私が死んだあとであなたが読む物語

基本的には「過食症患者の闘病記」、と言っていいでしょう。

「謎解きはディナーのあとで」 東川篤哉

2013年06月03日 22時40分13秒 | 読書感想
安楽椅子探偵ものの短編ミステリー小説です。

とはいえ、なかには執事の影山が事件現場にいあわせる話もあります。

その話は、安楽椅子探偵の形式が崩れたことよりも、風祭警部が出てこないのが残念でした。

そう、この風祭警部がなかなかいい味を出している。

宝生麗子と影山のやりとりよりも、麗子と風祭のやりとりの方が個人的には好きです。

「新参者」 東野圭吾

2013年06月01日 22時53分42秒 | 読書感想
この小説の本筋となるのは、40代独身女性が絞殺されたという殺人事件です。

主人公の刑事が事件を捜査していると、事件解決には直接関係のない、ちょっとしたいざこざが次々みつかったりします。

そういった「事件の本筋からは少し外れた問題」にも切り込んでいく、といった短編小説の形をとっています。

三章くらいまではホントに事件とは関係のない感じですが、四章くらいからは絞殺殺人事件の解決にも少しずつ切り込んでいく感じです。

個人的には第五章の「洋菓子屋の店員」が好きです。

「八日目の蝉」 角田光代

2013年05月31日 20時27分46秒 | 読書感想
この本は去年、過食状態への転化によって頓挫した本です。

そのときに半分くらいまでは読んでいます。

内容もなんとなく覚えています。

見知らぬおばさんの家に泊まったり、怪しい施設に入ったり、そのあとには小島に渡って食堂で働きながら暮らしていたことなんかは覚えています。

でも、最初から読むことにしました。

だから、前半部分は知っていることをなぞるだけで退屈だったんですが、2章までは読んでいなかったようで、大人になった薫が主人公になってからは新鮮な気持ちで読めました。

誘拐なのでハッピーな話じゃないですし、悲壮感もありますが、希和子の薫に対する愛情が真っ直ぐなので、救いようもなく暗いってわけでもないです。

結局二人がちゃんと再会していないのがいいですね。

「ラッシュライフ」 伊坂幸太郎

2013年05月29日 21時33分05秒 | 読書感想
ネタバレ注意。


複数の登場人物を用意し、それぞれを別々に描き、複数の物語を同時並行的に進行させるという手法、好きですね伊坂さん。

伊坂さんに限らず、こういった小説って結構あります。

これらの話がどこでどう絡まるんだろうかって思いながら読者は読むわけです。

オチとして、実は時系列がずれているっていうトリックもよくあります。

でも、この小説は犯人がいるわけでもないし、ミステリーってわけでもないですね。

文学的な小説を目指して描いたんでしょうが、それにしても構成とか練ったんだろうな。

そう思えるだけでもまあよかったのかな。

「プラチナデータ」 東野圭吾

2013年05月26日 00時28分49秒 | 読書感想
ネタバレ注意。


DNA捜査システム。

事件現場に残された犯人の毛髪などからDNAを採取し、それを膨大な人数のDNAデータと照らし合わせることで犯人を特定するという捜査方法。

そのためには、より多くの国民のDNA情報が登録されている必要がある。

そこで国会はDNA法案をつくり、国民のDNAを管理しようとする。

主人公の刑事・浅間はそのやり方に反対する。

実際、国民の中にも自分のDNAの登録をためらう者が多い。

この小説では、そうあることが当然で、国が国民のDNAを管理しようとすることが間違っているみたいな書かれ方をしています。

実はこれに関して個人的にあまり納得できませんでした。

絶対そのほうが犯罪は減るし、近い将来、本当にそうなってほしいとすら思いました。

結局なぜそれが駄目という風に書かれていたかというと、そのDNA法案を国会で通すにあたり、裏では一部の政治家や官僚などがDNA検索されないように仕組まれていたから、ということでした。

たしかにそんな特別扱いは間違っています。

ましてやそれを国民に隠そうなんてもってのほか。

でも、まだそのことをわかっていない浅間が、この法案にケチをつけるのもおかしな話です。

「魔王」 伊坂幸太郎

2013年05月24日 16時20分50秒 | 読書感想
図書館で「モダンタイムス」って本を見つけました。

挿絵とかあってライトノベルみたいな感じがして、読んでみたいなって思いました。

家でネットで調べてみたら、この小説、漫画雑誌「モーニング」に連載されていたらしいです。

「魔王」って小説の50年後を描いた続編らしいので、それじゃあ先に「魔王」を読もうってことにしました。


内容については事前情報ゼロのまま読みました。

ただ、続編の「モダンタイムス」がマンガ雑誌に連載されていたことや、「魔王」ってタイトルから、なんとなくファンタジーものを想像していたのですが、全然違いました。

むしろ政治がかった内容です。

ファシズムとか、憲法改正とか。

超能力といえるような特殊能力が出てくるので、その辺はファンタジーっぽいんですが、肝心の犬養との対決みたいなものは描かれることなく終わっています。

伊坂幸太郎の小説を読むのは、たぶんこれで5冊目です。

伊坂幸太郎は村上春樹と作風が似てるそうですが、はたしてそうかな、って思ってました。

でも、この小説を読んで、たしかになんか似てるわ、って思いました。


僕自身に政治的な観念や理念が無いからでしょうか、さほどおもしろいとも感じませんでした。

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾

2013年05月22日 22時45分19秒 | 読書感想
推理小説と思って読んだ本がそうじゃないとわかったとき、たいていはガッカリするのですが、この本に関しては例外でした。

本を読んで涙を流したのは初めてかもしれません。

私が泣いたのは「第三章 シビックで朝まで」です。

小説内の文章が登場人物からの「手紙」という体の文章だったので、読みながら小説を読んでるという感覚が薄れていき、思わず涙しました。

「流星の絆」 東野圭吾

2013年05月20日 22時50分11秒 | 読書感想
長編小説を読んだのは久しぶりです。

約一年ぶりです。


おもしろかったです。

なんとなく、「白夜行」や「幻夜」を思い出させる作品でした。

がしかし、復讐劇になるかと思いきや、最後は正当なハッピーエンド。

静奈の恋愛がそれなりにウエイトを占めます。

推理小説に恋愛の要素は不要、という考え方もあり、私もどちらかというとそう考えていて、最初は静奈の行成に対する恋愛感情の描写をしつこく感じる部分もありました。

というより、私的にはどちらかというと静奈が悪女に徹している方が楽しめたようにも思います。

それこそ「白夜行」や「幻夜」のように。

それでも、いざ予想通りに二人が上手くいく結末を読んでみると、それもまあいいだろう、とも思えます。

「妄想銀行」 星新一

2013年04月19日 23時28分27秒 | 読書感想
通常状態29日目。

久しぶりに本を一冊読み終えました。

星新一の「妄想銀行」です。

この本はたしか、前回の通常状態の時に買ったんだと思います。

ということは、去年の暮れごろでしょうか。

途中まで読んで、過食状態になって放置していた本です。

このほど通常状態に戻ったため再び手に取ってみました。

そんなことでして、記憶が曖昧な話が多い。

そんななかでも妙に覚えているのは「さまよう犬」。

とても短い話です。

でも長くする必要のない話です。

映画やドラマなんかが、これを原案にして無駄に長い作品にしかねない。

でも、そうじゃない。

そんなことする必要がない。

ショートショートがあるのだから。

「警官の血」 佐々木譲

2012年05月24日 20時27分39秒 | 読書感想

ネタバレ注意。



この本の主軸となるのは、清二を殺したのは誰か、です。

それはなんら意外性のない人物、早瀬が犯人でした。

メインに据えた謎がとても弱いためミステリー小説としては退屈なものでしょう。

それに早瀬がなぜミドリや田川を殺したのか、いまいちよくわからない。

なんで性犯罪にとどまらず殺害まで至るのか。

しかも二人とも警察に情報を提供するいわば警察のスパイのような存在。

警察にとってはありがたい人物をなぜ殺してしまうのか。

そして警察組織がなぜそんな人物を殺されたのにもかかわらず、それを黙認するのかもいまいちわからない。

公安が捜査を辞めさせた理由がわからない。

スパイの存在がばれてしまうからってなってるけど、そんなの外にバレないように早瀬を逮捕することなんていくらでもできそうに思うけど。

主軸になるこの事件を、もっときれいに片付けてほしかった。

ミステリー小説ではなく大河小説ということでいうのなら、清二、民雄を経て三代目の和也が、警官が世間の人々の支持を得られるなら際どい捜査だってやってみせる、そんな警官に育ったことはいいと思います。

ただ、そういう結論に持って行くにしては取りとめのない小説に思います。

ただ長ければ大作になるわけじゃない。

正直そんな印象です。