セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

ラビング 愛という名前のふたり

2017年03月14日 | 映画

1950~60年代、異人種間の結婚が違法とされていたアメリカ・ヴァージニア州で、愛と自由をかけて戦ったラビング夫妻を描いたヒューマンドラマ、「ラビング 愛という名前のふたり」(Loving)を見ました。ジョエル・エドガートン&ルース・ネッガ主演。コリン・ファースが製作に参加しています。

1958年、レンガ職人のリチャード(ジョエル・エドガートン)は、恋人のミルドレッド(ルース・ネッガ)から妊娠を告げられ、結婚を申し込みます。当時、ヴァージニアを含むアメリカの一部の州では異人種間の結婚が認められなかったため、リチャードとミルドレッドはワシントンD.C.まで出向き、晴れて夫婦となりました。

誇らしげに結婚証明書を壁に掲げ、故郷での幸せな新婚生活がはじまったのもつかの間、何者かに通報され、ある夜 保安官たちが自宅のドアを押し破り、2人は逮捕されてしまいます。そして離婚するか、あるいは少なくともどちらかが州を出るか、究極の選択を迫られるのでした。

離れて暮らすなどありえない2人は、しかたなくD.C.の黒人街に引っ越しますが、親兄弟と離れ、人の多い都会でのびのび子育てできないことにミルドレッドは疑問を覚えます。時は公民権運動のただ中。テレビで”ワシントン大行進”を見ていたミルドレッドは、友人の助言で、ロバート・ケネディ司法長官に手紙を書くことを決意します。

かつて住んでいたヴァージニアが舞台とあって楽しみにしていた作品ですが、いろいろな思いが去来して、何度も涙ぐんでしまいました。無骨で男くさいイメージのエドガートンが、こんなにも愛情深く一途な夫を演じることへの驚き。そしてあの時代に肌の色の違いを気にせずに愛し合ったラビング夫妻は、真に自由な心の持ち主なのだと心打たれました。

国の法律を変えたのが、こんなにも慎ましやかな一組の夫婦であったことに驚きますが、彼らは正義を振りかざしたわけでも、社会を変えたい野望があったわけでもありません。ただ、好きな場所でいっしょに暮らしたいというささやかな、でもあたりまえの願いを訴えただけ。しかしそれが、アメリカの歴史を塗り替えることとなったのです。

ケネディ司法長官が一市民からの手紙に目を留め、すぐにACLU(アメリカ自由人権協会)が弁護士を派遣してきたというのもすばらしい。弁護士2人は、異人種間の結婚を認めないこと、居住地を制限することは、重大な人権侵害であり、憲法違反にあたるとしてヴァージニア州を訴え、ついに1967年、最高裁でみごと勝利を収めたのでした。

今も人種差別や偏見など、さまざまな問題を抱えるアメリカですが、こういう作品を見ると、トライ&エラーはあっても、人々の良心がこの国を支え、歴史を作ってきたのだという誇りが伝わってきて、大きな希望を与えられるとともにちょっぴりうらやましくなります。

すてきな2人にすっかり魅了されましたが、本名がラビング(Loving)というのもすごい。最高裁の判決の出た6月12日は、”Loving Day”という記念日になっているそうです。


コメント (8)    この記事についてブログを書く
« オルセーのナビ派展 | トップ | 柿の木坂 キャトルのケーキ »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは〜 (margot2005)
2017-03-14 23:17:29
夫妻のファミリーネームが“Loving”というのがなんとも素敵でした。
”Loving Day”という記念日も又素敵ですね。

夫妻は理不尽な法律に対して不平不満を訴えるのではなく、ただ一緒にいたいと訴えるだけ。その様には心打たれました。
そう一組の夫婦が国の法律を変えるってスゴいことだったと思いますが、弁護士の働きも大きかったのでしょうね。
俳優陣がとても良かったです!
返信する
一途な想い (ノルウェーまだ~む)
2017-03-15 00:06:09
セレンさん☆
本当に慎ましやかな夫婦が、こうして国を動かしたのだと思うと胸が熱くなりますね。
実際、望んでいたのが二人の「愛だけ」で無欲だったからこそ人々の共感を得て裁判を勝ち取れたのでしょう。
ラビングという名前もイイですよね!!
返信する
Loving (ごみつ)
2017-03-15 01:22:58
こんばんは!

早速行かれたんですね!
良かったですよね~、この映画。

思っていたよりも、ずっと静かなトーンの作品で、それだけにリアリティもありました。

とにかくこの夫婦の間の愛情が心を打ちます。
そして、その深い愛情が、法律をも変えた・・っていう事実に感動を覚えました。

最後のテレビを見てる写真のシーン、映画の中でも良かったですよね。ライフのカメラマンがマイケル・シャノンだったのでキャスティングにも驚きました。

私もなるべく早く記事にしようと思います!
返信する
☆ margot2005さま ☆ (セレンディピティ)
2017-03-15 09:33:34
おはようございます。
Lovingという名にふさわしい、すてきな夫婦でしたね。
声高に権利を主張することなく、夫妻の切なる願いがストレートに伝わってきて
胸を打たれました。
彼らのために尽力した弁護士たちもすごいですが
きっかけとなったのが司法長官に送った一通の手紙、というのにも驚きました。
主演の2人はじめ、俳優陣がよかったですね!
返信する
☆ ノルウェーまだ~むさま ☆ (セレンディピティ)
2017-03-15 09:53:18
おはようございます。
すてきなご夫婦でしたね!
今では考えられない理不尽な法律が、このような慎ましやかな一組の夫婦によって
変えられたということに希望を与えられる作品でした。
彼らの飾らないシンプルなことばの中に、切なる思いが伝わってきてぐっときました。
返信する
☆ ごみつさま ☆ (セレンディピティ)
2017-03-15 10:08:26
こんにちは。
静かな中にも心を揺さぶられるすてきな作品でした。
多くを語らずとも、2人の眼差しから互いを尊重し思いやる深い愛情が伝わってきて
それだけでほろり...としてしまいました。
結果として歴史を変えた2人ですが、そんな気負いはみじんも感じられなくて、
いつも自然体の飾らない姿にも心を打たれました。

マイケル・シャノン、この監督さんのお気に入り?のようで
過去2作品にも出ているみたいですね。
今度、見てみようと思います!
ごみつさんの記事も楽しみにしていますね。
返信する
Unknown (latifa)
2025-01-18 10:52:11
セレンディピティさん、こんにちは!
見ましたよー!
丁度サブスクのリトライ期間中で、これがあったので見ちゃいました。「ザ・ギフト」は無かったので見れず、またの機会に見ます。

いやー、こんな事があったのね?って驚きでした。
ひどいですね、割と最近まで、結婚も許されず、それどころか刑務所に入れられちゃうなんて。
ビックリでした。見て良かったです。
全然知らなかったので、勉強にもなったし。

この映画って、淡々と物語が進み、盛り上げる様な音楽等も最小限でしたね。
多分そういうのは意識的にそう演出されているのでしょうね。
ハリウッド映画って、山場のシーン等でそういうのが普通なので、本作は新鮮でしたが、もっと盛り上げる音楽や演出があっても‥等と少し思う気持ちもあって、揺れ動きました 笑

PS I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
お正月に劇場鑑賞されていたのですね。
いいなー、私もこれ、見たいとチェックしていた作品です。
配信かレンタルになったら見て、記事にお邪魔しますね♪
返信する
☆ latifaさま ☆ (セレンディピティ)
2025-01-18 22:19:26
latifaさん こんばんは。
本作、ご覧になられたのですねー。
派手ではないですが、いい作品ですよね。
「ザ・ギフト」はマイナーな作品ですが、とてもおもしろかったです。
いつか機会がありましたら♪

今では信じられないようなことですが、アメリカで公民権運動が起こったのがちょうどこの頃ですから、ほんとうにちょっと前までこんなことが普通にあったのですね。
この時代に肌の色にとらわれずにお互いに愛し合って結婚した、というのもすごいことだなーと思いました。

>盛り上げるような音楽
見たのがだいぶ前なので、もう忘れてしまいましたが、たしかに全体的に静かな印象の作品でした。

I Like Moviesはすごくお勧めというわけではないですが
映画好きの方には楽しめるかも。(会話に映画ネタがあります)
返信する

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事