【ニッポンの新常識】
戦後日本の歪んだ「言論の自由」と罰則すらない放送法
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20151128/dms1511281000003-n1.htm
日本人の大半は正義感が強く、ルール違反を忌み嫌う。一方で、日本人の心の中には「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という精神も確実に同居している。
矛盾としか思えない日本人的精神の根底に、聖徳太子の「和をもって尊しとなす」という価値観が存在するように思う。
ルール違反は通常、「和を乱す元凶」になるが、日本人同士の場合、場の空気次第で、ルール違反を認めた方が「和を乱さない」こともある。
しかし、毎日みんなで赤信号を渡るうちに、それがルール違反だという原則まで忘れるようなら、問題である。
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【放送法第4条】 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
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テレビやラジオの放送事業者は、私企業であっても、決められた周波数を独占利用する免許を国から与えられた公的存在である。従って、どの国も「言論の自由」を一定程度制限するのが通常だが、日本の放送法第4条は、公平や中立、事実報道を求める程度の緩い規定で、罰則すらない。
新聞などの印刷媒体に、放送法のような法律はなく、「言論の自由」が完全に認められる。
昭和20(1945)年9月15日、朝日新聞は「原子爆弾の使用や無辜の国民殺傷が(中略)国際法違反、戦争犯罪であることを否むことはできないであろう」という鳩山一郎氏(後の首相)のインタビューを掲載した。同17日には、米兵の犯罪を批判した解説記事を載せた。結果、2日間の発行停止命令を受けた。
ポツダム宣言第10条には「言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立されるべきである」とあったが、GHQ(連合国軍総司令部)占領下の日本に「言論の自由」などなかった。
放送法の話題に戻すと、GHQはNHKのラジオ番組「真相はこうだ」などで、日本の放送事業者に「事実をまげた報道」を強要した。以来、70年間、多くの放送事業者が赤信号を渡り続けている。
私も呼びかけ人に名前を連ねる「放送法遵守を求める視聴者の会」は、もう赤信号を渡るべきではないと言っているだけなのだが、放送事業者にとってわれわれは、70年間続いた「和」を乱す、不届き者なのかもしれない。
■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。自著・共著に『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』(PHP研究所)、『素晴らしい国・日本に告ぐ』(青林堂)など。