1910年代のイギリスで参政権を求めて闘った女性たちの姿を描いた歴史ドラマ、「未来を花束にして」(Suffragette)を見ました。キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム・カーター、メリル・ストリープが共演しています。
1912年ロンドン。夫と幼い息子と暮らすモード(キャリー・マリガン)は、洗濯工場で働きづめの毎日でした。当時はサフラジェットとよばれる活動家たちが、女性の参政権を求めてテロまがいの過激な活動を行っていましたが、モードは日々の暮らしに精一杯で、選挙権なんて自分とは無縁のものだと思っていました。
しかし、ひょんなことから友人に代わって公聴会で証言する機会を得ます。洗濯工場で働く母から生まれ、4歳の時に母がやけどで亡くなったこと。それから母に代わって働きはじめ、過酷な労働のために健康を害していること。同じ工場で働く夫より労働時間が長いのに、賃金がずっと安いこと。
身の上を話していくうちに、もしも女性が政治に参加していたら、自分も違う生き方ができたのではないか、という思いを強くしたモードは、未来を変えるために、息子の主治医であるイーディス(ヘレナ・ボナム・カーター)や、同僚のヴァイオレットたちとともに、女性参政権の運動へと身を投じていきます。
アメリカの黒人が参政権を求めて闘う「グローリー/明日への行進」(Selma)では、キング牧師主導のもと市民たちが非暴力で闘う姿に心を打たれましたが、本作に登場する女性たちは、カリスマ的指導者エメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)のもと、投石、爆破、自爆テロと、その過激さに驚きました。
当時、合法的な活動をしていたグループもあったようですが、ほとんど効果がなかったために、エメリンたちのグループはどんどん過激化していったそうです。家族を捨ててまで運動に傾倒していくモードには正直なかなか共感できませんでしたが、公聴会での証言には議員ならずとも心を揺さぶられました。
エメリンやイーディスには、妻の運動を陰で支える理解ある夫がいましたが、モードは投獄されたのを機に、優しかった夫(ベン・ウィショー)から家を追い出されてしまいます。愛する息子とも引き離され、見ている方もつらかったですが、夫自身も工場に雇われる身で、当時はこうするしかしかたがなかったのかもしれません。
題材は重いですが、キャリー・マリガンはじめ俳優たちの演技がすばらしく、歴史のひとコマを知ることができてよかったです。モードがセクハラ工場主に反撃する場面や、彼女を味方に引き入れようとする警部との駆け引きや攻防戦など、スリリングな展開もあって引き込まれました。