1990年代アルジェリア内戦時代、ファッションデザイナーになることを夢見る女子大生が、女性の自由を求めて戦う姿を描いたヒューマンドラマです。
初めて見るアルジェリア映画。女の子たちの群像劇やファッションを題材にした作品が好きなので、本作を見るのを楽しみにしていました。
アルジェリアと聞いて思い出すのは、アルジェリア出身の作家 ヤスミナ・カドラの「昼が夜に負うもの」。乾いたエキゾチックなイメージが強烈に心に残っています。一方で2013年に起きたイスラム系武装組織による日系企業人質事件の衝撃も記憶に新しいです。
イスラム圏で女性の自由が抑圧されていることは認識していたので、冒頭、主人公とその友人が大学寮を抜け出してクラブに遊びに行き、帰りはそこで知り合った男の子たちに車で送ってもらうという展開に、まずはびっくりしました。
主人公のネジュマ(リナ・クードリ)は日頃からヒジャブを身に着けず、開放的な服装をしています。これまで見たサウジアラビア映画の「少女は自転車に乗って」や、イランのアスガル・ファルハーディ監督の作品等と比べて
アルジェリアでは比較的、女性の自由が認められているんだとびっくりしたほどですが、どうやらネジュマのようにはっちゃけている女性は少数派で
現実には、イスラム原理主義者が、女性にヒジャブを身に着けることを強要し、逆らえば武力行使も辞さなかったり、外国語(フランス語)を教える大学教員が授業中に突然拉致されたり、ということが日常的に起こっているようです。
ファッションデザイナーに憧れているネジュマは、友人たちから頼まれてカラフルなドレスをオーダーメイドで作っていますが、ある不幸な事件を機に、アルジェリアの伝統布、ハイクという白い布を使って、ファッションショーを開くことを決意します。
アルジェリアの社会や女性たちの現実を知ることができ、見てよかったと思いましたが、個人的には今ひとつネジュマに共感することができませんでした。彼女は自己主張が強く、女性の権利に対して過度に反応しすぎます。
誰もが彼女のように強いわけではないのに、ネジュマが女性の権利を強く主張することによって、大切な仲間たちを結果的に危険な目にさらすことになってしまったことに憤りを覚えました。何もイスラム原理主義者にわざわざ狙われるようなことをしなくてもいいのに。
ボーイフレンドといっしょにフランスに移り住み、そこでファッションデザイナーとして成功して、母国の民主化をサポートする方法もあるはず。それを頭ごなしに反論してアルジェリアにいることにこだわることにも疑問を感じました。
もっと冷静で温厚なアプローチによって、抗議するという方法もあったのでは?とちょっと残念に感じてしまいました。