ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記映画です。
音楽を題材にした作品が好きなのと、ジェニファー・ハドソンの歌を楽しみに見に行ってきました。ジェニファー・ハドソンの歌と演技がとにかくすばらしくて圧巻でした。アレサ・フランクリンの黄金時代を私はリアルには知らないのですが
彼女が歌う歌が、そのまま彼女の人生のひとこまとうまくリンクしていて、感情移入しながら引き込まれました。音楽を愛するひとりの人間として、愛を求めるひとりの女性として、懸命に生きる姿に心を揺さぶられました。
黒人ミュージシャンの伝記映画というと、ドラッグやアルコールにおぼれ、人種差別に苦悩するストーリーをイメージしてしまいますが、公民権運動のただ中である60年代に、アレサはそうした問題とはほとんど無縁でした。
アレサの父はデトロイトで一番大きな黒人教会の牧師で、キング牧師とも親交がある名士であり、アレサは子どもの時から裕福な暮らしを送っていました。では何不自由なかったか、というと必ずしもそうではなく
アレサは父親の大きな愛のもとにいたけれど、その愛ゆえに厳格に育てられ、自由を束縛され、自分の意に背くと暴力を振るわれていたのです。アレサは後から、ゴスペル歌手だった母が離婚して家を出たのは、父の暴力のせいだったと知ります。
そしてアレサが愛し、のちに結婚した夫テッドも父親とまったく同じタイプで、アレサを愛するがために彼女を束縛し、彼女の音楽活動さえも自分の思い通りにならないと激怒し、暴力をふるう男でした。
自分の音楽を模索していたアレサは、南部のスタジオで現地の白人ミュージシャンたちをうまくのせて、やがて最高の音楽が生まれようとしていました。まさに鳥肌が立つような瞬間だったのに、おもしろくない夫テッドはそれをぶち壊そうとしたのです。
アレサが「私の両手を縛っておいて、どうやってあなたを愛せばいいって言うの?」と歌う "Ain't No Way" は、そんな彼女の心の叫びが聞こえてくるようで、胸がぎゅっとしめつけられ、思わず涙してしまいました。
Jennifer Hudson - Ain't No Way (Official Audio)
父親にしても夫にしても、非暴力によって黒人の自由と権利を勝ち得ようと尊い活動をしているキング牧師を心から崇拝しながら、どうして身近な女性に対して同じ行動がとれないのか? それが不思議で不思議でしかたがなかったです。
。。。なんて、アレサの周りの男たちに腹が立って、ついついネガティブな書き方になってしまいましたが^^; 女性を描いた作品として、音楽映画として、私は本作をとっても気に入りました。60年代のカルチャーやファッションも見応えがあって楽しかったです。