BBCのドキュメンタリーをもとに、国際数学オリンピックで金メダルを目指す天才少年を描いたドラマ「僕と世界の方程式」(X+Y / A Brilliant Young Mind)を見ました。
幼い頃に自閉症スペクトラムと診断され、人とのコミュニケーションがうまくとれないネイサン(エイサ・バターフィールド)にとって、数学は唯一の友だちでした。最愛の父を交通事故で亡くし、ますます心を閉ざすネイサンのために、母(サリー・ホーキンス)は数学教師ハンフリーズ(レイフ・スポール)に個人指導を依頼します。
やがて国際数学オリンピックの代表候補に選ばれたネイサンは、英国チームのメンバーとして台湾での合宿に参加。そこで出会った中国チームのチャン・メイと、少しずつ心を通わせていきますが...。
数学オリンピックを題材にした作品ときいて楽しみにしていましたが、私にはちょっぴりもの足りなかった...。数学の天才少年ということで、チェスの天才少年ジョシュ・ウェイツキンを描いた「ボビー・フィッシャーを探して」のような作品を期待していましたが、本作で言いたかったことは、別のところにあったようです。
これまで人との関係がうまく築けなかったネイサンが、国際数学オリンピックに出場したいとの思いから、初めて外の世界に飛び出して参加した台湾での合宿。彼にとっては初めて同世代の子どもたちと接する機会であり、寝食をともにし、とまどいながらも仲間と切磋琢磨していく姿を、応援しながら見ていました。
殻の中からそっと顔をのぞかせて、様子をうかがっていたネイサンを、何のてらいもなく引っ張り上げて、外の世界へと連れ出してくれるチェン・メイが実にチャーミング。2人のほのかなロマンスを微笑ましく見守っていましたが、ラストへの展開は思いがけないものでした。
ネイサンもチェン・メイも、せっかくここまでいっしょにがんばってきたのだから、たとえ結果が出せなかったとしても、最後までチャレンジして欲しかった、と個人的には思いました。2人が選ばれたことで代表になれなかった選手もいるし、途中棄権したことで、チームにも迷惑がかかるのですから。
数学オリンピックがすべてではないけれど、オリンピックが終わったあとに会うことだってできたはず。目の前にあることから逃げているように感じてしまったのがちょっぴり残念でした。