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ニッポンのゆる~い日常

「普通の国」へ日本の転換図れ

2014-12-11 11:29:34 | 正論より
12月11日付  産経新聞【正論】より


「普通の国」へ日本の転換図れ    帝塚山大学名誉教授・伊原吉之助氏


http://www.sankei.com/column/news/141211/clm1412110001-n1.html


 総選挙はわが国の前途を決める大切な行事です。15歳で敗戦を迎へ、価値観の大転換に直面して何が正しい道かを不断に考へてきた私にとり、わが国の現状は奇怪至極です。このままでは、わが国を築いてきた先輩の霊に合はす顔がない。

 そこで立候補した諸公、および有権者に、幾つか問題点を指摘して一考を促す次第です。




 ≪有権者が選挙を楽しむ工夫を≫


 台湾の重要な選挙を悉(ことごと)く視察してきた私にとり、わが国の選挙は実につまらない。台湾では野党の演説会に家族連れで支持者が集ひ、屋台が出、党のグッズ売り場まであつて実に楽しいのです。候補の演説は聴衆との活気ある対話です。わが国の候補の演説は一方通行。大抵は騒音として敬遠されるだけです。


 わが国は選挙法をどんどん“改悪”し、選挙を実につまらなくしました。だから投票率が有権者総数の半分以下が普通です。この事態に危機感を持たぬ政治家諸公の神経はどうなつてゐるのでせう? 商店なら売れ行き不振でたちまち倒産ですよ。

 なぜ候補者が支持者と交流できるやうに、有権者が選挙を歓迎するやうに、選挙法を改正しないのでせう。若者が喜んで投票に行くやうな工夫がどこにありますか。



 第2、占領基本法に過ぎぬ“新憲法”がいまだに存在してゐるのは何故(なぜ)でせうか。独立国でなくて、国際貢献はできるのでせうか。

 最近、やつと一部に“憲法改正”の動きが出てきましたが、現行憲法はただちに廃止し、当分は不文憲法(憲政の慣習法)で行き、じつくりと論議を尽くした末に、新憲法を制定するが宜(よろ)しい。



 第3、一国の存立に大事なのは国防と外交です。選挙では内政、特に経済や景気に目を奪はれ勝ちです。でも、国防と外交が堅実でないと、経済や生活の安定など、たちまち消し飛びます。





 ≪アジアの安定勢力に戻れ≫


 わが国は有史以来、連綿と続く歴史を持つた東亜の安定勢力でしたし、今なほさうです。和を以(もっ)て貴しとなす国であり、仁徳天皇のやうに、民の竈(かまど)を気にする皇室が君臨してこられました。

 朝鮮の人々は難を逃れてわが国に来て安全に暮らし、文化を伝へました。明治以降も日本は近隣諸国と仲良くしようとしたのに、李氏朝鮮も清朝の李鴻章も「以夷制夷」策を取つたので、結局、日清日露の戦争になりました。



 米国の一大失策は、攪乱(かくらん)勢力のソ中と結んで、安定勢力の日本を叩(たた)いたことです。その後、ソ中は米国に敵対し、米国はソ連擁護のために叩いた日独と結んで冷戦を乗り切りました。米国は先を見通せない国だとわかります。


 中国の指導者は蓄財者であつて民を養ひません。だから、常に政情不安です。科挙官僚は聖賢の言葉の暗記を立身出世の手段にしたので言行は不一致、偉い人ほど金持ちです。食へぬ民は常時反逆し、君主の姓が始終変はる「易姓革命」の国です。中国が安定するのは、田畑に比べて人口が少ない王朝初期だけ。政権は人口を過大にし過ぎ、政情は安定しない。中国はやはり安定勢力になりにくい国です。


 そのわが国も占領状態が続いたため、まともな国から程遠い状態にあります。だから一刻も早く「普通の国」にして、東亜の安定勢力に戻る必要があります。





 ≪国防と外交が繁栄の基本だ≫


 戦後の日本は、米国が世界の運命を握ると知りましたから、日米協力を国是にしてきました。でも集団的自衛権の行使にもたつくやうな国が、米国にとつて頼りになりますかねえ。


 米国にはいまだに日本弱体派と日本普通国派とがあります。日本を信用せず、弱いままにしておきたいといふのは米国の我儘(わがまま)です。わが国は、世界の安定に貢献するため、本来の姿に戻りませう。



 国防問題で、安倍晋三内閣が閣議決定した集団的自衛権の行使容認に反対する声がありました。

 これに限らず、戦後の防衛問題論議はをかしい。例へば、軍隊を持つと戦争をしたがるといふ。それなら外国の軍隊はもつと怖い筈(はず)なのに、彼ら(軍隊を否定的に見る人たち)は一向に怖がらない。

 革命や改革のためなら人を傷つけて厭(いと)はない彼らの反軍思想は、日本国内向けの言論に過ぎない。彼らは自国を弱めておきたいだけなのです。


 専守防衛軽武装論もをかしい。

 撃たれてから撃ち返せといふのは横綱相撲をやれといふのでせう。横綱は受けて立つ。抜群の力量があるからです。つまり、専守防衛は重武装が前提です。重武装が嫌なら撃たれるのを待つのは止めませう。


 こんな奇怪な論がまかり通つてきたのは、日本が「普通の国」でなかつたからです。自前で自国の安全保障を考へてきませんでした。周辺国がこれを歓迎したのは自国の安全に役立つからです。

 先人曰(いは)く、天ハ自ラ助クル者ヲ助ク。“愚者の楽園”から脱出しないと亡(ほろ)びますよ。(いはら きちのすけ)







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