元CIA局員のジェイソン・マシューズによる同名小説を「ハンガー・ゲーム」シリーズのフランシス・ローレンス監督が、ジェニファー・ローレンス主演で映画化。ジョエル・エドガートン、シャーロット・ランプリング、ジェレミー・アイアンズが共演しています。
舞台のアクシデントでバレエダンサーとしての道を絶たれたドミニカ(ジェニファー・ローレンス)は、叔父の勧めでロシア諜報機関のスパイ養成学校に入ります。そこで相手の欲望を見抜いて心理操作する”スパロー”としての訓練を受けたドミニカは、能力を認められ、ある重要なミッションを任されます。
それはCIA捜査官ナッシュ(ジョエル・エドガートン)に近づき、ロシアの中枢にいて彼に情報を流しているモグラ(内通者)を見つけるというもの。ドミニカとナッシュは、互いに惹かれ合いながらも、自らの任務を全うすべく、命がけの駆け引きを繰り広げますが...。
女性スパイといえば、「ソルト」や「アトミック・ブロンド」などのスタイリッシュでかっこいいアクション映画が思い出されます。本作もスリリングなアクションや過酷なバイオレンスはあるものの、いわゆる”女の武器”をチラつかせての心理的駆け引きが見どころとなっているのがおもしろい。
本作は、ジェニファー・ローレンスの多才な魅力がたっぷりと味わえる作品。肝のすわった、ただものではない迫力に圧倒されました。ベビーフェイスの影に秘められた、大人の表情にはっとしました。
こんな派手なスパイがいるわけないと思いますが^^ ジェニファー演じるドミニカは、どことなく実在するロシアの女性スパイ、アンナ・チャップマンに似ています。しかも叔父役の俳優さんはプーチン大統領にそっくり。フィクションながら、どきっとさせるキャスティングでした。
ロシアの政府や諜報機関があまりに非人道的に描かれている一方、アメリカが理想的な民主国家として描かれているところなど、少々鼻につくところはありますが、エンターテイメントとして大いに楽しめました。
スパイというのは”知りすぎた人間”。一度この世界に入ったら、二度と抜け出すことはできないので、”王子様に助けられ、幸せに暮らしました”という結末はありえない。そこへいくとドミニカが下した決断は、ベストというべき満足のいくものでした。
私が興味深く思ったのは、シャーロット・ランプリング演じるスパイ学校の鬼教官。情け容赦のない冷酷な教官ですが、おそらく彼女自身もかつてはスパローとして、体を張って命がけのミッションをこなし、数々の修羅場を乗り越えてきたのだろうな...と思わされました。
とすると、先日見た「評決」でのランプリングの役どころが、すとんと心になじみます。ランプリングの若かりし日の衝撃作「愛の嵐」も見てみたくなりました。