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上方落語を楽しむ @天満天神繁昌亭

2017年09月08日 | +大阪

今回の旅行では、大阪ならではの芸能に触れてみたいと思っていました。吉本新喜劇は満席、文楽は公演がない...う~んと考えて、そうだ、上方落語がある!と思い出し、旅行前日にぴあでチケットを買っておきました。中之島からぶらぶら歩いて、天神橋筋商店街を通り、上方落語随一の寄席、天満天神繁昌亭を訪れました。

周囲は広場になっていて見晴らしがよく、柳の青葉が美しい。それにしても古めかしい木造建築を想像していましたが、意外と新しい...と思ったら、これには上方落語が長年かかえていた事情と背景があったことを知りました。

上方落語は、明治から昭和にかけて隆盛を誇り、大阪市内に十数軒の寄席がありましたが、第二次世界大戦時にすべて焼失。それから長らく落語専門の定席(毎日公演している小屋)がありませんでしたが、2006年、大阪天満宮、天神橋筋商店街の協力を得て、戦後61年ぶりにこの地で念願の復活が実現したということです。

開場の時間が近づくと、小屋の周りにお客さんがわいわいと集まってきました。若手の落語家さんが一番太鼓を元気よくたたきはじめると入場開始。整理番号順の自由席です。夏休みということもあって、立ち見が出るほどの大入りでしたが、中ほどのいいお席に座れました。

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若手からベテラン、古典に新作、女性の落語家さんに似顔絵の芸人さんとバラエティ豊か。落語家さんもにぎやかなマシンガントークからしみじみと味わいのある語り口とそれぞれ個性があっておもしろかったです。旅行者が多いことを配慮して、文華さんが上方落語の特徴を楽しくわかりやすくレクチャーしてくださいました。

江戸落語は座布団ひとつで演じますが、上方落語は演者の前に見台とよばれる小さな机と、膝隠とよばれる衝立が置かれるのがおもしろい。また、扇子や手ぬぐいは江戸落語でも使われますが、小拍子という小さな拍子木をここぞというところで見台に打ちつけて鳴らし、合いの手や効果音として使います。

上方落語はもとは神社の境内など、屋外で行われる芸能だったので、人々の注目を集めるために、太鼓や三味線でお囃子が演奏されたそうです。そのお囃子は”はめもの”として今に受け継がれ、歌舞伎と同じく情景や心情を描写するBGMとして、お話を盛り上げるように演奏されます。

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古典落語は「転失気」「鯉盗人」など、どれも安定したおもしろさがありましたが、三四郎さんの新作落語もノリがよくスリリングで漫才のようなおもしろさがありました。鯉盗人のあさ吉さんは、鯉をおろす庖丁さばきが見事だな~と感心したら、あとから料理が趣味と知り納得しました。

そしてトリの鶴笑さんの落語は、冒頭から超高速、膨大な話のシャワーに圧倒され、たじたじとなりました。一応演目は「時うどん」(江戸落語の時蕎麦)ですが、なんとゴジラも飛び出します。@@ 海外でもご活躍されているそうですが、たしかに時蕎麦でしたらどこの国でも通じますものね。あれやこれやで貴重な経験でした。

落語家さんたちに見送られ、寄席を出た後は隣接する大阪天満宮へ。菅原道真に由来し、大阪市民から親しまれている神社です。繁昌亭設立の際には、無償で用地を提供されたそうです。天満宮のはす向かいには、川端康成生誕の碑がひっそりと佇んでいます。

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