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スノーデン

2017年02月06日 | 映画

2013年に発覚したアメリカ政府による個人情報監視プログラムの正体を、内部告発したエドワード・スノーデンの目を通して描いたドラマ、「スノーデン」(Snowden)を見ました。「プラトーン」「ウォール街」などの社会派作品で知られるオリバー・ストーン監督が映画化。

先に昨年公開されたドキュメンタリー「シチズンフォー スノーデンの暴露」を見て、衝撃を受けました。本作はドキュメンタリーを肉づけするように、スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)のこれまでの足取りを軍人時代までさかのぼり、CIAに入った経緯や、NSA(国家安全保障局)での仕事などを、恋人(シャイリーン・ウッドリー)との関係を織り交ぜながら描いています。

NSAによる情報収集の方法と、情報監視プログラムを使うとどんなことができるか、具体的なドラマを通して見せているので、いつか自分にも降りかかるかもしれないという恐怖に震撼しました。愛国者だったスノーデンがなぜ国家に反旗を翻し、自らの命を危険にさらしてまで内部告発したのか、その決断を重く受け止めました。

最近は犯罪捜査で監視カメラやSNSの解析が普通に行われるようになりましたが、こうした監視社会は不気味ではあるけれど、治安を維持するためにはある程度しかたがない、と思っていました。アメリカの個人情報監視プログラムが明らかになった時も、当初政府はテロ対策だと反論していたのです。

しかし実際には、Microsoft、Google、Yahoo!などの協力を得て、テロとは関係のない個人情報を、国内外を問わず収集していたのです。これでは相手のカードがすべて見える状態でトランプをやっているようなもので、他国との外交において、アメリカは圧倒的に優位な立場で交渉ができることとなります。

以前スノーデンが、NSAが他国首脳の通話も盗聴していることを告発し、ドイツやフランスが正式に抗議したことがありましたが、映画では、スノーデンは横田基地にいたことがあり、日本のコンピュータシステムにマルウェアを仕込み、日本が同盟国でなくなった時にはシステムダウンするよう工作されている...と明かしていて絶句しました。

また、PCや電話の操作履歴やクレジットカードの使用履歴など、いくつかの情報を組み合わせることで、ターゲットの行動や家族、交友関係、発言まですべて把握でき、その中にわずかでも弱点があれば、それをもとにその人を簡単に失脚させることができるのです。それを目の当たりにしたスノーデンは、自分も監視されていることを確信し、恐怖に襲われます。

このままでは個人の自由と権利が失われ、民主主義をも崩壊すると予期したスノーデンは、慎重に準備を進めて、英ガーディアン紙とコンタクトをとり、内部告発することを決意。その後の展開については報道されている通りですが、現在は恋人リンゼイとともにロシアに潜伏しているというスノーデンのこれからが気になるところです。

シチズンフォー スノーデンの暴露 (Citizenfour)

2013年、ドキュメンタリー映像作家のローラ・ポイトラスのもとに、シチズンフォーなる人物が接触してきます。最重要機密情報を持っているというその人物こそ、エドワード・スノーデン。本作は、香港のホテルで行われたスノーデンへのインタビュー(=最初の告発)をもとに構成した、ドキュメンタリー映画です。スパイ小説顔負けの内容ですが、これが事実であることに驚愕します。

取材している最中にも、スノーデンが潜伏する香港のホテルに怪電話がかかり、恋人が待つ家の前には不審な車が停まり...スノーデンの証言を裏付けするような展開に背筋が凍ります。ドキュメンタリーならではのリアリティと緊張感があり、「スノーデン」とあわせて是非見ていただきたい作品です。

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