「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンドの代表作ということで、DVDにて鑑賞しました。コーエン兄弟によるサスペンスタッチのブラックコメディで、この年のカンヌで監督賞を受賞、アカデミー賞では7部門にノミネートされ、マクドーマンドが主演女優賞、コーエン兄弟が脚本賞を受賞しました。
1987年、ミネソタ州ファーゴ。自動車ディーラーのジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は多額の借金を返済するために、妻をチンピラ2人組に狂言誘拐させ、会社オーナーの義父から身代金をせしめる計画を立てます。しかし2人組は妻を誘拐した後、なりゆきから職務質問してきた警官とそれを目撃した2人を殺害、妻を連れて逃亡を図ります...。
”スリー・ビルボード”と同じくアメリカ中西部を舞台にしたブラックコメディで、テイストがよく似た作品でした。ただし、バイオレンスがスリー・ビルボードの比ではありません。気持ちがいいほどに人がばんばん殺されます。@@
冒頭に「これは事実に基づく物語であり、関係者の希望により、登場人物の名前は変えてあります...」といったテロップが流れ、神妙な面持ちで見始めましたが、あまりに簡単に人が殺されるのでびっくり。後からコーエン兄弟のジョークと知って、もう~!だまされた!とぷんぷんしました。^^
作品は大きく2つのパートに分かれています。前半は、ジェリーが狂言誘拐を依頼したチンピラが、田舎の雪道で3人を殺して逃亡するまで。後半では、満を持して警察署長のマージ(マクドーマンド)が登場。事件現場を検証したマージは、犯人が乗っていた車が、ジェリーの会社のものであることを突き止めます。
簡単に解決するはずだった狂言誘拐が、いつの間にか大掛かりな殺人事件に発展していたことに内心唖然とするジェリー。状況が変わってチンピラとの交渉も難航し、その後もさらなる悲劇が起こるのでした...。
義父に頭が上がらない気弱なジェリーが、こんな大胆な計画を思いつくところが恐ろしい。頭の中では自分に都合よくコトが運びますが、生身の人間を相手にそんなに思い通りに行くわけがありません。当初の計画がどんどん狂い、思わぬ方向へと転がっていく展開に、先日見たルメット監督の「その土曜日、7時58分」(2007)を思い出しました。
2人のチンピラ、カールとゲアはまるで気が合っていないので、計画がうまくいくはずがないと私も思ってました。マージが2人組の人相を尋ねてまわる時に、誰もが「大男と、変な顔の男」と答えます。^^ そんなアバウトな説明でも、誰もがひと目見てあの2人だとわかるところがおかしかったです。
何を考えているかわからない冷酷な殺人鬼のゲアと、どちらかというと小悪人のカール。終盤に「キングスマン ゴールデン・サークル」のハンバーガーミンチと同じシーンがあって、この作品がオリジナルだったんだ~と知りました。
マージは犯人を逮捕し、移送しながら「そんなわずかなお金のために人を殺すなんて...世の中にはお金より大切なものがあるのよ」と諭します。そしてラストでは、マージの夫の描いた絵が3セント切手に採用されることが決まり、夫婦で喜びを分かち合います。こんなシニカルな表現がコーエン兄弟らしくて楽しかったです。