ブログの神様が降臨している時は連続投稿もしちゃいます
さて、標題の「湿布」ですが、特に高齢者の皆様は、た~くさん病院でいただいてきますよね。
別に悪いと言っているわけではなく、湿布ってどいうもので、どんなものが入っているか、持続効果はどのくらいかということは御存じかな~といつも思います。
「ひや~として気持ちいいんや」
「貼っていたら良くなる気がする」
・・・その「気」は大事だと思うのですが、貼付することにより身体にはどのように作用しているのか、あまり考えたことはないかなと思います。
私が思うに、その大量に病院からいただく高齢者ほど「湿布」の使用は注意したほうがいいかなと考えております。
湿布の種類
冷感シップ
消炎鎮痛剤が入っており、メントールなど「スーッ」とする成分も入っています。水分を多く含んだプルプルの部分を皮膚に貼ることで、ヒンヤリとし感覚を得ることができます。打撲、捻挫等、急性に起こった強い痛み(炎症)に使用します。
温感シップ
唐辛子エキスなどが入っており血流が良くなり温かく感じられます。かゆみや発疹が出やすくなります。慢性の痛みやこわばりなどに使用します。
経皮鎮痛消炎テープ(モーラステープやロキソニンテープ等)
肌色の薄いテープです。消炎鎮痛剤が入っていますが、貼付する部分に水分はほとんどないので冷感は感じられません。皮膚から成分が浸透していきます。筋肉痛や関節痛に使用します。
※薬局で販売できる湿布薬と医療機関でないと処方できない湿布薬があります。
湿布の種類2
パップ剤・・・水分の多いプルプルのもの。粘着力がなくすぐ剥がれます。
プラスター剤・・・肌色の薄いテープ状のものです。粘着力はありますが冷感はありません。
湿布の効果持続時間
だいたい6~12時間と言われています。その人の皮膚の状態や感覚、炎症の状態で違ってくるのだと思います。
しかし、例えば温感シップを6時間過ぎて貼り続けていたらどうなるのでしょうか。水分の多いパップ剤がほとんどだと思いますので、冷えて来ると思いませんか?気を付けたいですね。
湿布に含まれる成分(いくつか)
ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンという名前で出ています)
非ステロイド性消炎鎮痛剤で、注意書きには2週間以上続けて使用しないように書かれています。
ケトプロロフェン(モーラステープなどです)
非ステロイド性消炎鎮痛剤で、最近、妊娠後期の妊婦さんへの使用は適していないということで処方してはいけないことになりました。胎児の働脈管収縮作用や羊水過少症といった副作用が発現することが分かったからです。
フェルビナク(宣伝でやっている久光製薬の「フェイタス」などです)
非ステロイド性消炎鎮痛剤で、妊婦、喘息のある方、15歳未満は処方はできません。
インドメタシン(これもよく宣伝に出てきますね)
非ステロイド性消炎鎮痛剤
サリチル酸(アスピリンなどはこれになります)
昔から使用されている湿布の成分で、あの湿布独特のニオイはこの成分によるものです。子供に処方しても大丈夫なので広く利用されています。これも非ステロイド性消炎鎮痛剤。
dlカンフル
局所に軽い炎症を起こさせることによって、反射的に血管を拡張し血流を促進させます。鎮痛、鎮痒、収斂、消炎作用があります。
トウガラシエキス
カプサイシンなどトウガラシに含まれる成分の温熱作用を利用して血流を促進させます。
湿布の作用
身体を冷やすということは熱や腫れを取るということです。炎症を抑えるということです。しかし炎症は、例えば、思いっきり転んで膝を打ちました。腫れて熱が出ました(炎症)。転んで大きな外力で膝を打ったことにより皮膚や筋肉の細胞が破壊され、細胞や組織に障害が起こりました。
それをいち早く修復にかかるのが「炎症」です。炎症は身体の治癒システムとして必要なわけです。しかし、適度を過ぎて細胞の障害が広がると、細胞に中に含まれるたんぱく質分解酵素などが、周辺の細胞を破壊して過剰な炎症・浮腫(虚血)状態を作り出します。
これを拡大させないためにも湿布は必要な場合があります。スポーツ選手でいうところの「アイシング」と同じ目的ということです。
このように筋肉や細胞の機能が障害された、腫れた、熱くなった、動けないくらい痛い(炎症)、このような時に冷やすことは大切なことです。
この「炎症」の時には、いろんな物質が集まってきて細胞や組織の修復のために働きます。
その中の一つの成分の中にプロスタグランジン(PG)という物質があります。湿布剤に含まれる成分の多くは非ステロイド性消炎鎮痛剤でした。これをNSIDEsと呼んでいます。この薬の作用は、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用、抗血小板作用です。
先ほど出てきたPGという炎症物質は、それ自体に炎症作用はありませんが、ブラジキニンという炎症物質の疼痛閾値(本人が痛いと感じるライン)を低下させたり、炎症作用を増強する働きがあります。
NSIDEsは、このPGをつくるために必要な物質(COX)に働きかけ活性を失わせることにより、PGを生成できなくして炎症を抑えます。
これは服用薬でも湿布でも身体の中に入れば炎症の個所にはそのように働きます。
湿布は皮膚からこのような成分が入っていくということを認識しておく必要があるのではないでしょうか。皮膚から浸透するということは血管やリンパ管、あるいはそのほかの体液にも影響が及ぶということです。例えば膝に貼ってあるからと言って、膝だけに作用を及ぼしているわけではないのです。
湿布でも注意書きがあるということはそういうことです。
このNSIDEsはPGを生成しないようにして炎症を抑えるということでした。PGは炎症組織だけで働いているのでしょうか それは違います。PGにも多くの種類がありますが、血管や胃腸、脳、腎臓や肝臓、子宮など多くの組織で様々な働きを行います。
ですから、例えば慢性疼痛で長いこと消炎鎮痛剤を服用すると、どういうことが身体の中で起きるか想像できるでしょうか。組織の機能障害=副作用ということが発症するわけです。
NSIDEsについては、量が多くなるほど胃腸障害作用が強くなることが分かっています。また、心血管系のリスクを上げること、降圧剤の効果を減弱させること、腎機能を低下させ血清カリウム値が増加することなど、まだ多くありますがいろんな副作用が分かっています。
でも、すぐに副作用が出るというわけではありませんので、おかしいなと思ったら、かかりつけ医へご相談されるといいかなと思います。
腎臓から言うと、高齢者や腎機能に障害がある方は、腎臓でPGが作用して腎機能を代償し保持して、血圧上昇を抑えています。
副作用の話は長期間、身体の中に作用した場合のことです。
そこから特に炎症を抑える「冷湿布」を考えるといかがでしょうか。急性の痛みや見た目に炎症を伴った痛みには期間限定で必要なものだと感じます。
では高齢者が多く訴える痛みの大多数は「炎症」による痛みでしょうか。そして慢性疼痛をお持ちの方の痛みは「炎症」の痛みでしょうか。
「炎症」でなくても痛みが感じる時があります。それは「虚血」です。血流障害による痛みです。激痛というよりは、重い痛み、だるい痛み、鈍い痛みという感じでしょうか。さてさて、高齢者の痛みはどちらの痛みでしょうか。
そう、痛みにはいろんな原因がありますが、そんな高齢者や慢性疼痛を持っている皆様こそ、局所の循環を良くすることが必要だと思うのです。ましてや痛みではなく、「重だるいから」「つっぱるから」「つるから」ということで湿布を足全体に貼ったり、それも毎日それをやることは症状をさらに長引かせ慢性化させるのだと思うのです。
引用開始
2016年度診療報酬改定で新たに導入された「70枚まで」という湿布薬の処方制限について、厚生労働省は、あくまで「1処方当たり」のルールであり、同一月の湿布薬の処方回数に制限はないと説明した。同省は、3 月4日開催した地方厚生局や都道府県の担当者向けの改定説明会で、参加者の質問に答え、回答した(資料は、厚労省のホームページ、『湿布薬は70枚まで、超過には理由必要』を参照))。
ただし、「個別の患者における湿布薬処方の必要性について、審査機関が審査することを排除しているわけではない」と付け加え、不要な湿布薬の処方に釘を刺した。
@m3.comより引用
私は湿布が必要ないと言っているのではなく、「こんなに必要かな?」ということです。
そして、ただでさえ老化が進み、活性酸素の量が多くなっている高齢者こそ、湿布は必要最低限にとどめるべきだと思います。それが様々な症状を長引かせないため、国民の皆様の真の健康のためになるのではないかと思います。
先日、診療中に患者さまとの会話の中でそのようなことを感じました。
それに関しましては当院のフェイスブックページ☜クリックを参照にしてください。
あらっ、また長く書き過ぎました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。