母の診察に同行した時に「あなたは黙っていてください。ご本人から答えてもらいますから」といわれたことがあります。
医師の質問に母が十分に答えられなかったので、私が説明を加えようとしたのです。
当時の母は聴力が衰えて、記憶も曖昧になっていました。
自分の容態も満足に伝えられず、時には困っていることすら隠してしまいます。
見栄もあるのでしょうが、質問の真意が捉えられない場合も多々あります。
子供の聞き取り時に親が代弁者になってしまうのとは、違っていると思うのですが。
医師の説明に納得したように頷き、丁寧にお礼をして診察室を出た母は「先生なんて言ってたの?」と必ず私に聞いてきました。
認知症は本人に自覚がなく正常に対応できることも沢山あるので、一緒に生活している人でないと知りえないことがあります。
夫も物忘れ外来に行き始めましたが、毎回の認知度のテストでは前回より回復しているそうです。
そのテストに対応できていても日常生活では、確実にできない事例が増えています。
そのことを伝えたいのですが診察室では本人を前にして中々訴えられません。
こういう本当の高齢者の姿を知りえていない現場は多々あります。
介護や医療施設での高齢者対応は本人からの情報収集が最優先ですが、真実の情報はそれだけでは不十分です。
付き添の家族がいる場合には、本人がいない場で家族からの情報も聞きとってもらいたいものです。