核ミサイル搭載のSLBM建造を急げ、中露の狙いは日本だ
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef4be0c73eb5b498612e0ed31e72d296a9e382be?page=1
国家を支えるのは時々の国民であり、それ以外の誰でもない。
人も組織も国家の安全と生存が確保されてこそ、それぞれが目指す価値の追求ができる。繁栄も福利も文化も、国家の安全が保障されなければ何一つ実現できない。
ウクライナの惨状はそれを如実に示している。
しかし戦後の日本では、国家を権力としてのみとらえ、しかも国民(人民)に対する抑圧機関として敵視する共産主義の国家観が、言論界、教育界を支配してきた。
そのような国家を敵視する教育とメディアによる洗脳が占領期以来77年にわたり続けられてきた。
その結果、現在の日本では、国家の主権と独立が脅かされたときに、個々の命を危険にさらすことを覚悟して武器を持って抵抗するとの意思を表明する日本国民は、いまだに1割強に過ぎない。
世界最低レベルである。世界では通常、老若男女を問わず6割から7割の国民が武器を持って戦うと答える。
米国の核の傘も当てにできない。1994年、ウクライナが千数百発の核弾頭をすべてロシアに引き渡すことに合意した際、米英露、後に中仏もウクライナの安全を保障すると約束した。
しかしジョージアやクリミアをロシアが実質的に武力併合しても、米英仏中はロシアの核恫喝に対抗して自国の核戦力を展開しウクライナの安全を保障する拡大抑止行動はとらなかった。
今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、米英はじめNATO(北大西洋条約機構)加盟国は、ロシアとの核戦争にエスカレートするのを恐れ、国土奪還に不可欠な戦闘機や戦車をウクライナに供与するのを躊躇している。
核も通常戦力も拡大抑止は当てにならないことが、ウクライナ紛争で明白になった。
しかし戦後日本は、米国の拡大抑止に依存し、長らく、自らの真摯な防衛努力を怠ってきた。
日米同盟も日本自らが戦い自らを守る覚悟を実力で示さなければ、米軍の来援は期待できない。そのことは、米軍のアフガニスタン撤退でも明らかになった。
しかも日本列島全体が中露、北朝鮮の各種核ミサイルにより狙われており、米軍はまずこれらのミサイル脅威を排除してからでなければ、米空母は日本に来援できないとみている。
それを前提にした戦略に米軍はすでに転換している。
日本は米軍来援まで、1カ月半程度は自力で日本の国土と国民を守らねばならない状況になっている。
しかし、その間生き残るための地下シェルターも、戦い続けるための予備役も武器・弾薬の備蓄もない。それが日本の実情である。
例えば、日本の国民全人口に対する兵員比率は世界最低レベルである。
現役と予備役、準軍隊を併せた兵員の対人口比率は、日本は先進国中最低の0.25%に過ぎない。
米国は0.68%、台湾は8%、韓国は13%、中国は民兵600万人を含め2.38%、ロシアは2.43%、北朝鮮は何と30%である。
日本は、自衛官定数を倍増するとともに、80万人規模の予備役を整備し、世界平均レベルの兵員比率を確保しなければならない。
そうしなければ、周辺国の軍事的なマンパワーに対抗できない。
日本の防衛予算の対GDP(国内総生産)比率も、補正予算を加算しても1.24%であり、依然としてスペインに次ぎ先進国中最低である。
ドイツのショルツ首相は、ウクライナ紛争が始まった3日後に、国防費比率をNATO共通目標の2%以上に引き上げると表明した。
日本周辺の脅威度は、ドイツよりも高い。
日本もドイツに倣い防衛費を少なくとも倍増させねばならない。それでも世界平均以下であり、中露朝3正面同時対処のためには、対GDP比3%程度は必要であろう。
日本には国民がいざという時に身を守るための備えもない。
核シェルターの普及率は国民総人口の0.02%に過ぎない。世界各国は約7割以上の国民を収容できる核シェルターを具えている。
広島、長崎や核実験のデータにより、大規模疎開と核シェルターの併用により、死傷者が百分の一にできることが分かっている。
ウクライナでは市民は地下シェルターに逃げ込んでいる。しかし日本は、唯一の被爆国と言いながら、核ミサイルの奇襲から国民の安全を守るシェルターすらなきに等しい。
防衛の意志と能力が周辺国より劣った国は侵略され戦場になる。
日本周辺の敵性国はすべて核武装し軍事力強化に余念がない、独裁体質の国ばかりである。
他方、米国の国力は相対的に低下し、バラク・オバマ大統領以来歴代大統領は、米国はもはや世界の警察官ではないと再々明言している。
このような情勢のなか、韓国と台湾の国防予算は対GDP比率2%を超え、韓国は原潜建造に着手し、台湾もミサイルの質量の充実を目指し、備えを固めつつある。
日本が巨額の予算をかけて整備してきたミサイル防衛システムは、中露朝が開発配備を進めている、機動型の極超音速兵器により無効化されつつある。
これを抑止するためには、核搭載可能な極超音速兵器を最優先で開発配備しなければならない。
また日本には国家レベルの情報機関も、貴重な官民学の情報を外国の諜報謀略活動から守るために不可欠なスパイ防止法もない。
スパイ防止法はどのような小国にもある。スパイ防止法無しでは、情報機関が諜報工作に浸透され、国家の健全性を保てず、まともな情報も得られず国家戦略も立てられない。
また、巨額をかけて開発した貴重な先端技術も盗まれ逆用されることになる。
最近も、中国の極超音速兵器のスクラムジェット・エンジンと耐熱素材の技術は日本の大学から漏洩したことが判明している。
軍事研究を拒否しながら中国に軍民利用技術を漏洩している日本学術会議の改革も不可欠である。
現在議論の対象となっている安全保障上の概念として「敵基地攻撃」に代えて「反撃」という概念を用いることには、以下の理由から賛成できない。
(1) 「反撃」は、本質的に待ち受けを意味し、もし核弾頭等であった場合にはそれだけで致命的損害になる。
ウクライナ戦争では、かつてないほど頻繁かつあからさまにロシアによる核恫喝が行われ、ロシアの戦術核兵器使用の可能性も高まっている。
日本有事にも、中朝露による核恫喝がかけられるのは、間違いがない。核攻撃のおそれすらないとは言えない。
それにもかかわらず、先制を許すのは、日本国民数十万人の命をみすみす犠牲に供することを意味している。
「専守防衛」とは、それほど無責任で残虐な防衛政策であることを、国民はよく認識すべきである。
(2) 「座して死を待つのは憲法の本意ではない」との趣旨の過去の国会答弁にもある通り、現在の憲法解釈の下でも、ぎりぎりの状況下では、自衛目的の先制攻撃は許されているとみるべきである。
その意味で「反撃」という概念では、自衛的先制すら排除して「専守防衛」を更に狭く解釈し、抑止力を低下させ危機を自ら招きよせる結果になる。
敵国土上空から迎撃困難な極超音速ミサイルで日本全土を精密攻撃できる時代に、「専守防衛」という概念に捕らわれていては、日本の自衛そのものが成り立たない。
それにもかかわらず、わざわざさらに狭く「専守防衛」概念を解釈するのは、自殺行為に等しい。
(3) 今回のウクライナ戦争でも立証されたように、将来戦におけるミサイルの大量精密攻撃は、一気に防空・航空戦力を無力化する威力を備えており、「反撃」を許容する可能性は低い。
特に、国土に先制奇襲攻撃を受けた場合は、反撃態勢のみでは、待ち受けている状態のまま、指揮通信中枢、基地、補給施設などに大量損耗を被り、継戦基盤そのものが壊滅されるおそれがある。
(4) 宇宙、サイバー、電磁波戦など新領域での戦いでは、攻撃せずに待ち受けていれば先制奇襲で一気に戦力が無力化されるおそれが大きい。
戦略攻勢の余地を残しておかねば、残存すらできないであろう。これらの新領域における戦いでは、先制側が圧倒的に優位になると、米国の専門家も予測している。
「核共有」という概念も、核抑止力強化にも核の傘の信頼性強化にもつながらず、日本の核政策として採るべき選択ではない。その理由は以下の通り。
核兵器の使用統制権においては、核兵器の先制第一撃の権限、いわゆる「核の引き金」を誰が持つかが本質的問題であり、NATO内でも米国と同盟諸国の間で最も争点となった点である。
核兵器をどこに置くかは問題ではない。
日本国内に米国の管理する核弾頭を置いておいても、米大統領が核使用を許可しない限り使えないのでは、日本を守るために米国が核戦争のリスクを冒すことを保証するとの「核の傘」の信頼性は上がらず、核抑止力の強化にもならない。
米国のケネディ政権の成立に伴い、核の引き金を誰が引くかがNATO内で問題となった。
それまで、核の引き金の分有、欧州独自の核戦力の余地を認めていたアイゼンハワー政権に替わり、ケネディ政権になり、マクナマラ国防長官は、米大統領の手に核の引き金を集中することを欧州NATO同盟国に強要した。
それに反発してフランスは、NATOの軍事機構から脱退し独自核開発に踏み切った。
その際に、ドゴールはケネディに対し首脳会談の場で、パリをソ連の核攻撃から守るために米国はニューヨークを犠牲にする覚悟はあるのかと詰め寄ったが、ケネディは明確な回答を避けたとされている。
英国は米国との「特殊な関係」を生かし、英国製の独自核を米国製のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)に搭載し、それを英国製の原潜SSBNに装備することで両立を図った。
英国のSLBMは米国製で米国の核作戦計画の一部として取り込まれているが、英首相は同時に、自国の核作戦に対する独自の指揮統制通信系統を保持して、自ら核の引き金を引く権限を確保した。
西ドイツではアデナウアー首相、シュトラウス国防相は、独自核の保有を望んでいた。
しかし、敗戦国のためマクナマラに押し切られ、協定に基づき米国の核弾頭管理部隊の国内駐留を認める代わりに、平時から核攻撃訓練を行い、情報業務や計策策定にも参加するという、現在の、形式的な「核共有」に甘んじざるを得なかった。
このドイツ型の「核共有」では、米大統領の認可なしには、核使用は許されず、キッシンジャーはドイツ型「核共有」を単なるシンボルでしかなく、核の傘の信頼性を高めるものではないと明言している。
むしろ自国内に敵国の核攻撃目標を作り、平時から管理や警備の責任を負うだけでマイナスが多い。
特に、日本のような人口稠密な国土では放射能雲などにより2次被害を招くことになり、採るべき選択ではない。
日本は最小限、英国型の自国核弾頭を米国製SLBMに搭載し自国の原潜と兵員で運用するか、できれば、フランスのようにSLBMも含めすべて国産で核武装すべきである。
SSBN1隻の建造は約3000億円で5年あれば可能とみられている。
日本周辺の広大な海域に展開するにはSSBN6隻が必要となり、それを守るために攻撃型原潜SSNを12隻保有する必要があると専門家は見積もっている。
これらの建造には、整備に約10年、所要予算は計5兆円程度となるであろう。
運用期間は30年程度と見込まれる。その間の所要予算は年間平均1~2兆円程度となろう。SSBNは残存性が最も高く、主に反撃にしか使えない自衛的な核戦力であり、四面環海の日本には適している。英仏もSSBNが核戦力の主力となっている。
SSBN建造には時間を要するが、陸上配備なら、短期間でより少ない予算で実現できる。
地下数百メートルの基地に、移動用超大型トレーラーに積載した固体燃料ロケット部隊を密かに展開し、核弾頭をいつでも搭載できる状態で所在を秘匿して配備しておくのが、最も安価で早く核戦力を保有できる。
いずれの方法によるとしても、日本の国力と技術力があれば、核爆弾だけなら数日、核ミサイルでも最短数カ月以内に地下配備型核ミサイルを展開できる。実現できるか否かは、国民の意志と政治的決定次第である。
しかしこのまま、日本国民が平和ボケから目覚めず、世界では常識となっている、兵員の増員、防衛予算の増額、極超音速兵器の開発配備、スパイ防止法の制定など、ごく当たり前の国防努力を怠り続けるならば、台湾と同時どころか、台湾よりも前に侵略されるおそれが高まるだろう。
ウクライナの次は台湾ではない、日本なのだ。
矢野 義昭
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef4be0c73eb5b498612e0ed31e72d296a9e382be?page=1
国家を支えるのは時々の国民であり、それ以外の誰でもない。
人も組織も国家の安全と生存が確保されてこそ、それぞれが目指す価値の追求ができる。繁栄も福利も文化も、国家の安全が保障されなければ何一つ実現できない。
ウクライナの惨状はそれを如実に示している。
しかし戦後の日本では、国家を権力としてのみとらえ、しかも国民(人民)に対する抑圧機関として敵視する共産主義の国家観が、言論界、教育界を支配してきた。
そのような国家を敵視する教育とメディアによる洗脳が占領期以来77年にわたり続けられてきた。
その結果、現在の日本では、国家の主権と独立が脅かされたときに、個々の命を危険にさらすことを覚悟して武器を持って抵抗するとの意思を表明する日本国民は、いまだに1割強に過ぎない。
世界最低レベルである。世界では通常、老若男女を問わず6割から7割の国民が武器を持って戦うと答える。
米国の核の傘も当てにできない。1994年、ウクライナが千数百発の核弾頭をすべてロシアに引き渡すことに合意した際、米英露、後に中仏もウクライナの安全を保障すると約束した。
しかしジョージアやクリミアをロシアが実質的に武力併合しても、米英仏中はロシアの核恫喝に対抗して自国の核戦力を展開しウクライナの安全を保障する拡大抑止行動はとらなかった。
今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、米英はじめNATO(北大西洋条約機構)加盟国は、ロシアとの核戦争にエスカレートするのを恐れ、国土奪還に不可欠な戦闘機や戦車をウクライナに供与するのを躊躇している。
核も通常戦力も拡大抑止は当てにならないことが、ウクライナ紛争で明白になった。
しかし戦後日本は、米国の拡大抑止に依存し、長らく、自らの真摯な防衛努力を怠ってきた。
日米同盟も日本自らが戦い自らを守る覚悟を実力で示さなければ、米軍の来援は期待できない。そのことは、米軍のアフガニスタン撤退でも明らかになった。
しかも日本列島全体が中露、北朝鮮の各種核ミサイルにより狙われており、米軍はまずこれらのミサイル脅威を排除してからでなければ、米空母は日本に来援できないとみている。
それを前提にした戦略に米軍はすでに転換している。
日本は米軍来援まで、1カ月半程度は自力で日本の国土と国民を守らねばならない状況になっている。
しかし、その間生き残るための地下シェルターも、戦い続けるための予備役も武器・弾薬の備蓄もない。それが日本の実情である。
例えば、日本の国民全人口に対する兵員比率は世界最低レベルである。
現役と予備役、準軍隊を併せた兵員の対人口比率は、日本は先進国中最低の0.25%に過ぎない。
米国は0.68%、台湾は8%、韓国は13%、中国は民兵600万人を含め2.38%、ロシアは2.43%、北朝鮮は何と30%である。
日本は、自衛官定数を倍増するとともに、80万人規模の予備役を整備し、世界平均レベルの兵員比率を確保しなければならない。
そうしなければ、周辺国の軍事的なマンパワーに対抗できない。
日本の防衛予算の対GDP(国内総生産)比率も、補正予算を加算しても1.24%であり、依然としてスペインに次ぎ先進国中最低である。
ドイツのショルツ首相は、ウクライナ紛争が始まった3日後に、国防費比率をNATO共通目標の2%以上に引き上げると表明した。
日本周辺の脅威度は、ドイツよりも高い。
日本もドイツに倣い防衛費を少なくとも倍増させねばならない。それでも世界平均以下であり、中露朝3正面同時対処のためには、対GDP比3%程度は必要であろう。
日本には国民がいざという時に身を守るための備えもない。
核シェルターの普及率は国民総人口の0.02%に過ぎない。世界各国は約7割以上の国民を収容できる核シェルターを具えている。
広島、長崎や核実験のデータにより、大規模疎開と核シェルターの併用により、死傷者が百分の一にできることが分かっている。
ウクライナでは市民は地下シェルターに逃げ込んでいる。しかし日本は、唯一の被爆国と言いながら、核ミサイルの奇襲から国民の安全を守るシェルターすらなきに等しい。
防衛の意志と能力が周辺国より劣った国は侵略され戦場になる。
日本周辺の敵性国はすべて核武装し軍事力強化に余念がない、独裁体質の国ばかりである。
他方、米国の国力は相対的に低下し、バラク・オバマ大統領以来歴代大統領は、米国はもはや世界の警察官ではないと再々明言している。
このような情勢のなか、韓国と台湾の国防予算は対GDP比率2%を超え、韓国は原潜建造に着手し、台湾もミサイルの質量の充実を目指し、備えを固めつつある。
日本が巨額の予算をかけて整備してきたミサイル防衛システムは、中露朝が開発配備を進めている、機動型の極超音速兵器により無効化されつつある。
これを抑止するためには、核搭載可能な極超音速兵器を最優先で開発配備しなければならない。
また日本には国家レベルの情報機関も、貴重な官民学の情報を外国の諜報謀略活動から守るために不可欠なスパイ防止法もない。
スパイ防止法はどのような小国にもある。スパイ防止法無しでは、情報機関が諜報工作に浸透され、国家の健全性を保てず、まともな情報も得られず国家戦略も立てられない。
また、巨額をかけて開発した貴重な先端技術も盗まれ逆用されることになる。
最近も、中国の極超音速兵器のスクラムジェット・エンジンと耐熱素材の技術は日本の大学から漏洩したことが判明している。
軍事研究を拒否しながら中国に軍民利用技術を漏洩している日本学術会議の改革も不可欠である。
現在議論の対象となっている安全保障上の概念として「敵基地攻撃」に代えて「反撃」という概念を用いることには、以下の理由から賛成できない。
(1) 「反撃」は、本質的に待ち受けを意味し、もし核弾頭等であった場合にはそれだけで致命的損害になる。
ウクライナ戦争では、かつてないほど頻繁かつあからさまにロシアによる核恫喝が行われ、ロシアの戦術核兵器使用の可能性も高まっている。
日本有事にも、中朝露による核恫喝がかけられるのは、間違いがない。核攻撃のおそれすらないとは言えない。
それにもかかわらず、先制を許すのは、日本国民数十万人の命をみすみす犠牲に供することを意味している。
「専守防衛」とは、それほど無責任で残虐な防衛政策であることを、国民はよく認識すべきである。
(2) 「座して死を待つのは憲法の本意ではない」との趣旨の過去の国会答弁にもある通り、現在の憲法解釈の下でも、ぎりぎりの状況下では、自衛目的の先制攻撃は許されているとみるべきである。
その意味で「反撃」という概念では、自衛的先制すら排除して「専守防衛」を更に狭く解釈し、抑止力を低下させ危機を自ら招きよせる結果になる。
敵国土上空から迎撃困難な極超音速ミサイルで日本全土を精密攻撃できる時代に、「専守防衛」という概念に捕らわれていては、日本の自衛そのものが成り立たない。
それにもかかわらず、わざわざさらに狭く「専守防衛」概念を解釈するのは、自殺行為に等しい。
(3) 今回のウクライナ戦争でも立証されたように、将来戦におけるミサイルの大量精密攻撃は、一気に防空・航空戦力を無力化する威力を備えており、「反撃」を許容する可能性は低い。
特に、国土に先制奇襲攻撃を受けた場合は、反撃態勢のみでは、待ち受けている状態のまま、指揮通信中枢、基地、補給施設などに大量損耗を被り、継戦基盤そのものが壊滅されるおそれがある。
(4) 宇宙、サイバー、電磁波戦など新領域での戦いでは、攻撃せずに待ち受けていれば先制奇襲で一気に戦力が無力化されるおそれが大きい。
戦略攻勢の余地を残しておかねば、残存すらできないであろう。これらの新領域における戦いでは、先制側が圧倒的に優位になると、米国の専門家も予測している。
「核共有」という概念も、核抑止力強化にも核の傘の信頼性強化にもつながらず、日本の核政策として採るべき選択ではない。その理由は以下の通り。
核兵器の使用統制権においては、核兵器の先制第一撃の権限、いわゆる「核の引き金」を誰が持つかが本質的問題であり、NATO内でも米国と同盟諸国の間で最も争点となった点である。
核兵器をどこに置くかは問題ではない。
日本国内に米国の管理する核弾頭を置いておいても、米大統領が核使用を許可しない限り使えないのでは、日本を守るために米国が核戦争のリスクを冒すことを保証するとの「核の傘」の信頼性は上がらず、核抑止力の強化にもならない。
米国のケネディ政権の成立に伴い、核の引き金を誰が引くかがNATO内で問題となった。
それまで、核の引き金の分有、欧州独自の核戦力の余地を認めていたアイゼンハワー政権に替わり、ケネディ政権になり、マクナマラ国防長官は、米大統領の手に核の引き金を集中することを欧州NATO同盟国に強要した。
それに反発してフランスは、NATOの軍事機構から脱退し独自核開発に踏み切った。
その際に、ドゴールはケネディに対し首脳会談の場で、パリをソ連の核攻撃から守るために米国はニューヨークを犠牲にする覚悟はあるのかと詰め寄ったが、ケネディは明確な回答を避けたとされている。
英国は米国との「特殊な関係」を生かし、英国製の独自核を米国製のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)に搭載し、それを英国製の原潜SSBNに装備することで両立を図った。
英国のSLBMは米国製で米国の核作戦計画の一部として取り込まれているが、英首相は同時に、自国の核作戦に対する独自の指揮統制通信系統を保持して、自ら核の引き金を引く権限を確保した。
西ドイツではアデナウアー首相、シュトラウス国防相は、独自核の保有を望んでいた。
しかし、敗戦国のためマクナマラに押し切られ、協定に基づき米国の核弾頭管理部隊の国内駐留を認める代わりに、平時から核攻撃訓練を行い、情報業務や計策策定にも参加するという、現在の、形式的な「核共有」に甘んじざるを得なかった。
このドイツ型の「核共有」では、米大統領の認可なしには、核使用は許されず、キッシンジャーはドイツ型「核共有」を単なるシンボルでしかなく、核の傘の信頼性を高めるものではないと明言している。
むしろ自国内に敵国の核攻撃目標を作り、平時から管理や警備の責任を負うだけでマイナスが多い。
特に、日本のような人口稠密な国土では放射能雲などにより2次被害を招くことになり、採るべき選択ではない。
日本は最小限、英国型の自国核弾頭を米国製SLBMに搭載し自国の原潜と兵員で運用するか、できれば、フランスのようにSLBMも含めすべて国産で核武装すべきである。
SSBN1隻の建造は約3000億円で5年あれば可能とみられている。
日本周辺の広大な海域に展開するにはSSBN6隻が必要となり、それを守るために攻撃型原潜SSNを12隻保有する必要があると専門家は見積もっている。
これらの建造には、整備に約10年、所要予算は計5兆円程度となるであろう。
運用期間は30年程度と見込まれる。その間の所要予算は年間平均1~2兆円程度となろう。SSBNは残存性が最も高く、主に反撃にしか使えない自衛的な核戦力であり、四面環海の日本には適している。英仏もSSBNが核戦力の主力となっている。
SSBN建造には時間を要するが、陸上配備なら、短期間でより少ない予算で実現できる。
地下数百メートルの基地に、移動用超大型トレーラーに積載した固体燃料ロケット部隊を密かに展開し、核弾頭をいつでも搭載できる状態で所在を秘匿して配備しておくのが、最も安価で早く核戦力を保有できる。
いずれの方法によるとしても、日本の国力と技術力があれば、核爆弾だけなら数日、核ミサイルでも最短数カ月以内に地下配備型核ミサイルを展開できる。実現できるか否かは、国民の意志と政治的決定次第である。
しかしこのまま、日本国民が平和ボケから目覚めず、世界では常識となっている、兵員の増員、防衛予算の増額、極超音速兵器の開発配備、スパイ防止法の制定など、ごく当たり前の国防努力を怠り続けるならば、台湾と同時どころか、台湾よりも前に侵略されるおそれが高まるだろう。
ウクライナの次は台湾ではない、日本なのだ。
矢野 義昭