もう一度見たいと思っていた「ダンケルク」。あとから本作はIMAXフィルムで撮影されていて、通常のスクリーンでは約40%カットされていると知り、今度はIMAXシアターで見てきました。
映像に関しては、一般のスクリーンで見た時にも迫力があって、私は十分満足していましたが、改めてIMAXで見ると、たしかに視界の広がりをより実感することができました。特に違いを感じたのは、航空戦のシーンです。
スピットファイアから見た風景は、空の広さ、海の広さ、遠くダンケルクから立ち上る煙。そうしたすべてがファリア(トム・ハーディ)の視点から体感できて、体がいっしょに動くような臨場感を味わいました。結末がわかっているだけに、指揮官(マイケル・ケイン)の「帰りの燃料を残しておくように」という声が胸につきささりました。
このほか、今回はストーリー展開がわかっているので、前回は見落としていたさまざまなことに気づくことができてよかったです。
例えば、陸軍兵士たちのパートでのギブソン(アナイリン・バーナード)の視点。彼がトミー(フィン・ホワイトヘッド)と桟橋に隠れていた時に、上官たちのやりとりをどんな思いで聞いていたか。救助船の甲板の上から、燃え上がる祖国をどんな思いで見つめていたか。
他の兵士たちは祖国に帰る喜びにわきあがっている中、自分だけが祖国を離れるという心細さと疎外感。生き延びることへの渇望と恐れと迷いと、あらゆる思いが葛藤していただろうことが、彼の行動から伝わってきて、胸がしめつけられました。
トミーたちがイギリスに着いたのはドーバーではなく、ドーセット。そして列車に乗って、途中で停車したのはウォーキング駅でした。最後のチャーチルの演説は肉声だったと思い違いをしていましたが、実際にはトミーがアレックス(ハリー・スタイルズ)に新聞を読み聞かせていたのでした。
イギリス市民の熱烈な歓迎で幕を閉じる本作ですが、最後に機体を燃やして覚悟を決めるファリア、そして新聞を読み終えたトミーの空虚なまなざしが、なぜか私にはいつまでも心に残りました。
映像の迫力に比べると、ドラマの部分は一見あっさり描かれているように思える本作ですが、ふりかえると登場人物ひとりひとりの行動やセリフばかりが思い出され、想像をかきたてられる作品でした。
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