金沢も気温が高くなったり、低くなったり、桜が咲き乱れる季節ですが、桜もビックリの天気模様。太陽の活動も少し低下しているので、そんなせいもあるのでしょうか
本日のお題、「鍼灸院」と「医療をはじめとした他職種連携」を考えてみるということで、私の考えを書いていきたいと思います。
とくべつな深遠な思いや知識ではありませんが、私が実践をしていることを中心に進めていきたいと思います。
大きく三つにまとめてみました。
鍼灸院と医療や地域、介護や福祉関係者との連携に何が必要なのかと考えると、
①お互いの顔が見える関係づくり
②情報交換ができ、信頼と信用が構築された関係づくり
③適材適所へ振り分ける能力&治す技術の追求
このようなことが大切なのではないかと思い行動しています。
先ほども述べましたが、今回は、自分の臨床や医療、地域との関係づくりという観点からお話していきたいと思います。
①お互いの顔が見える関係づくり
これに関してましては、例えば、身体に症状が出現しました、「では、初めに鍼灸院へ行こう!」などということはあまりないのが現状です。ご紹介での来院は別にしてです。
今は何かを調べる場合は、パソコンかスマホで調べるのが常です。そこで治療院のHPは重要な情報源になるかと思います。HPを持って、頻繁に更新することでネット検索されやすくなります。そして何より、どんな鍼灸師で、どんな考えで、どんな治療を行っているのかが分かります。HPをどう作るかも大切なのですが、今回は書きません。長くなりますから。
鍼灸をチョイスされた時に、利用される患者さんが一歩を踏み出すきっかけとしてHPは大切だと思います。
中にはショーバイ、ショーバイな治療院のHPもありますので、患者さんとしては、実績、効果も大事ですが、どんな学術団体や業団体に所属しているかということを判断材料の一つとしていただくといいと思います。その際は、その団体のHPなども参考にして欲しいと思います。
現在、これから訪れる、超高齢・人口減少社会に向けての政策として「地域包括ケアシステム」が推進されています。認知症ケア、介護予防など、高齢者を医療や介護関係者、地域で支えていこうという仕組みづくりです。
そして、そのような体制にむけて地域で動きはじめています。
私はあまり、町内会活動や公民館活動には出ていませんので、さらに地域というキーワードがこれから大切だなと感じます。ですから地域包括支援センターや公民館、さらにそれを主幹する地方自治体のセミナーや研修にはできるだけ参加するようにして、名刺交換などさせていただき、顔と鍼灸を知っていただくよう心がけています。
現段階で、地域包括ケアシステムの中で動いていないことは遅いのですが、今後、より地域の皆様が鍼灸マッサージで健康を保持増進できるように動いていきたいと思います。
また、できるだけ医師や他医療者の集まる研修会や勉強会、講演会に参加するようにしています。鍼灸やマッサージ師だけの勉強も大切ですが、医療や福祉にはマクロに共通した価値観や身体の診かたが在り、連携していくためには、一人の患者さんを共通言語で、共通の認識で対応することが必須となります。そんな勉強や関係づくりも大切なので実行しています。
開業したての頃、ある患者さんに、「じっと待っていても患者さん来んよ。いろんなところに顔出していかないと」と助言をいただいたことを思い出します。それを「今」実践している形でしょうか。
人間、素直さが大切ですね。
私は星稜高校野球部のトレーナー活動や少年野球なども時間があれば観に行ってますが、それも治療院だけでなく、グランドで選手と顔を合わせ、会話をすることで、そこで築ける信頼や気づきもあります。選手だけでなく、監督やコーチ、保護者の皆様とも交流ができます。
経営者の集まり等に顔を出すことも大切かもしれませんが、少し趣が違いますので、機会があれば書いていきたいと思います
②情報交換ができ、信頼と信用が構築された関係づくり
これは他医療者、他職種の皆さんとの情報交換、情報伝達ということです。
そのことを、私たちが活用できる鍼灸マッサージの保険施術(療養費)に関連付けながら書いていきたいと思います。
鍼灸マッサージは保険で治療することができます。鍼灸であれば疼痛症状を主とした6疾患に、その他、それに相応する疼痛症状等に限り保険適用となります。マッサージの場合は、関節拘縮や筋麻痺がある場合に適応となります。
その保険を使用する場合には、主治の医師の同意が必要となります。同意書(診断書)の書類は、保険を取り扱っている治療院に置いてあります。それを医師に書いてもらうと保険が使えます。
石川県鍼灸師会、石川県鍼灸マッサージ師会では(他県は他県の施術者にお聞きください)、鍼灸マッサージの保険施術のための同意書(診断書)を書いてもらう際に、依頼書を書き、また、3ヶ月経過して、再度、鍼灸マッサージ保険施術を継続したい場合(再同意)には、報告書などを添付して、医師に患者の治療経過、状態を報告させていただいております。
当然、鍼灸不適応疾患の場合は、適切な医療機関へ紹介状や、鍼灸師は診断はできませんので、患者情報提供書などを書くこともあります。これは③にも繋がることなのですが、患者さんの生活を考えた場合、必要なことです。
私も開業して19年を迎えようとしておりますが、地道にそのような形で依頼書や報告書等を書いてきました。そして、患者さんは痛みだけで通院しているわけではなく、その他の内科的愁訴、生活習慣病や精神疾患、自己免疫疾患などの改善のための鍼灸治療に通院している方もおります。保険施術と併用して自費治療されている方もいます。
保険施術の腰痛なら腰痛以外の部分は、保険が適応にならないわけです。
当院では、同意書(診断書)を発行していただくのは、患者さんの主治医にお願いしてもらってます。残念ながら、診断書を発行してもらうためだけの医師の紹介はしておりません。ということは主治医はその患者さんが持っている病気の主治医ですから、患者の持病も診ているわけです。
そのような場合は、鍼灸適応であれば、その持病に対する治療も行います。その際、治療方針、治療経過、今後の治療方針や展望などの報告書を、診断書の報告書とは別に書いて主治医にお渡しするようにしております。
そんな中、先日、新患の患者さんでしたが、シビレで病院各科を回り検査をしましたが異常が見つかず、治療をしたが良くならなかった患者さん、また、その方は不妊症で妊活も行っているということで、総合病院の医師より当院にご紹介がありました。
そして、「この症状(しびれ)は鍼灸治療でやってみてください」ということで、鍼灸保険施術の同意書(診断書)も一緒に書いていただいてのご来院でした。
先ほども申し上げましたように開業して19年、初めてのケースでした。
ということで、感動しました。 と同時に、身が引き締まる思いもあります。
このような場合は、当たり前ですが、お礼状とともに来院報告書を紹介していただいた医師に送付いたします。
師匠にいつも言われていることは、医療との連携、医師との患者共有ということで、「医師から信頼され、患者を紹介されるようにならないといかん」ということでしたが、そのあたりは一歩あゆみ始めたかなと感じております。まだまだですが・・・
医療ではなくても、どんな場合でも、今後、介護予防を行っていく場合にしても、評価や判断、施術など他医療者や関係者との情報交換をスムーズにできることが必要だと感じます。
③適材適所へ振り分ける能力&治す技術の追求
一人の患者さんがどういう状況なのか判断する能力です。鑑別診断です。鍼灸院には痛みの患者さんが多く来院します。良くなるものもあれば、良くならないものもあります。中には病歴を聴取する中で「これは鍼灸治療の適応外」という方もたまにおられます。治療経過の中で判断を迫られる場合もあります。
そんな時に、患者の状態をいかに早く見抜き、専門医療機関へ送ることができるかということが大切になります。私が所属する石川県鍼灸マッサージ師会でも、そのことは重要視して、昨年ですが、病鍼連携に力を入れている神奈川県の長谷川尚哉先生をお呼びして多岐にわたり研修を行いました。
患者さんを抱え込まず、現段階の患者さんの身体の状態に適切な医療機関はどこか、それを判断する力を養うことが大切です。
また、自分の力、すなわち診察(問診、体表所見や東洋医学的所見から判断する能力)と治療効果も含めた診療技術が、自分でどこまでできるのかを把握しておくことが大切だと思います。
これはスポーツ障害の治療などでも言えるのですが、いつもなら効果が出ている症状がなかなか効果が出ない場合、あれこれ治療方法を変えてみることもいいですが、何か身体の中で不可逆的な事象が起きていることにも思いを馳せることが大事だという経験をさせていただきました。
そして、上記のような判断能力を養うことは大切ですが、何より患者さんの症状を良くしたい、それにはどうすれば良いかなど、治す、治癒に導く技術を修得し、磨きをかけることはもちろん最重要であり、必要不可欠な点です。
それには勉強です。向上心を持って治す方法、考え方を学ぶことです。
毎日の臨床が勉強であり、そこから派生する分からない部分は、研修会や講習会、セミナーへ参加し足を運び、鍼灸学会や専門の学会に所属して新しい情報を得ることが大切となります。
私は、診療する時は全力投球しますが、ほんとうに自分の技術や知識については足らない所がたくさんあると思っており、実際にそうなので、できるだけ学会や研修会へ参加するようにしています。
自己投資のないところに進歩や成長はないと思っています。
以上のような三つの考えを柱に、どう地域資源として鍼灸マッサージが活用されるであろうかということを模索し、行動しています。
私たち鍼灸院、鍼灸マッサージ師が、地域の皆様や、医療・介護関係者等と連携していくためには、何はともあれ「一歩踏み出す勇気」が必要です。
そして、内を磨き、外で必要とされ、地域資源、地域財産として活用される、そんな仕事、人間になるように常に進化、発展していかなければいけないと思います。
何やら難しいことも書きましたが、私の実践している事と思いを書かせていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます
二葉鍼灸療院 田中良和