【産経抄】9月9日
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100909/plc1009090423003-n1.htm
「いっそのこと島を譲ってしまったら、と夢想する」。平成17年、当時朝日新聞の論説主幹だった若宮啓文さんが、韓国の不法占拠が続く竹島について書いたコラムには、仰天したものだ。
▼きのうのその朝日の1面トップ記事の書き出しにも、驚いた。「日本が領有を主張する尖閣諸島・久場島付近の東シナ海で…」。海上保安庁が、違法操業の疑いがある中国漁船の船長を逮捕した現場は、日本の領海内に決まっている。
▼人ごとのような言いぐさには、どこの国の新聞なのか、と問いただしたくなる。現場海域の領有について、朝日の「主張」をぜひ示してもらいたい。でないと、「朝日が完全に中国の世界戦略のお先棒を担いでいる」(『諸君』平成18年2月号)との、故稲垣武さんの指摘がますます説得力を持つ。
▼そういえば、若宮コラムからまもなく、中国で反日暴動デモが起こった。目を覆うばかりの狼藉(ろうぜき)だったが、朝日は社説で、反日の根底にあるのは小泉首相の靖国神社参拝だとかばった。「小泉首相の責任は重い」との見出しには、「やれやれというほかない」と小欄で書いた。
▼今回、朝日以上に心配なのが、政府の対応だ。中国漁船の行為は、海保の巡視船に衝突を繰り返すなどきわめて悪質で、海上保安官の命にかかわる可能性もあった。にもかかわらず、立件の判断に半日もかかった。
▼理由の一つは、仙谷由人官房長官が、中国と波風を立てたくないとの態度をみせたからだという。「日本国内がヒートアップしないで、冷静に対処することが必要だ」。きのうのコメントにも、領土を守る気概は感じられず、人ごとのようだ。どこの国の政府か、と問いただしたくなる。