわからず、熱意ゆえに厳しく指導してしまうこともありましたが、不器用ながらも少しずつ子どもたちや父兄たちから慕われ、信頼の絆で結ばれていきます。戦争で父親を失った子どもたちにとって、エンデルは無口だけれど大きな愛で包んでくれる父親のような存在でもありました。

フェンシングのおもしろさに目覚めた子どもたちは、レニングラードで行われる全国大会に出場したいとエンデルに訴えます。子どもたちの希望をかなえてあげたいエンデルですが、それは彼にとって秘密警察の目に留まる大きな危険を伴うものでした。エンデルに嫉妬を募らせ快く思わない校長の不穏な動きもあり、エンデルは心の中で葛藤しますが...。

すっかりかさついていたエンデルの心を潤し、生きる喜びを与えてくれたのは、子どもたちのまっすぐなまなざしと前向きなチャレンジ精神でした。エンデルを逮捕しにきた秘密警察たちも子どもたちの奮闘に拍手を送っていましたが、子どもたちの未来は国の希望であり、その前には誰が味方で誰が敵か、誰が裏切り者かなんて大人の都合は、取るに足りない小さいことのように感じられました。

エンデルを演じるマルト・アヴァンディの、悲しみの中にも温かさと強さをにじませる繊細な演技に心打たれましたが、あとからエストニアで人気のコメディ俳優(!)と知って驚きました。そして、フェンシングと向き合うことで寂しさを乗り越え、生き生きと輝く子どもたちがかわいくて、私も大きな喜びを与えられました。

 

 

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