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ダンケルク

2017年09月16日 | 映画

クリストファー・ノーラン監督・脚本・製作による戦争映画。第2次世界大戦の”ダンケルクの大撤退”(ダイナモ作戦)を、陸・海・空の3つの視点から描きます。

ダンケルク (Dunkirk)

1940年5月26日。連合軍の兵士40万人はドイツ軍に包囲され、フランス北端のダンケルクの海岸に追い詰められます。イギリスへの撤退命令が出て、英国陸軍兵のトミーは、浜辺で出会ったギブソンとともに、救助船になんとか乗り込もうと桟橋に向かいます。

一方英国海軍からは救助のために民間船が徴用され、ダーソン氏が息子とともに小型船でダンケルクに向かいます。そして英国空軍パイロットのファリアとコリンズは、ダンケルクを攻撃するドイツ空軍を阻止すべく、スピットファイア戦闘機に乗って出撃します。

冒頭、映像に先立って低く流れる不穏な音から一気に戦場へと引き込まれました。突然始まる銃撃戦。鈍色に広がるダンケルクの砂浜。そこに集まっているおびただしい数の兵士たち...。彼らは対岸のイギリスに渡るために、救助船を待っているところですが、ドイツ軍からの攻撃は止まず、このままではいつ乗れるかわかりません。

ようやく乗れても、船は空から海から攻撃され、対岸に着くのは命がけ...。本作はセリフや説明を抑え、残酷描写もほとんどありません。戦場を見つめる眼差しは冷徹で、エモーショナルな表現を極力排除しているとさえ思えましたが、リアリズムにこだわった映像は臨場感にあふれ、ひりひりするような緊張感に何度も押しつぶされそうになりました。

ことばで多くを語らなくとも、圧倒的な映像と、さまざまな場面から、極限状態における生死をかけたドラマを感じ取ることができました。

個人的な背景がほとんど描かれない兵士たちと比べると、海のパートの登場人物たちはほんの少しキャラクターが肉付けされていたこともあり、特に心に残りました。マーク・ライランス演じるダーソン氏は、軍からの要請にダンケルクの窮地を知り、矢も楯もたまらず自ら救助に向かったのでした。 

ダーソン氏の胸中を思うとそれだけで泣けてきますが、特に「私たちが始めた戦争に、若者たちを巻き込んでしまった」ということばは、同じ親として、そして砂浜で見た若い兵士たちの姿がオーパーラップして、心にずしりと響きました。ダンケルクの海岸に数えきれないほどの民間船が集まる場面は圧巻。涙があふれました。

命からがらイギリスにたどり着いたものの、戦果が挙げられずにうなだれている兵士たちを「よくやった」と歓迎する市民たちにまた涙しましたが、最後のチャーチルの「我々は最後まで戦い続ける... 我々は決して降伏しない」の演説に、はっと現実にもどされました。

彼らは無事にイギリスにもどったけれど、戦争が終わったわけではないのです。彼らはこれからも戦い続けなければならない。これはそのための”意味のある撤退”だったのだと。

チャーチルの戦略的、合理的決断。それを支える国民の愛国心。精神力にたよらない冷静な判断が、最後の勝利へと結びついたのだと納得しました。

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