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シェイプ・オブ・ウォーター

2018年03月15日 | 映画

ギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を手掛け、サリー・ホーキンズが主演するファンタジー映画。ベネチア国際映画祭・金獅子賞、アカデミー賞・作品賞を含む4部門他、数々の映画賞に輝いた作品です。

シェイプ・オブ・ウォーター (The Shape of Water)

1962年、冷戦下のアメリカ、ボルティモア。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、ある日研究所にアマゾンで捕獲されたという謎の生物が運び込まれるところを目にします。好奇心から”彼”のいる水槽に通ううちに、2人は少しずつ心を通わせるようになり...。

ベネチア国際映画祭で話題になっていた頃から、楽しみにしていた作品。公開後はかなり賛否が分かれていた印象だったので、はたして私は気に入るかしら?と少々心配になりながらの鑑賞でしたが、個人的にはとても気に入りました。いい意味で予想を裏切られたというと失礼ですが、思った以上にロマンティックで愛らしい、魅力的な作品でした。

まずはなんといっても、60年代風のレトロで温かみのある映像や美術、音楽に惹かれました。この映画自体が、古き良き時代のハリウッド映画のような雰囲気をもっていて、ロマンス、サスペンス、ホラー、SF、ファンタジー、ミュージカル等々、いろいろな映画の要素を備えているのが楽しい。

イライザが住んでいるアパートの1階に映画館があったり、古い映画のシーンがいくつも登場したりと、監督のあふれる映画愛が伝わってくる作品でもありました。その一方で、どきっとするような残酷描写や、生々しい性描写が突如登場し、美しい幻想が打ち砕かれることもありました。

それらはすべての生けるものがもっている本能・衝動を表しているようにも感じましたし、見ている人を現実に引き戻す、目覚ましの役割を果たしていたのかな?とも思いました。思えばグリム童話ももとは残酷な物語だったわけで、大人のおとぎ話にもちょっとしたスパイスが必要という、監督のいたずら心?だったのかもしれません。

ヒロインを演じるサリー・ホーキンスは、決して派手ではないけれど存在感のある女優さん。そして本作の彼女は、ほんとうにきれいだった。まさに恋する少女になっていました。^^ 最初はこの映画のテーマカラーでもあるグリーンの装いが多かったですが、恋が成就してからはだんだん赤を身につけるようになっていったのが興味深い。

謎の生物は、最初に見た時はぞくっとしたけれど、見慣れるとだんだんかわいいなーと思えてきました。監督が何をイメージしてキャラクター造形したのかは存じ上げないのですが、私はガラパゴス諸島で見たマリンイグアナを思い出しました。特にエスパニョール島にしかいない別名クリスマスイグアナにそっくり。

そういえばガラパゴスでも、最初は真っ黒で不気味に思えたマリンイグアナが、いつしかなんて愛おしい生き物だろうと感動したことを思い出します。ちなみにクリスマスイグアナは、繁殖期になると体表が赤と緑になるので、そんなところも似ているような...。イグアナ好きとしては大いにくすぐられました。^^

イライザはいつから”彼”を好きになったのか。最初はおそらく好奇心だったのが、やがて同情に変わり... 彼を家に連れてきてから、なくてはならない存在になったのかな? 部屋をまるごと水槽にしてしまうところは、まさにファンタジーの世界。ダンスを踊る場面は、ラ・ラ・ランドの天文台のシーンを思い出しました。

ラストは少々カサブランカ風? スリリングな展開に息をのみました。イライザの優しい隣人にリチャード・ジェンキンス、職場の同僚にオクタヴィア・スペンサー、サディスティックな上司にマイケル・シャノンなど、脇をかためる俳優たちもとてもよかったです。

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