やっぱり久しぶりのブログ更新です。
今週は少しドタバタ活動が落ち着き、そして、今週末からはドタバタ活動 第2章が始まります ここまで、もう1年分くらい動いている気分です。なかなか顔を出すことができない星稜高校野球部も、時間をみつけて選手のプレーを観にいきたいと思ってます。
さて、不妊症と鍼灸治療 5(2) に入る前に、妊娠された皆様のご報告です
5(1)では、1月にお一人の患者さまが妊娠されたことをご報告いたしました。その後、ブログ更新が滞っている間に、2月にお二人、3月にお二人、4月現在(4月10日)でお一人の患者さまが妊娠されました。本当に、おめでとうございますです
2月に妊娠された患者さまは、お歳は40歳。当院へは2012年11月からご来院。週1回のペースで治療。当院へ来院して2回目の二段階胚移植で妊娠されました。
もうお一人は、お歳は36歳。当院へ来院されて・・・な~んと2年10カ月目。約週1回のペースの治療間隔で真面目に治療を受けていただきました。いろんなことをやり、いろんな所に行かれました。そして、12回目の体外受精(二段階胚移植)で妊娠されました。この患者さまは鍼灸の・・・というより、本当に粘り強く頑張られた結果だと思います そうそう、旦那さまにも原因がありましたので、その原因の治療も行ったそうです。旦那様も積極的に治療に協力されていました。
3月に妊娠された患者さまは、お歳は36歳。当院へは2013年3月の初めにご来院。3月の中頃に移植予定ということで、週1・2回できるだけ詰めて治療していただくようにしました。人工授精を8回、体外受精3回目にして、初めて妊娠されました。本当に、早期に良い結果がでる人と、なかなか上手くいかない人の差がなんなのか考えるところです。
もうお一人は、お歳は40歳。当院へは、2012年10月にご来院。1月末の体外受精ではマイナス判定で良い結果は得られませんでした。次の周期からは、クリニックを転院するつもりで生理を待っていました。・・・が、生理が来ません。「もうそろそろ生理が来ると思うんですがね~」と診療に来るたびに話していたのですが、3月中頃でも生理が来ませんでした。んん~と思われ婦人科を受診したところ「妊娠5週目ですよ」とのこと。 私もビックリでした。自然妊娠ということです。
4月に妊娠された患者さまは、お歳は40歳。当院へは2012年10月にご来院。週2回のペースの治療間隔でした。人工授精を3回行い、当院通院中も3回行い良い結果は得られませんでした。ただ、毎週、温泉へお母様とご一緒に行き、足湯も行い身体を温めることを心がけ、できるだけ歩くように実践されていました。食事も当院へおいでになってから改善を心がけ実践されていました。これは不妊治療に来院された方の多くが改善される生理痛が改善。多くの愁訴も改善していました。そして、3月に初の体外受精を行い、めでたく妊娠されました そうそう、今年3月で激務の仕事を退職され、不妊治療に専念しようとした矢先でした。 旦那さまからも退職を勧められていたようです。退職したり、転職したり、家を新築したり、引っ越ししたり、と、環境が変わった時、ストレスから解放された時に妊娠されるケースも当院の患者さまでよくみられます。
今年は現時点で6名の方が妊娠されました。鍼灸治療は不妊症(未妊の方が適当かとも思うが…)で悩む患者さまの妊娠に関して、よい方向に促す作用があることは確かだと思います。身体の恒常性維持機能を賦活し、生殖能力にエネルギーを与えることができる身体づくりができるのではないかと思います。自然妊娠の可能性も、生殖補助医療の効果を高めることもできるのだと思います。
ここまで2月から4月上旬の妊娠報告でした でも、これだけで充分長いブログですか
それでは本題に移ります。
今回は、脳と運動と女性の身体 について書いていきたいと思います。最後に付録もつけておきますね。
第2話
昔は脳の神経細胞は変化しないという考えが医科学的常識でしたが、1960年代~70年代、世界で脳の研究が進み、1990年以降、脳は変化するということが解明され常識となっています。医学や科学の常識は、いつの時代も変化しているんですね。
”人が様々な活動をする時、脳はその構造を変化させ、回路を完璧に整えて、従事している作業に適したものにすることが分かった。もし、ある「部分」がダメになっても、ほかの部分が、その仕事を引き継ぐことがある。脳を、それぞれ決まった役目を持つ部品の集合体として機械に喩えてしまうと、こうした脳の変化を充分に説明できない。この脳の基本的な性質は「神経可塑性 neuroplasticity」と呼ばれるようになった。
「神経」とはニューロンを意味する。脳と神経系の神経細胞だ。「可塑的」とは「変化できる、柔軟な、修正できる」という意味だ。”(『脳は奇跡を起こす』 ノーマン・ドイジ著 より)
上記の文章から何が言いたいかと申しますと、身体にいい刺激を与えれば、そのように脳は変化し、脳は身体の機能を調整していますから、そのフィードバックとして身体各部もそれに適応し、いい状態になるだろうということです
女性の性周期を演出する性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン・卵胞刺激ホルモン等)は血流中を循環する強力な伝達物質で、性的な発達をつかさどるだけでなく、脳に様々な形で影響しています。性周期のサイクルは、視床下部から始まり(ゴナドトロピン放出ホルモン) ☞下垂体からホルモン放出(ゴナドトロピン) ☞卵巣(卵胞)に働きかけ(エストロゲン放出) ☞排卵(黄体化ホルモン放出)・黄体からホルモン放出(プロゲステロン) ☞月経(プロゲステロン量低下) ☞血流中の性ホルモン感知(視床下部・フィードバック)という流れは皆さんご存じでしょう。
実は、この視床下部には自律神経中枢もあり、この経路は、視床下部 ☞下垂体 ☞副腎(HPA軸)で身体を内外のストレスに対応できるようにホルモンでバランスをとっているのです
この視床下部は、その他にも、体温調整中枢や、食欲や性欲の中枢も存在します。要は体内の状態を内外の環境に順応させ、一定の状態に保とうとする機能(生体の恒常性維持機能)を働かせている中枢ということです。
また、生き抜くために重要な欲望(情動)も、上位にある大脳に伝えて、これらを意志にかえる行動発揮の機能も果たしています。
さて、ここで、月経前症候群(PMS : Premenstrual Syndrom)と運動とに関してみていきます。
この症候群は、月経のはじまる1・2週間前から、下腹痛、頭痛、めまい等の身体症状や、怒りやすい、緊張、疲れやすい、無気力、不眠などの精神症状が出現し、生理開始と同時に症状が消失する状態です。
また、月経前不快気分障害(PMDD : Prenenstrual Dysphoric Disorder ・・・ PMSより身体症状、精神症状とも重症なものをいい、米国精神医学会の診断基準であるDSM-Ⅳでは特定不能のうつ病態性障害に分類されている)も同様に見ていきます。
~PMSを持つ1800人以上を対象にしたある調査では…~
少なくとも半数の女性が運動によってPMSの症状を和らげていることが分かりました。その女性たちは、運動すると体の症状が軽くなるだけでなく、集中力の低下や気分の落ち込み、衝動的な行動といった、精神面の症状も軽くなると報告しています。
~アメリカ・デューク大学 ジェイムズ・メンタール氏が1992年に行った実験では~
閉経前の女性23人を2グループに分け、有酸素運動か筋力トレーニングをさせて、PMSへの影響を比較しました。両グループとも、週に3回1時間づつトレーニングをしました。
〔有酸素運動 12名・・・15分のウォームアップ後、最大有酸素運動能の70%から85%の強度で30分間ランニング、その後15分クールダウン〕
〔筋トレ 11名・・・指導を受けながらウエイトマシーンで筋トレ〕
結果、両グループともに身体症状は軽減されたが、精神面で目覚ましい改善を見せたのはランニングを行ったグループでした。23項目のチェックリストの18項目で症状が軽くなり、とりわけ、抑うつ感、イライラ、集中力の低下が目立って軽減されました。また、ランニングをしたグループは、あまり悲観的な見方をしなくなり、世の中への関心が高まりました。
これらの理由を脳のシステムで考えると…
PMSや産後のうつ、重い更年期障害などになる人とならない人の違いは、ホルモンの量の多寡によるものではないようです。むしろホルモンの変化が招く神経化学的な変化に対する感受性が原因のようです。ホルモンは脳機能全般を整えるだけでなく、神経伝達物質を調整するうえでも重要な働きを果たしています。
〈エストロゲン・プロゲステロンなどの女性ホルモンと脳機能〉
1.大脳辺縁系においてセロトニンやドーパミンの受容体の発現を促し、結果的にそれらの神経伝達物質の効果を強めています。また、エストロゲンが脳由来神経栄養因子(BDNF)の生産を促していることも確認されています。この物質はセロトニンの生産も促します。
ホルモンの変動と脳機能の複雑な相互作用はについては、まだ解明されていないことが多くありますが、このような関りは、ますます重視されてきています。
2.両ホルモンともに数多くのホルモン誘導体に変換されますが、その中で神経科学者が注目している二つの重要な物質があります。①興奮性のグルタミン酸 ②抑制性のガンマアミノ酪酸(GABA)の調整に関りを持つということです。この二つは月経前の一時期、相互に関連しあいます。これらのバランスが乱れると、情動をつかさどる回路のニューロンに過剰な興奮をもたらします。これらのアンバランスが、気分の変化や不安、攻撃性を招くとも考えられます。
ある調査によると、PMSに悩まされる女性はGABAが足りないということが明らかになりました。脳神経細胞の過度な活動を抑えるのがこの物質の役目の一つです。実は、運動はこのバランス回復に幅広い影響を及ぼします。そして、自律神経系を介してストレスに対応するHPA軸の機能も調整し、ストレスへの対処能力を増強させます。
〈2004年に行われた、月経前不快気分障害(PMDD)を対象にした研究では〉
PMDDの症状がある女性と、ない女性の神経伝達物質の活動をPETを用いて比較すると、PMDDを持つ女性の脳はトリプトファン(セロトニンの前駆物質)を前頭前野にうまく取り込むことができず、そのせいでセロトニンの生産が抑えられていることが分かりました。
※PMSなどは、1種類の神経伝達物質だけが関るドラマとして片づけることはできませんが、ホルモンは、いくつもの段階を経て脳内の信号に繋がり、それがいろいろな感情や行動として表現されます。そこで接続がうまくいかないと、神経の信号は別の方向に向かいます。脳の神経細胞は1000億個あると言われ、それらが1000とも10万とも、それ以上とも言われる繋がりを持っていますので、症状が人によって違うの理由の一つとして説明できます。
〈女性ホルモンとは関係ありませんが・・・〉
-征矢英昭 筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授の研究結果-
「人間の場合、認知機能をつかさどる海馬(記憶の貯蔵庫)は、生涯にわたり再生することができます。筋肉が運動によって太くなるように、海馬の脳神経も運動により発達し、脳の神経そのものが増えるのです」と先生の言葉です。
海馬を刺激する時は軽い運動でも十分だそうです。「心拍数でいうと1分間で90~100くらいの運動でも効果があります。ランニングよりスローペース、速く歩く程度の速さのジョギングを1日10分でかまいません。2週間続ければ脳神経が増え、6週間で認知機能自体が向上することが分かりました」ということです。
また、先生はランニングやエアロビクスなど中等度運動(心拍数110~130)では、前頭前野にある情報の分析、判断、集中力に関係している46野が活性化するとも言われています。それ以上の高強度の運動は、視床下部に影響を及ぼすということで、運動が過度になったり、無理をすると、逆に負のストレスが体にかかるということでしょう。
セロトニン
セロトニンは神経伝達物質の一つです。このセロトニンの機能を発揮する神経系は中脳という部分から始まり、脳全体をカバーしています。特に、感情をコントロールする扁桃核、上記の視床下部、高度な脳機能を持つ大脳皮質に集中しています。セロトニンはそのような場所に働きかけ、それらの神経活動を調整し、気分や感情の過剰な抑うつがないように働いています。いわば”脳内警備隊”みたいな物質ですかね。セロトニンが不足すると神経伝達がうまくいかず、うつ状態などの症状を引き起こす原因の一つとされています。
ノルアドレナリンやドーパミン、その他の神経伝達物質とともに、緻密な脳機能の調整に働いています。
歩行、咀嚼運動などリズムある動きや、グルーミングなどで機能が亢進します。
トリプトファン
体に必ず必要なアミノ酸(必須アミノ酸)の一つです。脳までの経路は、「いただきま~す」とご飯を食べる☞ 胃で消化され、小腸で吸収される☞ 小腸の細胞でタンパク質からアミノ酸(トリプトファン)に変換される☞ 腸内細菌、酵素の働きでセロトニン前駆物質となる☞ (直接セロトニンでは血液脳関門という関所を越えることができない)☞ 脳の神経細胞(延髄の縫線核)に至る☞ ここで酵素の力を借りセロトニンとなる。 これが経路です。
また、このセロトニンは、脳の真ん中にある松果体という部分でメラトニンという物質に変換されます。この物質の大きな作用は、”健やかな睡眠”を提供することです。
この物質は、全細胞で、脳で、腸で、肝臓で、腸内細菌やマスト細胞で、と様々な経路で、複雑な代謝を行い、体の各所で使われます。ですから、体の中に欠乏するとたいへんです。
トリプトファンを含む食品
魚、鶏肉、豆、種子、ナッツ、豆乳、乳製品、バナナ、白米、そば、マンゴー、ごま、
チョコレート、卵、ツナ、ハチミツ など。
不妊症に限らず、多くの病気が日常の生活習慣を整えることで、改善に向かいます。と、断言してもいいくらいです。病気によって、中には重症な人も存在しますので、全ての人とは言いませんが、多くの人は、生活習慣の改善こそ、現状を打破する最強アイテムと言えるのだと思います。
さて、不妊症でお悩みのあなた 健康になりたいあなた 明日から少しでも運動してみませんか
そして、運動することで、鍼灸治療の効果も高まるのではないかとも思っています。自分で積極的に「良くなろう~」とする心こそ大事なんです。
付 録
オキシトシンを増やそう
オキシトシンは、脳では神経伝達物質として、末梢では、子宮収縮や乳汁分泌促進などのホルモンとして働きます。神経伝達物質つながりでご紹介
その他の機能としては、胃腸働きを調整したり、炎症を抑える作用も報告があります。
この物質は、人との繋がりを感じた時 恋愛感情を抱いた時 セックスをしたとき、などに分泌が促進され、「幸せ物質」 「愛情物質」とも言われています。
オキシトシンを体内で増やして幸せになるには
①親切をしましょう ②感動しましょう ③感情を表に出しましょう
④マッサージを受けましょう ⑤愛する人と精神的に支え合う、スキンシップをとりましょう
⑤ハグをしましょう ⑥ペットをなでましょう
あなたも「幸せ物質」であるオキシトシンを増やしてみませんか