二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

精子の未来を考える(妊活と鍼灸)

2022年12月29日 | 不妊症

 精子の未来を考えるという何か壮大なテーマのようですが・・・

 そんな壮大なことは書いていません。

 そして妊活や鍼灸については、少ししか書いてありませんのであしからず。

 

 最近公開(2022.11.15.)されたある論文を読んでいて私が感じたことを書かせていただきます。

 1981年~2013年までの研究のメタ回帰分析で得られた精子濃度(SC)・総精子数(TSC)の研究データは、北米、ヨーロッパ、オーストラリアの人たちが対象のデータでした。今回は、PubMed、Medline、Embase(2020年データベース)などの文献検索をもとに2014年~2019年までのデータも検索し、1973年~2018年のデータを再度、SC、TSCについて解析を行った論文です。

『精子数の20世紀と21世紀の経時的変化』

 6大陸(北米・中南米・アジア・アフリカ・ヨーロッパ・オーストラリア)の53カ国の研究が対象となり、2936件のヒットの中から288件がピックアップされ解析されました。

 

  集団レベルで、精子濃度(SC)、総精子数(TSC)の大幅な減少が報告

  1973年~2018年のSC減少率は41.5%(精液量に変化はなし)

  上記の平均SCは、1億400万/ml  4900万/mlに減少

   この減少は続いており、さらに急激になっていると推測

  SC年間減少率=1972年以降 1.16%  2000年以降 2.64%

   TSCも同様の傾きをみせている

  男性のリプロダクションヘルスを考えていく必要がある

 

 と簡単にいうとこのような内容が書かれた論文でした。

 精子の数は減少、機能も低下してきていることはテレビ番組や研修などで知ってはいましたが、全世界的に減少傾向というのが驚きでした。

 これは日本においても現実なのだと思います。

 「だからあなたは精子の数が少ない」というのはなく、世界的にこのような傾向にあるということを示しています。

 

 国連人口推計によると2022年11月に世界の人口は80億人を突破したとのことです。

 世界では、中国が約14億2600万人、インドが約14億1600万人と人口において他国を圧倒し、2030年にはインドの人口が15億人となり世界第1位となると推測されています。

 2064年には、約97億人が地球上の住人となり、ここが人口のピークになるのではないかと予測されています。

 日本の現在の人口は、約1億2540万人ですが、内閣府の予測によると2050年の日本の人口は約9700万人と1億人を下回る予測ということです。

 

 世界の人口を考えると、日本の人口は増加する方が良いのか、減少する方が良いのか考えるところではあります。

 そこの政治や政策的な話はおいておきます。

 

 現在、生殖医療学会などの発表をみていても男性不妊の演題が多くなっています。

 不妊の原因の約半分は男性側にあるとの推計になっていますから当然と言えばそうかもしれません。

 不妊治療が発展してくれば、そのような状況になるのは当たり前ですし、上記の論文のようなことがあれば妊娠率や出産率を上げていくためには、男性部分の改善をすすめていく必要があるのでしょう。

 

 さて、話は女性になりますが、医療の分野のみならず、経済の分野と結びついて現在、世界で、日本では少し遅れてフェムテック(femtech)というものが注目されていることをご存じでしょうか

 これは、女性(female)✖ 科学技術(technology)を掛け合わせて造語です。

 その言葉の意味は、生理から妊娠、出産、更年期、メンタルヘルスにいたるまで、女性特有の健康課題に対してテクノロジーを用いて解決に導くサービスや製品を指しています。

 このような流れが国をあげて推進する流れになっています。フェムテック振興議員連盟というものが2021年に結成されているくらいです(野田聖子 衆議院議員が会長)。

 この分野、只今急速に進んでいます。

 これは大事なことですし、当院でも妊娠しやすいカラダづくりのための鍼灸を提供している関係上、推進していただきたいことです。

 フェムテックについては、今度、時間のある時に記事を書きたいと思います。

 

 何が言いたいかと申しますと、上記の記事などを考え合わせると女性のフェムテックがあるのであれば、男性のメルテック(男性の英語はmale)があってもいいのかなと・・・男性はあまり経済的なものと結びつかないのかもしれませんね。

 しかし、医療という観点からすると、妊活に励む男性はその点の考え方の変革が必要かもしれません。

 男性こそ、生活習慣改善や自身の体調管理に資本をかけて、より良い精子、より元気な精子、たくさんの精子たちをつくる必要があるのだと。

 女性に限らず男性も早期に結婚すること、それには今のままの経済や社会では絵に描いた餅にしか過ぎないかもしれません。

 そこには政治の力も必要になるのだと感じます。

 元気な精子は、自分(男性・夫)の遺伝情報を後世に繋ぐ重要な分身です。

 まずは自分ができる生活習慣の改善から行っていくことも大事な一歩だと思います。

 下記の記事も参考にしていただければ嬉しいです。

 

  妊活は夫婦の協同作業~精液とは、精子とは?!の巻

  妊活は夫婦の共同作業~精子の生育から放出までの巻

  妊活は夫婦の共同作業~鍼灸院臨床現場の巻

  生活習慣の改善で精液所見は改善されるのか?!

  妊娠するために必要なこと~その土台~

 

 当院では引き続き、妊娠しやすいカラダづくりのための鍼灸を提供していきます。

 奥様だけではなく、今後は旦那様の元気にも力を入れていきたいと考えています。

 鍼灸を行ったから精子所見が改善するというエビデンスはありませんが、精子は毎日作られるということは、それだけ生活習慣や男性の調子に左右されやすいことは大いに考えられます。

 その体調をメンテナンスし、来たるセックスの時、来たる不妊治療(検査・治療)の時、万全の体調を整え、少しでも元気な精子が増加すると、それは妊娠や受精、着床の確率が上がるというものです。

 

 女性の鍼灸施術の場合もそうですし、妊活のための鍼灸に限らず全ての鍼灸施術に言えることですが、鍼灸は魔法の治療法ではありません。

 体質を改善し、カラダの状況を変化させていくには、それなりの期間と鍼灸の回数が必要となります。

 

 女性や子どもたちが元気で輝く社会

 男性が自信を持ち、元気に活躍する社会

 

 そんな社会の実現のため鍼灸を活用できたらと2022年年末に考えております。

 何かご相談等がございましたら、些細なこと、小さなことでも結構ですので、下記HPにお立ち寄りいただき連絡をお待ちいたしております

 来年はきっと良い年になりますよ

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。  

 

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妊活と鍼灸~食事は妊活に限らず重要なこと~

2022年08月26日 | 不妊症

 盛夏もやや落ち着き、朝晩が少し涼しくなってきました

 気圧や気温の変化も激しくなり、体調の崩れやすい時期になってきます。そのような時は自律神経を調整することを得意としている鍼灸を試すのも一つの方法かと思います。

 

 さて、今回は妊活に大切な「食事」について少し書きたいと思います。

 基本的な考え方としては、血液検査等を行って、それに足らない、または補助する栄養素をサプリメントや薬で摂取するということは妊活にとって必要なことではあります。しかし体を養う、健康を保持・増進する、病気にならない体づくりを行うという観点から人全体を考えた時には、まずベースとなる毎日の「食事」を見つめ直すことが重要だと考えます。

 かと言って、食事に関しては「これをやったら完璧」「こうしなければいけない」というものはありません。

 それぞれの家庭環境や状況で、皆同じ食事がとれるものでもありません。

 しかし、人の身体は食物を栄養素として体をつくり、体の機能を運営していることは確かな事実です。

 食養生や医食同源という言葉もあるとおり、毎日の食生活、食習慣が体の不調や病気と繋がり、それらの症状を回復する手段として食は重要であることを先人はよく理解し書物等で残してきました。

 1年経過し、自分の誕生日を迎える頃の体のほとんどの細胞は新陳代謝を行い、細胞視点からみると、1年前の自分の体とは内側も外側も全く別人に変貌しています。それまで自分が食べたものによって1年後の自分の体がつくられるという事が理解できるかと思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、ある書物から妊活ということではありませんが、健康長寿食について書きます。

 健康長寿食=すべての体の統御システムが順調に働き寿命を迎える=妊活を含め、すべての健康な人生の基本 と考えます。

 

 山梨県棡原村(ゆずりはらむら)、現在は上野原市棡原となっていますが、健康長寿で病気もほとんどない、多産多乳であったこの村が、戦後を含めて急速な日本の経済成長にともない村の生活にも変化が及び、病気が増え短命化していきました。

 その村の記録や調査を通じて村の60年間の環境、特に食と寿命(死因)や疾病との関係を研究されたことが書かれた書籍『長寿村・短命化の教訓-医と食からみた棡原の六十年』(樹心社)より、この本の一部ですが、健康長寿、疾病予防、もちろん妊活のためには、どのような食を心がけていけばよいのかということの参考として考えていきたいと思います。

 

長寿食への提言(健康づくり)

①多穀・玄穀食の再確認

・棡原の食生活を一言で表現すると、”麦を中心とした五穀の活用

・五穀食;ビタミンB類(特にパンテトン酸、ビタミンB6)の摂取量が高まる(生活習慣病の予防)

・麦;βグルカンが多含(抗がん物質)、食物繊維の補給源

・白米中心であると低繊維食となるので副食などおかずを考える必要がある

・高度精白穀物は、繊維の少ないデンプン過多により、肥満、糖尿病、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症等)、胆石が増加傾向

・同様に、食物繊維が低下すると、腸の異常として、便秘、虫垂炎、憩室、横隔膜ヘルニア、静脈異常、がん、ポリープが増加傾向

・棡原の伝統的食生活の優位性の第一は、高繊維食であると考えられた

 

そ~いえば、私の母親の田舎(輪島)へいくと、白米に麦を混ぜたご飯が出てくるなと、これを読みながら思っていました。

 

②いも食分化の維持存続

・戦前、日本全国の山村に存在していた作物を調査すると、アワ、ヒエ、ソバ、大豆、小豆の5種類が圧倒的に多い

・これに里芋を加えた焼き畑農業に支えられていた

・棡原では、朝食の主食は里芋、間食にジャガイモが多く摂られていた
 副食として、煮物や味噌汁にも活用されていた

・いも類には食物繊維が多含

・いも類に多いペクチン、こんにゃくのマンナン、雑穀のグァガムはLDLーコレステロールを低下させ、HDLーコレステロールを上昇させる作用がある
 動脈硬化の予防

・いも類は保水性が高く、解毒能力がある

       

棡原の女性は穀菜食でありながら、驚くほどの多産かつ母乳豊乳でした。

肉食が少ない食生活ですが、座産(座ってお産)で安産でした。

恐るべき多産で、9人~11人は軒並みで13人という場合もあり、母乳は98%の女性が多乳でした。

おっぱいが出すぎて困り、とめる薬はないかと聞かれたくらいでした。

この状態をつくりのは、穀菜食とりわけ、アワ、ヒエ、キビ、穂モロコシなどの雑穀です。

おそらくビタミンEの作用と推測。

戦前までの日本全国の農村地帯の真の姿ではなかったでしょうか。

       

 そ~いえば、私の母親も10人兄弟姉妹でした

 

③緑黄色野菜分化の維持存続

・棡原では、特産緑黄色野菜・冬菜は年間確保され、おひたしはもちろん味噌汁やほうとうに入れて多量摂取

・冬期でも冬菜で栄養素を補給

・緑黄色野菜は、ビタミンA、C、E、鉄分のよき供給源

・ビタミンAは、皮膚からの細菌感染防止、ヘパリンの生成が高まり脳梗塞予防

・ビタミンCは、抗酸化作用があり、抗腫瘍作用や疾病予防となる

・葉緑素には、抗がん作用があり、めざましい消炎作用がある

・葉緑タンパクは、穀類に不足しているリジンやメチオニンを多含(冬期の良質タンパク源のよき供給源)

 野菜って言うけど、最近の野菜は栄養が少ないですよね~という観点は横においておきます。

 言えることは、できれば自分が住んでいる地域の作物が一番いいということです(地産地消)。エネルギー的にも。

 

ちなみに緑黄色野菜とは・・・

 「原則として可食部100g当たりカロテン含量が600µg(マイクログラム)以上の野菜」(厚労省基準)

●あさつき ●いんげん ●オクラ ●かぼちゃ ●クレソン ●ケール ●小松菜 ●サラダ菜 ●しそ ●春菊 ●セリ ●貝割れ大根 ●チンゲン菜 ●とうがらし ●トマト* ●ニラ ●にんじん ●バジル ●パセリ ●ピーマン* ●ブロッコリー ●ほうれん草 ●三つ葉 ●芽キャベツ ●モロヘイヤ ●わけぎ

 

④発酵食の再確認

・棡原では立派な味噌蔵があり、味噌や漬物が保存されており、「嫁入り用みそ」などを準備する風習がある
 味噌を生活の重要な糧として大切に扱われる

・味噌の製法は、フスマ麹と大豆が使用(フスマ;麦の外皮や胚芽の部分)

・フスマはビタミンの宝庫で、ビタミンB類、E(玄米の10倍)、マグネシウムが多含
 生活習慣病、老化防止の食物として利用

・ご存じの通り発酵食品は、腸内細菌のビフィズス菌などの善玉菌を優勢にし、ウエルシュ菌などの悪玉菌を劣勢にする

・棡原の80歳代以上の老人を調査すると善玉菌が優勢で若々しいことが判明(光岡足知らの調査)

・この原因は、これまで話をしてきた、麦を中心とした雑穀食、いも食、豆食、野菜食、そして発酵食にあると報告

 

⑤生涯栄養からみた良質タンパク質摂取

・棡原の伝統食に欠けているのは、良質タンパク質

・昭和二十年代の乳幼児死亡率をみると、良質タンパク質がより必要な乳幼児の死亡率が高かった
 発育期栄養における良質タンパク質の確保は必須

ータンパク質と不妊-

体の水分を除くと75%はタンパク質が占める
動物性タンパク質(獣肉、魚、卵など)・・・必須アミノ酸を含む完全タンパク質
植物性タンパク質(豆類、ナッツ類、種子、穀物など)・・・必須アミノ酸を含まれない不完全タンパク質
でも安心してほしい、植物性タンパク質の中の非必須アミノ酸は、米と豆類、玄米と豆腐などいくつかの食品を組み合わせることで必要なアミノ酸13種類を作り出すシステムがある
一日のタンパク質必要量:体重9㎏あたり7グラム 一食分は手のひら一杯分くらい

アメリカにおいて大規模に行われた「看護師健康調査」によると
 ・高タンパク質摂取グループは低タンパク質摂取グル-プに比べ排卵障害による不妊リスクが41%高い
  (牛肉、鶏肉など動物性タンパク質多く摂取するアメリカ人対象)
 ・動物性タンパク質を多く摂るグループは植物性のグループに比べ排卵障害による不妊リスクが39%高い
 ・毎日の食事の1回分を赤身の肉、鶏肉にすると不妊リスクが3分の1増加
 ・卵や魚を一日1回とっても排卵性不妊に影響はない
 ・大豆などの豆類、豆腐、ピーナッツなどのナッツ類を一日1食分摂取すると排卵不妊に対して予防効果あり

食品にはタンパク質だけではなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維など体に必要なものが含まれている
  サプリメントは抽出成分に過ぎない

妊活を行う人にとっては植物性タンパク質が望ましいが、肉を食べたからと言ってすぐ危険にさらされるわけではない
  肉食の習慣としてそれが長く続けば、それなりの影響がある可能性あり

排卵障害の不妊のある方は特に植物性タンパク質を習慣的に摂取することがのぞましい

考え方は柔軟に

『妊娠しやすい食生活』(日本経済新聞出版社より)

 

⑥伝統食との融合による新しい健康食

・①~⑤の伝統食に、一物全食(食物全部を食べる)、身土不二(地元の食材を食べる)

・加工食や肉食中心になった世の中の疾病状況や死亡状況を素直に受けとける

・成人病から生活習慣病となったのは成人病発症が若年化しているため

・伝統食中心の食生活で過ごす人たちに健康長寿が多いことも素直に受け止める

・伝統食と現代食(最先端栄養学)それぞれの長所を融合した健康食を考えよう

温泉旅館の朝食は美味しい

 以上、少し長くなりましたが(いつものことなのでお許しを~)、不妊や妊活というよりも健康長寿食について書かせていただきました。

 確かに良い卵胞、良い精子を育てる、また着床率を上げるにはということが妊活の目的ではありますが、やはり体を健康に保つには「毎日の食事」を再考し、全体的な体のバランスを調整することが根本的に肝心だと感じます。

 妊娠し、妊娠を維持し、出産し、そこから赤ちゃんを育てる(母乳や体力)ことが必要になってきます。先を考える逆にストレスになってしまうかもしれませんが、人の身体の仕組みから言うと、そこを考えて体や心をつくっていくのが、妊娠→出産の早道の一つかなとも思います。

 

 長々と書きましたが、天使ちゃんを待ち望むご夫婦の何かのお役に立てることができれな幸いです。

 冒頭にも書きましたが、これは一例でありますので、これが全てというわけではありません。しかし昔の日本の真実でもあります。

 何か一つでも実践していただければ嬉しく思いますし、妊活だけではなく、パパとママを選んで生まれてきて子どもと、少しでも長く人生を楽しむことができるように健康長寿になっていただければと願ってます

 

 最後まで、お読みいただきありがとうございます

 

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妊活と鍼灸 メンタルをととのえること、心の可能性

2022年04月23日 | 不妊症

 桜の季節から時はながれ、新緑がキレイな季節になってきました

 皆さま、体調の方はいかがでしょうか。気温差が10度以上ある日も多く、身体の調子が整えづらくなっているかもしれませんね

 

 さて、当院では妊娠しやすい身体作りをサポートするための鍼灸に力を入れております。

 婦人科で行う一般不妊治療にしても、専門クリニックで行う高度生殖医療の治療を受けても、すぐに妊娠して、順調に出産まで辿り着くご夫婦ばかりではありません。なかなか上手くいかないご夫婦の方が多いのかもしれません。

 不妊治療が長期になると、様々な感情や環境面あるいは経済面のストレスが蓄積し、心が前向きになれない、落ち込みからなかなか抜け出せない状況に追い込まれることも多々あります。そのストレスは百夫婦百様です。

 そんな時、その場から立ち上がらせ、積極的に、そして前向きになれるパワーは、元気な身体と、前向きな心です。特に誰でも心の中に秘めている神秘的な可能性というエネルギーが沸き立つことです。

 その心のパワーは、ご夫婦のお互いの思いやりや、心の視点を変えたり、リフレッシュすることで奥の方から引き寄せることができるのではないでしょうか。いえ、すぐそこにあるのかもしれません。

 そんな事例を「ちいさな 命のバトン」という本より抜粋してご紹介します


40歳の奥様、42歳のご主人様 不妊治療歴10年(人工授精8回、体外受精6回)のご夫婦の話

・奥様から何とか自然妊娠したいとの言葉

・問診票や治療歴から考えて、この言葉には心身への負担が大きいことが理由にあると考える医師

※著者である医師は、内科医としての診療の傍ら、不妊症カップルのカウンセリングを行い、治療が必要な場合は信頼ある専門クリニックをご紹介するという流れで診療を行っています。

医師「では、少し休んでから治療を再開しましょう。それでも年齢から考えると早めに体外受精することをお勧めします。しっかりとした技術の病院を紹介しますから」

婦人「もう体外受精はしません。そう決めました」

 どうしても子どもをあきらめることができないと書いてあるのになぜ?と思い、単刀直入に医師が質問。

医師「タイミング法を試し、お子さんができなかったら、それでよしということですか? 何をおいても妊娠したい、というお気持ちが書かれていますが・・・」

 婦人は、唇をかみしめ、目には涙をためています。医師はじっと待ち続けました。
 忙しい専門クリニックにはできない、じっと待ち続けることを実践され、心の底を吐き出して欲しいと思いました。

婦人「赤ちゃんが授かることは夫婦の夢であり希望でした。妊娠するまでどんなに辛いことがあっても二人で協力しようと決めていたのです。でも・・・」

医師「これまでずいぶんと治療費もかかったでしょう」

 うつむいた婦人の膝に涙が落ち、診療室にしばらく嗚咽が響いた後、婦人からこれまでの経緯が語られました。

・最初の医療機関で、人工授精、体外受精と言われるままにステップアップしていった。
・途中、義母の介護のため2~3年のブランクがあった。
・治療を再開しようと思ったところに不況がおそい、家計は生活するので精一杯になったこと。
・不妊治療費用が払えない状況となったこと。

婦人「時間も費用もかけてここまで頑張ったのです。本当は子どもがどうしても欲しくて、でも、どこかで終わりにしなければ・・・」

 その後、婦人は先生の不妊ルームに6ヶ月通院。
 月2回の診療と交わしたメールのやり取りで、しだいに婦人は心を開いてきました。

 ある日、次のような内容のメールが届きます。

・先生が信頼する医療機関を是非ご紹介ください。
・この6ヶ月間は、これまでの10年間と比較にならないほど充実した時間でした。
・こうでないとダメだ、と自分の気持ちが置き去りにされていました。
・先生との二人三脚の「不妊ルーム」での6ヶ月間で、自分がどうしたい、何をすべきかを知ることができました。
・自分の考えもハッキリ言えるようにもなりました。
・ラスト1回、自分の意志で紹介病院を訪れ、治療したい。
・もし妊娠しなくても、私は満足です。

 先生が不妊の医療期間をご紹介されてから半年近く経った頃、婦人が先生のクリニックを受診されました。

婦人「先生、今日は妊娠の報告にきました」

医師「それは良かったですね。体外受精がうまくいったのですか」

婦人「いいえ、先生。体外受精ではなく ”自家受精” です」

 高度生殖医療を最後と決め、紹介した医療機関に通院を開始し、体外受精に挑戦しようとした矢先、なんと自然妊娠したということです。

 環境を変えたり、不妊治療でいっぱいになっている頭と心を少し柔らかくすることで、思いがけない効果があるものです。

婦人「最後の不妊治療だと、体外受精を決意したわけですが、あるとき夫が久しぶりに旅行にでも行こうかと言い出しました。それで前から行きたかった温泉に主人と言ったのです。そしたら、その時に妊娠したようなのです」

・旅先で子どもがいなくてもいいと、夫婦で改めて誓い合った。
・それまでがんじがらめになっていた心が、リタイヤの決意で解放されたのかもしれない。

 妊娠はやはり神秘的なのです。そして、どうやら「子宝温泉」というのは、自分たちの気持ちの中にあるようです、と先生は話されています。


 素晴らしいミラクルな物語ですよね。

 いつも平常心ではいることは出来ないでしょうけど、心をととのえて、リラックス、そしてご夫婦で共通認識といいますか、同じ価値観で目標に向き合うと、このようなことも起こりうるのかなと思います。

 でもでも、不妊治療や妊活を行う際、1年以上夫婦生活があるのに妊娠しないご夫婦の場合は、クリニックで不妊に関する検査を早期に行うことは大前提です。そして、それが一番の近道であることは紛れもない事実です。

 

 ストレス過多状態。それは自律神経の一つ、交感神経が過緊張している状態です。

 鍼灸治療は自律神経に作用して、過剰になった神経機能を正常に近づけようと身体を調整します。

 また、脳内で副腎皮質刺激ホルモンやエンケファリン、βエンドルフィン、ダイノルフィン、セロトニンやオキシトシンの分泌に影響することが明らかとなっています。これら神経伝達物質の変化は、不安や抑うつなどの感情と関連が深い中枢神経系の異常状態において、有益な効果をもたらす可能性があると考えられています。

 

 鍼灸で心と身体を整えることも、妊活における一つの方法として提案することができます。

 それにしても、「子宝温泉」というのは、自分たちの気持ちの中にあるようです って、イイ言葉だな~。

 自分のメンタルと向き合いととのえることは、自分の心の深くから湧き上がる未知の可能性を引き出すことなのだと感じます。

 

 最後まで、お読みいただき、ありがとうございます

 

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不妊症・不育症ピアサポーター等の養成研修 修了

2022年04月04日 | 不妊症

 風は肌寒いですが、一気に気温があがりピンク色の桜の花が勢いよく咲き始めています

 皆さま、お身体や心の調子はいかがでしょうか。

 

 昨年の2021年、(公社)日本助産師会が、厚生労働省委託事業として開催されました、不妊症・不育症ピアサポーター等の養成研修医療従事者プログラムに参加しました。

 事業の目的は次の通りです(抜粋)。


不妊症・不育症支援の課題と本事業の目的

 様々な悩みや不安を抱え、複雑な精神心理状態にある不妊症・不育症患者が、気軽に相談できるピアサポーターを育成するため、相談・支援に当たって必要となる基礎知識やスキルを習得するための研修を開催します。併せて、看護師などの医療従事者に対しても、心理面でのサポートを含む、より医学的・専門的な知識による支援を実施できるよう研修を実施します。
 さらに、この事業を広く社会に周知することで、国民への不妊症や不育症に関する正しい知識の広報啓発と理解をはかります。


 当院では、妊娠しやすい心身をつくるための鍼灸に力を入れております。

 では不妊に関わる多くの皆様との連絡や連携をもっているかというと、その点は全くと言っていいほどありませんでした。

 不妊症や不育症でクリニックで治療されている方は、誰に聞いたら良いのか迷うような悩みもたくさん持っています。私も知ってはいましたが、助産師さんが詰めている石川県不妊相談センターという場所があるのですが、その機能さえ把握していませんでした。

 私たちは鍼灸治療を追究してより効果的な治療を目指すことは当然ではあるのですが、すべてのご夫婦にお子さまが授かることは難しいです。

 一組のご夫婦で様々な悩みや状況があります。

 その時々に応じて、どこへ相談したら良いのか、一番適した、よりベターな問題や状況を解決できる場所へ導いてあげるのも大切なことだと思っています。そんな時、重要なのは横の繋がりや連携をどれだけ構築しているかということなのだと思うのです。

 鍼灸も不妊や不育をサポートする一つの手段ではあるけれど全てではありません。

 これはスポーツ選手を扱うスポーツトレーナーやスポーツ医療の現場でも言えることです。

 そんな時、この情報を助産師さんよりお聞きし、すぐに申し込みました。

 

 研修は、講義、シンポジウム、グループワークを併せて495分という内容です。

 コロナ渦だからオンラインで上手く開催され、多くの皆さまが学ぶことができた研修だと思います。


不妊症・不育症に関する医学的知識および一般的な治療の流れと生殖医療分野における最新の知見(45分)

  1. 不妊症・不育症の病態、診断(検査)、治療の原則について
  2. 最新の生殖医療について
  3. 生殖補助医療の変遷と社会のニーズ、リスクマネジメントについて

不妊症・不育症に関する関連法規や支援体制について(15分)

  1. 不妊治療等に関する関連法規や政策方針
  2. 不妊治療等に関する国の施策と今後の方針

不妊症・不育症患者特有の心理・社会的支援(45分)

  1. 患者が抱える特有の心理的・社会的問題カウンセリング(カウンセリング)
  2. 支援に活用できる社会資源と多職種連携、ピアサポート

親になることへの支援、グリーフケア(45分)

  1. 不妊治療後の妊娠育児支援
  2. 不妊治療後の妊娠における周産期喪失の特徴と支援
  3. 不妊治療を終結し、子を持たない選択をしたカップルへの支援

里親・養子縁組制度(45分)

  1. 里親・養子縁組制度の概要
  2. 日本における里親・養子縁組の現状について

不妊症・不育症患者に対する支援の実際(前1・2;90分、後1・2;120分)

  1. 支援のあり方について
  2. 様々な現場での取り組みの紹介
  1. 不妊相談場面のロールプレイングと意見交換
  2. 不妊治療後の妊娠において周産期喪失を体験する当事者との関わりのロールプレイングと意見交換

具体的な支援プログラムの検討

  1. 現在の課題の共有と支援プログラム作成テーマの抽出
  2. 支援プログラム案の作成

 多くの学ぶべき点がありました。

 私たちは鍼灸治療で、お子さまとの出逢いまでを全力でサポートしますが、様々な観点から治療を終了しなければならない場合があります。

 また、流産や死産、あるいは、胎児が障害を持っている可能性が高いことが判明する場合もあります。

 あらゆるケースがあるわけです。

 講義の中でのグリーフケアはその対応に関して知っておくべき知識でもありますし、特別養子縁組や里親制度の考え方やその違いなども、恥ずかしながら初めて深く知った部分が多くありました。

 実は、当院に通院されていた患者さんでも3組ほど特別養子縁組でお子さまと出逢った方もおいででした。

 自分の不妊症に対する鍼灸臨床を患者さんの視点で、幅広くできたことは有り難い研修でした。

 修了証いただきました~

絵は画像に自分で付けたしました

 

 もう1点、この研修終了後、医療従事者だけでなく一般参加の皆様との交流を実施するためのZOOM交流会がありました。それにも参加させていただきましたが、多くの皆さまの立場での声が聴けて、この繋がりがうまく機能してピアサポーターとして不妊症、不育症で悩む方が少しでも少なくなれば嬉しいなと思いました。

 

 この研修に参加したこともあり、7月には石川県の助産師さんが主催する集まりで、鍼灸師の立場で「不妊症のご夫婦への対応」についてお話させていただくことになりました。

 地域で上手く繋がっていければいいなと願います。

 主催いただいた日本助産師会の皆さまに感謝でございます

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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不妊治療の保険適用が2022年4月から開始!HPで簡単に整理してみました!

2022年03月30日 | 不妊症

 2022年3月もそろそろ終わりを告げようとしています

 花粉症で目が痒い、鼻水が出るなどの症状を持っておられる方はたいへんな時期かもしれません。

 また、朝夜の温度差も10℃以上あり、体調管理が難しい日が続いています。

 しかし、しかし、各地で桜の開花、満開の報があり、この時期はやはりワクワクする季節です

 

 さて、表題にもあります通り、2022年4月より待望の不妊治療の保険適用が始まります。不妊治療をされているご夫婦には朗報であると思います。かと言って、保険診療は始まったばかりですから、制度のメリットやデメリットも今後、明確になってくるのかと思います。

 

 ただ、スタートしたということは、非常に嬉しいことであると感じます。

 当院のホームページで、そのあたりを簡単ではありますが整理してみました。

 文章の中にも書いてありますが、詳細については当院で説明することはできませんので、通院されている不妊クリニック、また、これから治療を開始の場合は、受診希望しているクリニックや病院にお聞きいただければと思います。

 どうぞ、ご参考に当院ホームページへお立ち寄りください

 

二葉鍼灸療院(金沢)ホームページ(コラム) 

 

 クリニックの利用者対応もたいへんかと思います。

 ギリギリまで保険対象や先進医療について協議されていたようです。

 先進医療(保険診療と組み合わせて診療できる保険外の項目)では、まだ審議中のものもあります。今後、この部分については追加される可能性も示唆されています。

 

 保険診療と言っても、年齢や体外受精に制限はありますので、事前に確認しておくと良いでしょうね。
 自費の生殖補助医療(ART)となると診療代金がかなり大きいものとなりますので、簡単に不妊診療を受けに行けないご夫婦もあったでしょう。

 また、今後、国ではこれまでの特定不妊治療への助成金はなくなっていく流れです。地方自治体についてはどのように判断されるのかその自治体の裁量にかかっているのだと思います。

 

 不妊治療において大きな変化が起きる2022年4月となります。

 不妊に悩むご夫婦が、心も体も金銭的にも、少しでも気持ち良く、重荷を取り去って、一日も早く天使ちゃんと巡り逢えますように、私も全力でサポートしていきます

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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妊活と鍼灸~ストレスの軽減を考える②~

2022年01月25日 | 不妊症

 世界で、日本で、オミちゃんがお友達を増やしております

 当院の所在地、石川県でも1月25日時点で新たに354人のお友達が増えました。

 そろそろ落ち着きをみせてもいいのではないかな~と思いながら、この記事を書いております。

 

 パート①では、不妊治療の最近のトピックと不妊女性が抱えるストレスについて書かせていただきました。

 

 妊活と鍼灸~ストレスの軽減を考える①~

 

 妊活に頑張るご夫婦のために妊娠しやすい身体づくりのための鍼灸を行っておりますが、特に女性に多くの面で過剰なストレスがかかります。

 当院に訪れるご夫婦の多くは妊活を始めて年数が経過していることが多く、ご来院時点でかなりのストレスが蓄積されているケースがあります。

 過剰なストレスは妊娠ばかりではなく、様々な疾患の要因となります。そのストレスが少しでも軽減されることは、より循環がよく元気で健康な身体や心の状態にあることは疑う余地がありません。

 

 今回は、その不妊女性のストレスに対して鍼灸治療は役に立つのかをみていきたいと思います。

 その前に、皆さま「エビデンス(科学的根拠)」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、それについて最初に簡単に説明させていただきますね。

 

エビデンス(科学的根拠)

エビデンスの意味・・・「根拠」「裏付け」「証拠」「形跡」などの意味です。

 医療・医学で使用される場合のエビデンス・・・例えば、ある病気があるとして、そこには「効果がある」という多くの様々な治療方法があります。その病気の治療について「本当に効果があるのか」「どれくらい安全なのか」「その効果はどれくらいあるのか」ということの調査研究のことをいいます。患者さんが、より安全でより効果的な治療方法を選択できるための指針として利用される調査研究のことです。

エビデンスに基づいた医療(Evidence Baced Medicine:EBM)・・・現在、日本も含め世界の医療はこの指針をベースに進んでいます。そしてEBMを実践するうえでエビデンスというものが必要になります。例えば、①検査では異常がなかった慢性腰痛の患者さんがいます。②そこに鍼灸を行うと、③湿布と鎮痛薬の服用より効果があったとします。⑤世界中の研究や報告(論文)の①~③に近い条件のエビデンスを調査します。⑥調査したエビデンスの効果のグレードや質について検討します。⑦慢性腰痛に対して行った鍼灸を振り返り評価します。

 と言ったように、集積された研究や調査を検証され、この病気や患者さんに真に有効な治療方法かどうかの方針が決定されます。

 

 難しい話になりましたが、鍼灸治療は皮膚に触れる治療から深く骨膜に至るまで刺す、あるいは数本の鍼だけ使用する場合やハリネズミのようにたくさん鍼を刺す方法など多種多様です。

 ですが現代の医療・医学の評価基準や、患者さんのことを思えば鍼灸もエビデンスレベルをあげていくことは、鍼灸医療や鍼灸医学にとって、今後の発展という面においても必要なことなのです。

 EBMを考えると、私が修行・研修させていただいた、東洋医学研究所®所長  黒野保三先生やその弟子の皆さんが(私もほんの少し入ってますが)、膨大な鍼の臨床実践や臨床研究の集積、臨床を基に、名古屋市立大学や名古屋大学の研究員として推し進めて来られた鍼の基礎研究など「鍼灸の科学化」や鍼灸医学に対する思想や姿勢が、まさにそれであると改めて思います。このお話はまた別の機会に・・・

 

 それでは本題の、不妊女性の精神的ストレスと鍼灸についてみていきます

 

不妊女性の精神的ストレスに対する鍼は有効か?!

 明治国際医療大学 鍼灸学部 臨床鍼灸学講座の田口玲奈先生の研究で、女性心身医学雑誌(Vol.20.No.3.2017年3月)に投稿された論文を参考にみていきます。

鍼治療は女性不妊患者の精神的ストレスを緩和させるか、ストレスの感情面表出である扶南・抑うつ・気分変調などを指標に検討。

1年7ヶ月の期間に体外受精ー胚移植(IVF-ET)、顕微授精(ICSI)を行った32名を対象(31歳~47歳)。

評価 
 ①不安・抑うつ・気分変調の評価:Profile of Mood State(POMS)日本語版
 ②不安の評価:State-trait inventory(STAI)
 ③妊娠率および流産率

 鍼治療方法
 期間:3ヶ月間  頻度:週2回
 使用経穴:(目的)精神安定・ストレス緩和・補気血・血流増加
  百会、合谷、内関、帰来、足三里、三陰交、地機、血海、太衝、中髎
 使用鍼:直径0.16mm、長さ30mm(セイリン社製ステンレス鍼)
     0.30mm、長さ60mm(同上)・・・中髎のみ;仙骨骨膜面に水平に頭に向かって刺鍼
 併用治療:低反応レベルレーザーを鍼治療前後に両側星状神経節近傍に約3分間照射

 結果と考察
 平均年齢:約39歳、平均不妊治療期間:約33ヶ月、施行回数:IVF-ET  約2回 ICSI 約7回
 不妊原因:男性因子4名、卵巣因子11名、卵管因子2名、子宮内膜症6名、原因不明12名(重複あり)

 ①POMSの変化:「緊張・不安」「抑うつ・落ち込み」「怒り・敵意」「混乱」「総合的状態得点 TMD」は鍼灸後に有意に低下。
         「活気」「疲労」の項目に有意差はなし。

 ②STAIの変化:「状態不安」「特性不安」ともに鍼灸後に有意に低下。

 ③妊娠率・流産率:生化学的妊娠率9.4%(3例)、流産率0%

鍼治療は不妊患者が抱える緊張や不安、抑うつ、落ち込み、怒りや敵意、混乱するなど精神状態を緩和させる効果があることが明らかとなる。

米国では不妊女性のストレスと不安レベルが高く、不安と落ち込みの頻度も非不妊者と比べて高いことが報告。

日本でも不妊女性の不安・抑うつ測定尺度とPOMSにより、不妊女性の精神的ストレスが強いと報告。

POMSでの一般健康女性の平均点数と比較すると、抑うつ・落ち込みの数値が高値だが、その他は一般女性と一致。日常生活での精神面は比較的保たれてる状態と考えられた。

STAIでの一般健康女性の平均数値と点数と比較すると、鍼治療前の状態不安得点が高値だったことから、測定時点での不安は強い状態にあったと考える。

ARTの成績とストレスの関連については、負の相関があるという報告が多い。

ストレスの強さやストレスに対する脆弱性はIVF-ET後の妊娠の不成立と関連するとの報告あり。

採卵前のストレス・不安が多い女性では、妊娠率が低いことが示され、IVF-ET後の低い妊娠率と関係があり、リラクゼーションなどのストレス軽減は妊娠率を上昇させると結論づけた報告もある。

 最近のメタアナリシス(集めた論文を統計学的に解析すること)分析では、不妊の問題や他のライフイベントにより引き起こされた感情などの苦悩は、ARTの成績とは関係ないと示されている(2011年)。

不妊治療における精神的ストレス軽減の重要性は示されているが、ARTの成績との関連性については一定の見解は得られていない。

胚移植時や採卵時の鍼治療は妊娠率を増加させると言う報告もあるが、最近のシステマティックレビュー(対象の調査研究の論文をくまなく集めて統合し評価すること)では、鍼治療は、臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率、流産率には影響を及ぼさないと結論づけられている(2013年)。

 不妊女性の精神的ストレスに鍼治療が及ぼす影響については、いくつか検討されており、それによると思われる妊娠結果の改善の可能性も報告されている。

鍼治療は、ストレスホルモンの一つである血清コルチゾールとプロラクチンの分泌を調整し、IVF-ETの結果を改善するとする研究もある。

鍼治療は妊娠率を増加させるが、その有効性は胚移植前後の少ないストレスと関連する可能性があるとの報告もある。

鍼治療を施行したIVF-ET患者の不安を著明に減少させたが、鍼とシャム鍼群(皮膚に刺さない方法)で臨床妊娠率には違いがないとの報告もある。

IVF-ETを施行した患者への鍼治療は妊娠率の増加とは関係しないが、リラックス効果があったとの報告もある。

ランダム化比較試験(臨床研究では最もエビデンスの質が高いとされる)による研究では、鍼治療は不妊に起因するストレスを援助するのに有効な方法であるという報告もある。

これまで鍼治療は、副腎皮質刺激ホルモンやエンケファリン、βエンドルフィン、ダイノルフィン、セロトニン、オキシトシンなどの神経伝達物質の分泌に影響することが明らかとなっている。これらの変化は、不安や抑うつなどの感情と関連が深い中枢神経系の異常状態において有益な効果をもたらす可能性が考えられる。

ストレスの軽減が間接的にARTの成績に影響を及ぼす可能性も否めない。

 まとめ

鍼治療がARTの成績に影響を及ぼさなかったとしても、妊活中の抑うつや落ち込み、月経前不快気分障害と同様に、不妊女性の精神的ストレスや抑うつなどQOLの改善に有効な治療法となり得る可能性があると考えられる。

世界では、今回のように継続的な鍼治療が妊娠率に及ぼす影響についてはまだ検討されていない。

今後、年齢や妊娠段階等に区分し、サンプル数または妊娠例数を増やすこと、また、鍼治療未施行の対照群との比較をすることによる更なる検討が必要。

治療方法に低反応レベルレーザーを使用しているので純粋に鍼治療の効果とは言えませんが、田口先生の臨床の中でレーザーと併用することが、より不妊女性のストレスを緩和し、卵子の発育や内膜の改善、着床促進につながるのであれば治療方法で併用しても問題ないですが、相乗効果があったことは考えられます。

※低反応レーザーを星状神経節へ照射することにより、従来使用されていた方法(鎮痛)での抗炎症作用の他に、交感神経が刺激され、末梢や脳への血流改善、過剰な神経伝達の抑制により神経症状を改善する可能性があり、生殖器の血流や神経機能を改善することで、卵子形成・成熟、内膜改善等の効果が期待され、ARTを補助して妊娠率を上げる一つの方法として使用されています。

 

 当院では、上記のようなことも含めながら、妊活ならびに妊娠しやすい身体づくりのための鍼灸を行っています。

 少しでも早期に天使ちゃんと出会えますように、ストレス軽減も目的の一つとして、ストレスをうまくいなして寄りきれるように、鍼灸でサポートさせていただきます。

 長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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妊活と鍼灸~ストレスの軽減を考える ①~

2022年01月21日 | 不妊症

 昔から、一年で一番寒いとされる大寒に記事を書いています

 金沢も雪が降っています。大寒というのは二十四節気の一つですが、自然の中から編み出され、人々が気候に則って生活するためにつくられた暦です。本当にうまくできているな~といつも思うのです。

 そんな寒い中でも、人間の身体は日々刻々と新陳代謝を繰り返しながら生命を営んでいます。

 女性の生理周期も同様です。

 約28日周期でおとずれる生理周期。この生命を育むシステムは、乱れる方々もおいでですが、初潮から閉経まで呼吸や心拍などのように意識することなく身体の自動システムとして粛々と行われます。

 

 当院においては、妊活のための鍼灸、妊娠しやすい身体づくりのための鍼灸にも力を入れて実施しています。

 私が本格的にこの分野に力を入れ出したのは20年前です。一番最初に体外受精で妊娠出産されたお子さまが今では大学1年生で、時々、鍼灸を受けに来院されます。すごく感慨深いものがあります。

 

 さて、今回この妊活におけるストレスあるいはストレス対応(メンタルヘルスケア)という部分をピックアップします。
 私は鍼灸施術を行いながら、果たして鍼灸は妊娠のどこの部分に効果があるのか、そして不妊クリニックが行う治療のどこの部分のサポートができるのか、鍼灸を受けに来ていただける方に効果として何を提供できるのか、という事をいつも思いながら施術しています。

 そこを考えるとストレス対応という部分に関しては、鍼灸施術が大きく関わっていけるだろうと感じます。
 それは、これまでの不妊症の患者さんを施術してきた経験と、東洋医学研究所で修行・研修した当時から自律神経失調や不定愁訴の研究や勉強を通じて学ばせていただいた事から、対応できる可能性は充分あると感じます。

 

 さて、不妊症に取り組まれているご夫婦には様々なストレスが存在します。

 今回は、不妊に関するストレスをみていき、パート2では、不妊女性の精神的ストレスに対する鍼灸の有用性について書かせていただきます。

 

 その前に、不妊に関する最近の状況についてのトピックをみていきます

 

不妊に関する最近のトピック

 実際に不妊の検査や治療を受けたことがあるご夫婦は、全体で18.2%、子どものいないご夫婦では28.2%で、これは夫婦全体の5.5組に1組に当たります。(国立社会保障・人口問題研究所の第15回出生動向調査〈2015年〉による)

 不妊の増加の原因は一つではありませんが、ライフスタイルや価値感の変化、晩婚化があげられます。

 2017年の体外受精治療件数は約448000件、出生数は5万6617人が体外受精にて生を受けました(全赤ちゃんの約16人に1人)。2019年の体外受精治療件数は約458000件、出生数は6万598人(全赤ちゃんの約14人に1人)となっています。(日本産婦人科学会 倫理委員会 登録・調査小委員会のデータより)

 出生数は全体に減少していますが、体外受精件数やその出生数は増加しています。

 ART(高度生殖補助医療)における出生数のうち、5万4188人とほとんどが「凍結融解胚」によるものです。(上記委員会による)

 IVF(体外受精)の総件数の年齢は、38歳から42歳が35000件を越え、40歳が頂点(約38000件)となる山型のグラフとなります。(上記委員会による)

 IVFによる妊娠率は、20代後半から32歳までは45%前後を推移し、33歳では約43%と45%をきり下降が始まり、37歳には約38%と40%をきり、そこからの下降幅は急となり、40歳では約28%、43歳では約16%、45歳からは約8%となります。(上記委員会による)

 日本の体外受精実施件数はアメリカを抜いて世界第1位です。それに対し採卵1個あたりの出産率は調査国中で世界最下位になっています。体外受精を受けた女性の年齢を国際比較(2011年)すると、40歳以上の割合は、ヨーロッパ諸国では11~16%、アメリカ大陸では22~23%、オーストラリアでは28%、に対し、日本は44.7%と倍近い割合になっています。(国際生殖補助医療監視委員会〈ICMART〉の2018年報告)

 体外受精実施件数の割に出産に結びつかないのは、大きな原因として晩婚化による生殖開始の遅れがあるのは間違いありません。これに関しては不妊症の正しい理解とともに、生殖や性に関する教育を学生のうちに行うことが必要ですし、社会をつくっていくのは人であり、その根本である生殖や性を、医療だけではなく社会全体の問題として捉えて問題を解決していく必要があると感じます。

 IVFによる流産率は、20代後半から30歳までは15%前後を推移しますが、そこから年齢を増す毎に率は高くなり、40歳では32.9%、45歳では60%となり40歳を越えると急激に増加します。(上記、登録・調査小委員会による)

 IVFによる出産率は、20代後半から32~33歳までは30%前後を推移しますが、そこから下降をはじめ33~38歳までは下降しながら20%を維持しますが、39歳には16.9%、40歳では13.4%、42歳からは7%となります。(上記、小委員会による)

 

 これらはあくまでも統計的な数字であり、現在の不妊治療の現状の一端を示しています。

 治療中の方は、「あー、私の可能性はこんなに低いんだ~」と捉えるのではなく、子どもを授かる可能性が広がった中での現状の数字を理解しながら、ご自身の不妊治療に活かしていくことが大切であると思います。

 不妊専門クリニックでは、ご夫婦個別に何が原因か、こうすれば治療が成功するのではないかという所を毎回工夫を行いながら不妊治療を行っております。その限界と可能性の両者を理解しておくことは、妊活期間の身体と心の両面の在り方として大切だと私は理解しております。

 これらを理解しておけば、それでは不妊で悩む当事者自身として何が大切か、出来るのかと言うことが見えてきます。
 まず出来ることは、自分自身の身体を健全に保つことです。運動すること、食事に気を配ること、睡眠をしっかりとること、ゆっくり休む時間をつくること、笑顔は多めに等、不妊に限らず、健康を保つために基本的な事柄を実践することが、どんな場合にでも身体づくりのベースになるということです。

 人事を尽くして天命を待つです。

 あっ、完璧でなくてもいいですよ。笑

 

 さて、ここから不妊女性の心理的ストレスをみていきます。

 

不妊女性の心理的ストレス

1.自己意識から生じるストレス

 今の世の中、価値感は多様です。皆が同じでなくてもいいのです。しかし、女性には子どもを産むことができるという男性にはない能力がほとんどの方に存在します。これは女性に共通する人類の価値です。

 結婚ー妊娠ー出産ー子育てを理想とする女性が多いのは当たり前かもしれませんが、反面、その過程で、妊娠しないことで女性としての能力の喪失、親になる能力の喪失、自身の身体に対する信頼の喪失、自己コントロール感の喪失など多くの喪失を味わいます。

 自分を責めてしまいます。

 それに拍車をかけるように、これだけ情報が発達した現代の日本の社会でも、「女性は子どもを産んで一人前」「子どもを産むのが当たり前」という伝統的価値感がなお根強く存在しています。それにともなう不妊のご夫婦への心ない言葉もよく耳にするところです。不妊に対する一種の差別や偏見は今しばらく続くのかもしれません。

 

2.社会との関わりで生じるストレス

 多くの人は、不妊治療を行っていることを、自分が関わる全ての人に話すことができないのが事実です。それは友人や家族、親族にもそうであり、会社勤務されている方は、直属の上司にだけ話を通してあるという話もよく耳にします。

 そんな状況の中で何気なく「子どもはまだ?」という言葉が会話に出てくることがあります。相手は会話の中の何気ない一言であっても、本人は自己意識から生じるストレスの劣等感や罪悪感を刺激され悲しみに暮れることもあります。

 また友人からの妊娠の報告や年賀状の家族写真を素直に喜べない、職場や友人との雑談での子どもの話題に耐えられない状況に陥り、距離をとってしまい、疎外感や孤独感を感じるケースもあります。そんな自分自身に落胆してしまいます。

 

3.治療によるストレス

 近年では不妊治療の原因の約半数が男性側にあるとの数字が出ています。精索静脈瘤や精子に原因がある場合は手術やその治療を行わないといけませんが、検査から治療、結果を待つ過程においては圧倒的に女性側の負担が大きいことは理解できるかと思います。

 子宮卵管造影検査は痛みを伴うことが多いです。経膣超音波検査での毎回の卵胞計画は内診台での検査ですので羞恥心を伴います。タイミング療法では夫婦関係の日のおおよそを指定されるため、性欲にしたがったセックスではなく、律動的で形式的な行為になってしまうこともあります。仕事や時間の都合でタイミングが合わずその日にセックスができなかった場合は夫婦間に葛藤が生じることもあります。いわんや人工授精、体外受精ともなるとセックスと生殖は別のもののようになり、いつの間にかセックスレスになることもあります。

 不妊治療期間中は、特に女性において検査や治療、その結果により多くのストレスに晒されます。

 専門クリニックでの不妊治療を始めたらすぐに妊娠できると思っているご夫婦も多いと思いますが、全ての方が簡単に妊娠、出産できる状況ではないため、上記のトピックのような状況になっています。

 タイミング療法から始まり人工授精、体外受精へとステップアップしていく場合もありますし、検査結果によってはすぐに体外受精へ進む場合もありますが、妊娠、出産までは長い年月を要するご夫婦もおいでです。
 治療期間中、妊娠への期待で気分が高揚しますが、月経が来る度に気持や気分が乱降下しますし、治療期間が長くなればなるほど、見通しが立たず真っ暗な出口の見えないトンネルを進んでいるような気分になります。

 不妊治療期間や年齢を考えて、どこで治療を終結させるかという問題も出てきますが、これも大きなストレスとなります。
 妊娠・出産が難しい場合、卵子提供か、里親や特別養子縁組制度か、子どもを諦めるか、そんな選択に迫られるポイントが必ず訪れます。

 令和4年4月から、生殖医療においても保険適用になるということですが、まだ内容を把握していないので何とも言えませんが、現在、不妊治療を行うご夫婦の大きな経済的助けとなっている「特定不妊治療費助成制度」がなくなるという話題も出てきています。

 そう、経済的負担も大きなストレスとなります。1回の胚移植までの検査や治療の経済的な負担も多額です。長年治療を継続されている方は、総額が高級乗用車1台を簡単に購入できるほどの治療費となります。それくらい、妊娠・出産にかける思いが強いということなのです。

 

 不妊のご夫婦とくに女性側の大きく強いストレス環境がご理解できたかと思います。
 個人差はありますが、大なり小なりストレスを受けることで、心身に影響が出る=妊娠を妨げる要因となったり、様々な不定愁訴が出現するだろうことが予測できます。

 

そんな中で鍼灸治療で何ができるのか・・・

 これがパート2での話題となります。

 不妊女性の精神邸ストレスに鍼灸で何ができるのか、鍼灸で何が変わるのかを書かせていただきます。

 鍼灸以外の方法も少し書くことができれば書いていきたいと思います。

 

 それでは、パート2でお会いしましょう

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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妊活と鍼灸 ~シリンジ法って知ってますか?!~

2021年08月14日 | 不妊症

 雨が降り続くお盆ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか

 こんな雨の日の休日はお家でゆっくり過ごされること多いのかと思います。

 

 さて、当院では ”妊娠しやすい身体づくりのための鍼灸” に力を入れております。

 ご存じであると思いますが、不妊症に悩むご夫婦の事情は様々です。

 年齢も、身体の状態も、生活環境も、経済面も等々、すべて違います。

 ですから多くの正しい情報を知っておくことは、妊娠・出産への道の選択肢を増やすことになります。

 

 施術を行っていると、様々な話を伺います。

 その中で、妊娠して出産したい場合の欠かせない問題はセックスです。

 精子や卵子、また身体的異常があるないという事は今回はおいておきます。

 その上で、セックスの頻度が多いご夫婦はそれだけ妊娠する確率が高いことは、誰も否定できないことであろうと思います。

 

 しかし日本人は世界各国と比較してもセックスの頻度は低くなっています。

 そして不妊症の治療といことになると、ほぼセックスレスになるご夫婦が多いように感じます。

 そのような状況になっていくには、いろんな理由があるのでしょうが、できれば不妊症の治療期間であってもご夫婦でのセックスは営んでいただきたいというのは私の望みです。

 

 最後まで至らなくても、肌と肌を触れあい、愛情を確認できるだけでも脳機能が良い方に変化しますし、気持ちも温かいものになっていくと思います。

 しかし、なかなか上手くいかないのが世の常です。

 よほどの縁があって夫婦になったと思いますので、不妊治療中の時でも、できれば楽しくセックスを営んで欲しいな~と思います(すいません、繰り返しで)。

 

 そんな中、IVF(体外受精)など高度生殖医療へ行く前の段階、また、IVFの合間などは自然に妊娠できれば、それに越したことはありませんよね。

 タイミング療法なども、共働きが多いご家庭においては、うまくセックスの時間が合わない場合があります。

 また、ご主人さんが夜遅くまで働き、疲れ切って仕事から帰るので、そんな気にもならないこともよく聞きます。

 

 そこで、今回、ご紹介するのがシリンジ法というものです。

 シリンジ法については、この方法を開発したTENGAのホームページより抜粋します。

 

シリンジ法とは

 先端部が柔らかなシリコンでできた器具で精液を吸い上げ、女性の腟内に注入する妊活の方法です。一般的に、女性の排卵予定日前後の5日間連続で性交をするのが理想とされていますが、現実には難しいですよね。そういった性交のタイミングが取りづらいときに活躍するのがシリンジ法です。

自宅で簡単に行うことができ、排卵日に合わせてセックスをする心理的・身体的な負担も少ないことから、妊活や不妊治療についての情報サイトでも特集が組まれるなど、注目が集まっています。

「Seed in」とは

 妊活をサポートするシリンジパックです。

 妊活に詳しい泌尿器科医の監修のもと開発され、医療機器としても認可されています。ポストから受け取ることができるスリムな梱包で、排卵日のタイミングに合わせてより手軽にお使いいただけるよう工夫をしました。

 

 

 妊娠を望むご夫婦で、セックスのタイミングが合わない、セックス時に中折れしたり、射精障害がある場合には、一度、TENGAホームページをご覧いただき検討いただければと思います。

 

 何度も言いますが、できればセックスを楽しんでいただくことを前提にした上で、このシリンジ法なども試していただければ、妊娠する確率は高まるかなと考えております。

 妊娠を望むお二人のご参考になれば幸いです。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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妊活と鍼灸~水分摂取・・・カフェイン、アルコールなどの摂取は?!2~

2021年08月10日 | 不妊症

 第2話、はじまり~はじまり~

 『妊活と鍼灸~水分摂取・・・カフェイン、アルコールなどの摂取は?!1~』 の続きです。

 

 実は私もコーヒーが大好きです。ほぼ毎日、飲んでいます。

 美味しいコーヒーや紅茶って、いい香りがしますし、香りをかいでいるだけで心が落ち着いてきます

 ちなみにお酒も大好きです・・・毎日は飲んでいませんけど

 

 では、妊娠を望み妊活をされている、また妊娠期にある皆様はどう考えるとよいのでしょうか。

 それを『妊娠しやすい食生活』という著書の中からご紹介いたします。

 第1話でも書かせていただきましたが、アメリカでの調査であることと、この書籍のデータの元である「看護師健康調査」や各研究の数値を直接把握しておりませんので、だいたいの参考にしていただければ有り難く思います。

 

コーヒーの影響

コーヒーのプラス面

・ブラックコーヒーならカロリーは0に近い。

・抗酸化物質など健康に有用な物質も多く含む。

・長期にわたる調査では、コーヒーを飲む人は2型糖尿病や胆石、腎臓結石、大腸がんにかかりにくいという報告あり。

 

コーヒーのマイナス面

・カフェインは常習性あり。

・コーヒーに加える砂糖やミルク、ホイップクリーム、キャラメルなどの影響がある。

 

「看護師健康調査」によると

・おおよそ半数がコーヒーを毎日飲用する習慣があった。

・コーヒー飲用者とそうでない人の妊娠率に変わりなかった。

・排卵障害や子宮内膜症、卵管閉塞といった不妊の原因とコーヒー飲用者との関連を調査しても、どの項目とも関連性は見いだせなかった。

・一日2~3杯であれば、通常のコーヒーでもカフェインフリーのコーヒーでも結果は変わりなかった。
 ※それ以上の量を飲用するものがほとんどいなかった。

・ここで言えること;一日2~3杯のコーヒーであれば妊娠に悪影響はないことは示された。

 

妊娠してからのコーヒーの飲用は?

・通常の量であれば早産や出生異常。低体重などを起こすことはないとの報告がある。

・カフェインと流産については多くの研究で関連があると結論づけられている。

・調査の設定によって、結果にブレが出る可能性があることは頭に入れておく。

・不安がある場合は控えるようにしよう。

・ママが飲んだり、食べたりしたものが胎児のエネルギーになりますから。

 

紅茶はどうでしょう

紅茶について

・紅茶は世界でもっとも多く飲まれている飲料。

・栄養素も多岐にわたり、腎臓結石、胆石、心臓疾患、脳卒中、ある種のがん(胃がん)の予防に繋がるとされているが、証明されるにはもう少し時間がかかる。

 

「看護師健康調査」では

・紅茶はコーヒーに次いで多く飲用。

・その中で4分の1の調査参加者が毎日1~2杯の紅茶を飲用。

・妊娠率と紅茶の飲用はとは関係がないとの調査結果。

 

長期にわたる複数の調査研究では

・紅茶は妊娠に影響しないとの報告もあれば、妊娠率を下げると結論づけている調査もある。

・カリフォルニアの保健維持組織(健康保険組合の一つ)の大規模調査・研究によれば、妊娠率に関して、紅茶を一日1杯飲むことで、飲まない女性に比べて妊娠率が倍になるという報告もある。

・紅茶を楽しむことでリラックスできるなら、常識の範囲内の飲用は問題はない。

・不安がある場合は控えるようにしよう。

 

カフェイン含有量の比較(食品成分表等の資料参照)

浸出液100mlあたりの含有量

コーヒー  60mg  コーヒー粉末10gを熱湯150mlで淹れた場合

紅 茶   30mg  茶5gを熱湯360mlで1分半~4分浸出した場合

インスタントコーヒー  57mg  インスタントコーヒー2gを熱湯140mlで淹れた場合

玉 露   160mg  茶葉10gを60℃の湯60mlで2分半浸出した場合

煎 茶   20mg   茶葉10gを90℃の湯430mlで1分浸出した場合

ウーロン茶 20mg   茶葉15gを90℃の湯650mlで30秒浸出した場合 

番 茶   10mg   茶葉15gを90℃の湯650mlで30秒浸出した場合 

ほうじ茶  20mg   茶葉15gを90℃の湯650mlで30秒浸出した場合 

玄米茶   10mg   茶葉15gを90℃の湯650mlで30秒浸出した場合 

麦 茶   0mg     茶葉50g、湯1500mlを沸騰後に5分放置

コーラ   20mg以上

エナジードリンク  32~300mg  製品によって含有量が異なる

 

炭酸飲料

「看護師健康調査」では

・一日2杯以上、カフェインを添加された炭酸飲料を飲んでいた女性は、同様の飲み物を1週間に1度しか飲まない女性に比べ、排卵障害による不妊のリスクが50%も高かった。

・でも炭酸飲料でカフェイン添加飲料は1種類であり、そのカフェイン含有量はコーヒーより低かった。

・カフェインフリーの炭酸飲料の調査でも妊娠への影響が見られた。

・カフェイン要素を取り除き統計学的に計算したところ、炭酸飲料の摂取と不妊の関連性がより強くなった。

・不妊に繋がる原因は飲料に含まれる糖分とカロリーであることが推測された。

・栄養素を含まない糖分・カロリー摂取は血糖値とインスリン値を上昇(交感神経緊張状態となる)

・長期的には肥満につながり、妊娠しにくくさせるだろう。

・どうしても炭酸飲料が飲みたい場合は、炭酸水に果物を搾って飲用するといい。

 

アルコールの摂取はどうでしょう?!

前提として

・飲み過ぎは月経サイクルを狂わせ、排卵を止め、正常な受精と受精卵の着床を阻害し、流産を引き起こし、早産のリスクを高める

 

いくつかの報告

・一日1杯のアルコールで影響があるのかはハッキリした証拠はない。

・IVF(体外受精)の治療周期の前期にアルコール摂取していた女性は採卵数が少なく、妊娠率が低いという報告あり。

・30歳以下の女性には少量のアルコール摂取は妊娠への影響はみられないが、31歳以上の女性では妊娠の障害になるとの報告あり。

・少量のアルコールをとっていた女性は摂らない女性に比較し、早期に妊娠にいたったと報告(オランダの調査)。

・ワインや蒸留酒を飲む女性より、ワインだけ飲む女性のほうが妊娠の確率が高くなる報告(オランダの調査)。

・専門家の報告でも意見が分かれる。

 

少量のアルコールとは

・CDC(米国疾病対策予防センター)が定める量
  ビール;約340mmℓ     ワイン;約148mmℓ    80度の蒸留酒;約43mmℓ

 

「看護師健康調査」では

・アルコール摂取量で5つのグループにわけて調査。

・排卵障害の不妊症リスクは、アルコールを全く摂取しない女性より、一日1回摂取する女性の方が低いという結果だった。

・子宮内膜症や卵管閉塞などの他の不妊症リスクについても同様な結果。

・アルコールの種類は試験結果に影響を及ぼさなかった。

・一日1杯程度のワイン、ビール、蒸留酒は妊娠に影響を及ぼさないと考える(日本酒はどうなんだろう~😁)。

 

私の考え

・結論は出ないが、できるだけアルコールは控えた方が良いと考える。

・日本人は、アルコール分解する酵素の少ない人も多い。

 

妊娠後の影響

・母体内のアルコール濃度が高いということは胎児のアルコール濃度も高くなる。

・小さい胎児はゆっくりとアルコールを処理するため影響される。

・可能性として胎児性アルコール症候群となり、出生後に影響を及ぼすこともある。

・アルコールについては不確実要素が多いため、妊娠を望むあいだはアルコールを断つほうがいい。

男性への影響(ちょっとだけ😁)

 カフェインやアルコールも女性と同様、男性の性機能にも影響します。

カフェイン

・試験管内での精子にカフェインを添加すると運動性が改善されることが分かっている。

・精巣における精子の発達や熟成に関与しえいると考えられている。

・カフェインが男性性機能に与える影響はすくないと推測。

 

アルコール

・過度の飲酒はテストステロンの値を下げ、精巣は萎縮し、勃起したり、勃起を維持するのが困難になり、精子の製造スピードが遅延。

・少量のアルコールについては女性同様議論が分かれる。

 

結 論

・男性も同様に、妊娠がゴールならカフェインやアルコール摂取をひかえめに。

・小さなリスクでも避けるのであれば、カフェインやアルコール摂取をひかえる。

 

 妊娠を望む皆様、妊娠期の皆様の水分摂取についてみてきました。

 結論は難しいですが、自分の直感を信じて判断いただければ良いかと思います。

 その際、この記事をお役立てていただけますと嬉しく思います。

 

 妊娠しやすい身体づくりは、ご夫婦それぞれ生活環境や社会を取り巻く環境、身体の状態もまちまちです。

 ご夫婦の目標に向かって、ストレスのない選択肢をしてください。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

 

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妊活と鍼灸 ~水分摂取・・・カフェイン・アルコールなどの摂取は?!1~

2021年08月09日 | 不妊症

 猛暑が続いておりますが、皆様、楽しく元気にお過ごしでしょうか

 今年から熱中症警戒アラートが環境省から発出されることになり、猛暑への対策に注意が呼びかけられています。
 まだまだ暑い日が続きますので気をつけてくださいね。

 

 さて、妊活の鍼灸を行っている中で様々な日常生活のアドバイスをさせていただきます。

 水分摂取は特に重きを置いてアドバイスさせていただくことはないのですが、コーヒー摂取アルコール摂取については時々、施術中の話の中で出てきますので、参考に書いておきたいと思います。

 今回は「妊娠しやすい食生活」(ジョージ・E・チャバロ他著)より、ハーバード大学による女性看護師を対象にした疫学調査「看護師健康調査」を中心に書かれた書籍を参考に書かせていただきます。
 アメリカでの調査であることと、書籍の中の実際の数値は確認していませんので、だいたいの参考と捉えていただければ有り難く思います。

 

水分摂取

 暑いと汗をかく、水分を摂らなくてはいけない、これは人にとって本能的と言いますか、生命を維持するために必要な行為であることは理解できると思います。

 人の身体は50%以上が水分で出来ています。

 生物が生まれた故郷は「海」です。人の体内の水成分は海水に似ています。生命は海水の中で誕生し、人の細胞の内外はその水分で満たされています。人には水はなくてはならない存在です。(枕詞みたいなものですね

 

水の体内での機能

・組織や器官の緩衝剤や潤滑油としての働き ・栄養素の供給と老廃物の排泄システム ・ホルモンやシグナルを伝達する分子などのやりとりの場 ・他に肌、鼻孔、肝臓、ホルモンバランスの機能維持の働き・・・など多くの働きを担う。

水分摂取の必要量 ☞ 1キロカロリーあたり1mmリットル必要

・汗や尿などで水分を排泄した分は吸収する必要がある。

・どれだけ動いたか、何を食べたか、温度や湿度の環境によっても違ってくる。

・通常、2000kcalを消費するなら、少なくても2リットルの水が必要。

・食事おいて野菜や果物、スープ、味噌汁、ご飯などから吸収することは可能だが、足らないので水分をとる必要がある。

・看護師健康調査対象者へ毎日の飲み物の写真を送ってもらったところ、その6分の1が一日にコップ6杯からそれ以上の水を飲用。
 その他はコーヒーや紅茶、炭酸飲料を飲用。アルコール(特にワイン)も飲用。

 

カフェインの影響

カフェインの主な機能

・覚醒作用 ・血管拡張作用 ・交感神経刺激(基礎代謝促進) ・胃酸分泌促進作用 ・利尿作用

 カフェインは中枢神経に作用を及ぼすので、飲み過ぎは中毒症状を引き起こすこともあるわけです。

 では、よく言われる、カフェインは妊娠に悪影響を及ぼすのでしょうか

 カフェインは他の食物と同様、肝臓に入り、そこから全身へ送られます。卵巣、子宮、卵管、精巣など生殖器官にも例外なく送り込まれます。

 

妊娠期のカフェインの危険性が指摘されたのは

・1980年のアメリカ食品医薬品局(FDA)の研究による。

・一日コーヒー200杯分に相当するカフェインを摂取させた妊娠中のラットが産んだ赤ちゃん5匹ともが、つま先の欠損、あるいは変形するなど出生異常が見られた(この量を毎日摂取すれば・・・)。

・この研究でFDAは妊婦等にはカフェインを減らすか、避けるかを警告。

・FDAの同じ研究者が、ラットが摂取する水にカフェインを混ぜ、強制ではなく飲用自由にしたところ、出生時の欠損は増加しなかった。

・しかし、先に出された警告は撤回されなかった。

 

カフェインと生殖・妊娠の関係について解明しようと研究が重ねられる

・現在のところ明確な結論には至っていない。

・少量のカフェイン(少量;1日300mg以下=コーヒー2~3杯に相当)では妊娠や胎児の発育には影響しないとの報告。

・別の研究では、同量のカフェインでも妊娠しにくくなったり、発育にもわずかなリスクが生じたとの報告もある。

 

「看護師健康調査」から得た結論

・カフェイン摂取は排卵障害には影響はないだろうということ。

・カフェインを多く摂っているグループ(1日400g以上;400g=コーヒー4杯分相当)とカフェインをほとんど摂っていないグループと比較。

 排卵障害による不妊症のリスクの率は変わらない。

 排卵障害以外の不妊症のリスクを調べた結果は、カフェインを摂るグループが20%妊娠にいたる確率が低下。

 考えられる理由;卵管の運動が鈍くなり、受精卵の輸送スピードが低下(着床のタイミングが遅れた)。

 もう一つ理由;子宮内膜そのものの着床環境悪化。

 

・他のカフェイン摂取の研究(不妊治療に通う約1000人×出産経験のある約4000人の比較)

 カフェインの多量摂取が卵管障害や着床障害による不妊リスクを高める。

 排卵障害に不妊リスクは高めなかった。

 

カフェインは本当に問題があるのか

・飲料別に調査を行った。

・結果、カフェイン添加のソフトドリンクが不妊症のリスクを高めていることが判明。

・この種のソフトドリンク飲用者を除外すると、カフェインと不妊との関連性は認められなくなった。

 

カフェインの身体への影響をどう考えるか

神経質になりすぎないほうがいいかもね

・「看護師健康調査」では、カフェインの摂取は妊娠率を低下しているように見える。

・カフェイン添加のソフトドリンクを外すと、その相関性は明確ではない。

・コーヒー、紅茶、緑茶を我慢する必要はないが、1日3杯ほどの飲用であれば大きな影響はない。

・飲み過ぎてしまう人は、カフェインフリーのコーヒーや紅茶にする。

・気持ちの中に飲用への心配がある人は、念のために飲用を控えることもありあり。

 

 少し長くなりましたが、調査や研究としては答えが出ていないということです。

 カフェインは妊娠に悪影響するというものもあれば、影響はしないというものもあり、正確なところは、その論文を精査してまとめてみないと分からないところではあります。

 しかし、このような流れを参考にしながら、妊活を頑張られる皆様にはストレスのない判断を行っていただければと思います。

 

 ここで言えることは習慣としなければ、少しのカフェイン摂取が身体に大きな影響を及ぼすことはないようにも思います。

 時々のコーヒーや紅茶、煎茶は、ストレス解消に繋がるのかもしれません。

 

 このブログでは、カフェインは「毒」みたいなものでないことを理解いただければいいかなと思います。

 妊娠を望み、出産を望むご夫婦に少しでも参考になればと幸いです。

 

 ご質問や分からないことがございましたら、ほんの些細なことでも、何でもお問い合わせください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

 パート2では、飲料別にわけて説明を少し加えていきます。

 

 妊活と鍼灸 ~水分摂取・・・カフェイン・アルコールなどの摂取は?!2~

 

二葉鍼灸療院(金沢)

 

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妊活と鍼灸 ~運動しましょう! 呼吸でエクササイズ 1~

2021年01月31日 | 不妊症

 寒い時期は、なかなかウォーキングも続かなくなりますよね。寒い

 その場に居ながらにして運動できれば、どんな時でも場所や環境を選ばず運動できるのではないでしょうか

 

 その運動は・・・呼吸 を使ったエクササイズです。

 呼吸は、「やりたくな~い」って言ってると生きていくことができません。その呼吸を利用して身体を元気にすることで卵子力をアップする運動「受胎気功」をご紹介いたします。

 不妊専門医で、IVF JAPAN CEOの森本義晴先生の著書『「卵子力」をアップさせるライフスタイルBOOK~赤ちゃんができる。理想的な身体と心になるために~』からご紹介となります。

 少し詳しく加筆し、説明も加えながら二部構成で説明させていただきます。

 では、はじまり~

 

気功の考え方 精・氣・神。

 精=生殖  氣=心  神=脳(全てのバランスが調和し、全身の氣がスムーズに流れる)

 現代人は脳を過剰に使っています。心と身体のバランスが崩れると、ストレスを過剰に受け、心のモチベーションも保てなくなり、ホルモン放出のバランスも悪くなると妊娠しづらい要因になることは理解できると思います。

受胎気功 心身のバランスを保ち、氣、血、ホルモンの巡りをよくすることで、細胞が良い氣(酸素)で満たされ、ミトコンドリアの働きも活性化されます。卵子力アップはもとより、身体自体の働きが良くなり、お肌のツヤが良くなる、疲れにくくなるなどの嬉しい効果もあります。

 慣れないうちは難しく感じますが、「なんだか気持ちいいな~」と楽しみ感覚を大切にしてください 
 頭で考えすぎないでね

 

受胎気功を実践するための大事なポイント

任脈(にんみゃく)

 身体の前面中央で、アゴから肛門付近(会陰)へ向かい流れる氣の流れ(経絡)のことで、陰脈の海(一つにまとめるところ)。

督脈(とくみゃく)

 身体の後面中央で、尾骨下端より頭の頂点にのぼり、上顎部に向かい流れる氣の流れ(経絡)のことで、陽脈の海。

〈身体の中央ライン〉尾骨下端から始まり 背骨をのぼって 頭のてっぺん から上顎にくだり 下顎から お臍へくだり 会陰までくだる この氣の流れをスムーズにし、全身に良い氣が流れるように行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丹田

・受胎気功の呼吸を行う際、一番意識して欲しい場所です。
・おへそと恥骨を結んだラインの真ん中くらいの位置です。
・ここは精神=氣が貯蔵される場所です。

・丹=赤き色のこと。血液循環に関係するところと想像できませんか

 ※鍼灸では、この部分に「関元(かんげん)」という大事な経穴(ツボ)があり、泌尿器、婦人科系症状によく使用されます。

 ※「男子は精を蔵し、女子は血を蓄うる」とも言われていますので、生命エネルギーとも密接に関わっています。

 ※丹田には上・中・下があり、上記は下丹田、上丹田は脳、中丹田は心臓とも理解されています。

 

氣が出入りする特に大切な経穴(ツボ)

百会(ひゃくえ) 先ほどの督脈上にあるツボで、頭のてっぺんにある経穴
          その名の通り、多くの経絡(氣)が交わり合うポイント
          脳=神 

労宮(ろうきゅう) 手のひらの真ん中にある経穴。中指と薬指の指先の間
           その名の通り、頑張った後に反応が出やすい経穴
           心臓=氣

湧泉(ゆうせん) 足の裏にある経穴
          精のエネルギーを蓄えている腎の経絡の始まり
          まさしく、上昇するエネルギーが湧き出る泉
          生殖=精

※これらの3点を指圧したり、マッサージしたりして氣を巡りやすくしておくといいです。

 

受胎気功の方法

 立位・座位での方法がありますが、手を上げるか、下げるかだけの差で、方法自体は大きくかわりませんので、どちらでも結構です。

1.ウォーミングアップ

①背筋がスッと伸びる姿勢でリラックスします。座位でも立位でもかまいません。

②リラックスできる体勢が整ったら、目を半眼にします。一度まぶたを閉じて、ほんの少し開きかけた状態です。頭の中を空っぽにしましょう。

③口の中にたまった唾液で口内をすすぎ、その後、ゴックンと飲み込みます。
 この動作は、氣を丹田に送る際のイメージトレーニングにもあります。
 ※唾液は氣から生成される分泌液で「津液(しんえき)」の一つとされています。

④次に首をゆっくり回して氣の循環をよくします。
 ボーリングの玉ほどの重い頭を支えているのですから氣や血の流れが滞りやすくなります。
 ・首を前にゆっくり傾け、息を鼻から吸いながら前から左後ろに向かって回していきます。
 ・回しながら、口から息を吐いて右側を通り正面へ戻します。
 ・左まわり3回、右まわり3回、行います。

 

2.「丹田呼吸法」は受胎気功の基本(準備)

・丹田の場所は確認しましたね。上の図でいうと下丹田です。手で押さえてみると分かりやすいです。

・基本は「腹式呼吸」です。鼻で大きく息を吸って、お腹の奥まで入っていくイメージが出来たら、ゆっくり口から息を吐きましょう。

・次に丹田を意識しながら、腹式呼吸を続けてみましょう。心がゆったりしてきましたか?!

 

では「丹田呼吸法」やってみましょう!

・どんな姿勢でも結構です(今回は立位での方法をご紹介)。

①身体を締め付けているベルト等を外し、足を肩幅くらいに開きます。肩と膝の力は軽く抜いて、そっと目を閉じます。

②鼻からゆっくり息を吸い込みます。お腹の奥まで空気の入っていくのを意識しながら、丹田を通していいエネルギーが身体の中に入り込んでいくイメージを持ちましょう。

③十分に息を吸い込んだら、口をすぼめて少しずつ息を吐き出します。ストレスや老廃物を身体の中から外へ出していくイメージです。

※心の中で「いーち.にー.さ~ん」とカウントしながら息を吸ったら、同じリズムで吐き出しましょう。
※コツをつかむまでは、両手のひらを軽く丹田にあてて、呼吸に合わせて手のひらが動くの感じて行ってください。

3.宇宙の氣を取入れる動作

①座った姿勢で複式呼吸ををしながら、ゆったりとした気分になります。

②両手のひらを合わせて、ゆっくりと擦り合せます。手のひらがポカポカ温かくなってきます。

③次に、両方の手のひらを頭の上にかざします(ウサギさんポーズ)。手のひらは前に向けて、息を吸いながら宇宙の氣を労宮のツボに集めて、身体に取り込むイメージでやってみてください。

④手のひらに氣を感じたまま、口からゆっくり息を吐きます。これを3回繰り返します。

⑤次に、手のひらをお腹の表面から2cmくらい離し、丹田のあたりに当てて、息を吐きながら手のひらに溜まった氣を丹田に送り込みましょう。これも3回繰り返してください。

 

4-1.受胎気功(座位)本番

 リラックスするのが最大の目的ですので、焦らずにやりましょう。慣れるまで難しく思うかもしれませんが、繰り返すうちに全身の氣が流れやすくなり、やがて大きなうねりを生み出せるようになります。徐々に時間を長くしていきましょう。

①目を半眼、丹田を意識して、ゆっくりと丹田呼吸を繰り返します。息を吸いながら丹田に氣を注ぎ、お腹をふくらませます。

②息をゆっくり吸いながら、会陰を通って肛門に向かって氣を移動させます。この時、少し肛門をすぼめます。

③少しずつ息を吸いながら、肛門からは背骨に沿って氣を吸い上げます。腰☞背中☞首の後ろ☞百会と移動させます。身体の後面は長い経路ですので、息苦しかったら息継ぎをしながら無理なく行ってください。

④気をおでこに降ろして鼻まで来た時に、舌先を上顎につけ、氣を舌を通って口へと移動させます。これは、生まれた時に切れた経路を舌で繋ぐという意味があります。

⑤口の中に溜まってきた唾液を飲み込み、唾液とともに一気に食道から胃を通って丹田へ氣を落とします。

⑥丹田☞督脈☞任脈☞丹田と再び戻ってきたら、、ゆっくりと息を吐きながら氣を全身に巡らせます。

この一連の流れを約5分間行いましょう。

 

4-2.受胎気功(立位)本番

 大地に深く広く根を張り、風雨に負けないどっしりと颯爽と構える大きな樹木のイメージで、全身の隅々まで氣を巡らすイメージで行います(屋久杉のイメージか)。とてもダイナミックで効果の高い気功法です。積極的にやりましょう

①背筋を伸ばし、足は両肩幅ほどに開き、両足の外側が肩からの線と一致するように立ちます。足先は身体と平行にしてください。目は半眼、膝は軽くゆるめて曲げます。肩の力は抜いて、手はだらりと下に降ろします
 百会から氣を取り込むことができる立ち方で、緊張と弛緩がバランスよく存在し、いつまでも立っていられれる姿勢。

②丹田を意識して、お腹にゆっくりと息を吸い込みます。吸い込んだ氣を太ももからふくらはぎへと身体の下に通して、足の裏の湧泉から吐き出します。

③次に、息を吸いながら、足の裏から丹田へと氣を上げていきます。この後は座位での受胎気功と同じように全身へ氣を流していきます。

④丹田から会陰を通って吐きながら肛門に氣を送り、次に肛門から背骨に沿って吸い上げていきます。氣が上がっていくのに合わせて、両手をゆっくり広げ、肩の高さまで上げます。腕はそこで止め、さらに氣を百会まで上げていきます。

⑤氣を百会から、おでこを通し、口元まで移動させたら、舌を上あごにつけてその中に氣を下ろし、唾液を飲み込み、唾液とともに氣を丹田に下ろしていきます。丹田に戻ったら、息を吐きながら腕をゆっくり下ろし、全身に氣を巡らせます。

⑥元の呼吸に戻して、肩の力を抜き、身体を緩めてリラックスしましょう。全身に氣を流すことで、氣や血、ホルモンの循環が良くなり、自然治癒力=自然妊娠力が高まります。こちらも5分程度を目安に行いましょう。

 

5.内臓マッサージ

 これは身体を横方向に循環させる気功法です。

 血流量が多い肝臓や脾臓の瘀血(滞った静脈血)を心臓へと返し、さらに骨盤内の瘀血も解消する効果があります。

 受胎気功の仕上げとして行ってもよし、単独で行ってもよしの方法です。

①足の外側を結んだ幅が肩幅に一致するように立ちます。肩の力を抜いて両肩をダラッと下げ、膝を少しゆるめます。

②軽く手を握ります。身体をネジって無心に両手をプランプランと振り回します(ラジオ体操みたいな~)。勢いがついてきたら片方の手は胸に、もう片方の手は腰にポンと当たるようにします。心臓や腎臓にも心地よい刺激が加わります。

③この動作に慣れてきたら、丹田呼吸も一緒に行ってみてください。息を1回吸うたびに4回プランプラン、1回吐くたびに4回プランプラン。

④10分ほど行ったら、身体の動きを徐々に弱めていきます。急に止めずに自然に止まるようにしていきましょう。

 

6.受胎気功の仕上げ「収巧」

 動きのある「動功」を行った最後は、氣を収める「収功」を行います。

 座り姿勢の受胎気功のみ、内臓マッサージのみの場合は「収功」は行わなくてもいいです。

①両足を肩幅に開き、目を半眼にし、背筋をまっすぐにして、丹田を意識して息を吸い、その氣を太ももから膝へと通します。

②全部吐き出したら、元の静かな呼吸に戻して身体をゆっくりとゆるめます。半眼にしていた目をゆっくりと開きます。

 

 1~6を全て行うと30分くらいです。すべてを毎日行うのは難しいし、継続できないかもしれませんが、できるものを継続してやってみてください。
 「丹田呼吸法」と「座り姿勢の受胎呼吸」だけでも行ってください。それでも氣が乗らない、体調がいまいちの方は、「内臓マッサージ」だけでもかまいませんよ。

 人間の細胞は、身体のどこかでいつも新しい細胞に入れ替わっています。心地よい空気を身体の末端にまで取り入れ、老廃物をできる限り排出し、よい細胞をつくっていきましょう。

 身体が良い細胞をつくり、循環をよくしていけば、自ずと生殖の力も高まったくることが想像できるのではないでしょうか。

 

 長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

 少しでも心身が良い環境に整い、ご夫婦が天使ちゃんを受け入れる身体と心づくりにお役に立てば嬉しいと思います。

 第二部では、呼吸は大事なんだよ、自律神経にも影響があるんだよ、ということをお話させていただきます。

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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生活習慣の改善で精液所見は改善するのか?!

2020年12月29日 | 不妊症

 当院では、妊娠しやすいカラダ作りのための鍼灸を提供しています。

 しかし、これはいくつかの記事でも書いていると思いますが、当院においては施術に来院されるのは奥様だけが多い現状があります。

 不妊治療でも自然妊娠から体外受精まで、そして、その治療方法となると多くの選択肢や状況があり、それぞれのご夫婦で違った治療環境となることは周知のことです。

 体外受精の際は、精子と卵子を受精させるわけですが、受精しない場合や、受精3日目までの胚異常は卵子側の要因が強く、それ以降の異常は精子側の要因が強く影響されるとの報告もあります。

 

 お子様を授かることは、自然妊娠にしても、人工授精にしても、体外受精にしても、どんな場合もご夫婦の共同作業です。

 妊娠し、それを維持し、出産するという大役を行う女性の心身の環境を整えること、それは最重要であると思いますが、やはり、そこに遺伝子の半分を提供する男性にも大きな責任がありますよね。

 

 専門クリニックは行くけど「鍼灸院へ行ってまでもな~」と思っている旦那様もけっこういるでしょう。では、お家でできることは何かあるのかと考えてみると、やはり精子は毎日、精巣でつくられるわけですから生活習慣の改善が大きく影響しているのではないか ということになるかなと思います。そこらへんを少し見ていきたいと思います。

 

 生活習慣の改善で精液所見は改善されるのか

 結論は、生活習慣改善を促すことは必要です、ということです。

     

第65回 日本生殖医学会 学術講演会・総会~抄録集 一般演題より要約~

生活習慣改善指導による精液所見改善効果ー303例での検討」

・千葉大学大学院医学研究院泌尿器科 ・亀田IVFクリニック幕張

【目的】男性妊孕能に影響を与えうる生活習慣の頻度とその改善指導効果について調査

【方法】無精子症を除く303例に泌尿科器科学的介入前に不適切な生活習慣改善を促す

(検討因子)喫煙、習慣的アルコール摂取、密着した下着着用、身長・体重、禁欲期間、男性因子等

(解析)精液検査を生活指導前後に実施し、統計的に分析

(結果)年齢の中央値は35歳

 喫煙者69例(22.8%)、飲酒習慣あり139例(45.9%)、密着した下着着用207例(68.3%)、陰嚢温度を上昇させる習慣あり229例(75.6%)、BMIが30以上20例(6.6%)、精巣機能低下症47例(15.5%)、亜鉛欠乏症40例(13.2%)、脂質異常症100例(33%)、肝機能異常72例(23.1%)、Ⅱ~Ⅲ度の精索静脈瘤69例(22.8%)、勃起不全130例(42.9%)

 301例(99.3%)で何らかの因子を持っていた

 生活指導前後で実施された精液検査の間隔の中央値は28日

 禁欲期間=3.6日→2.9日に低下(P=0.0055)、乏精子症=145/303(47.9%)→99/287(34.5%)に低下(P<0.001)、精子無力症=231/303(76.2%)→146/286(51%)に減少(P<0.001)、乏精子無力症=115/303(38%)→62/288(21.5%)に減少(P<0.001)、総運動精子数=25.1x10⁶→41.2x10⁶に増加

 上記効果は、BMI30以上、濃精液症、勃起不全、精巣機能低下症、亜鉛欠乏症、薬剤性障害の症例で有意差なし

【結論】泌尿器科学的介入の前に男性の生活習慣改善を促すことは必要

    

 という演題です。

 全ての男性には当てはまらないとしても、妊娠率を少しでもあげるため精子の質や量を改善しておくことは大切であり、そのためには生活習慣の改善は簡単にお金をかけずに出来る方法だということです。

 さらに効果のなかった栄養学的問題、精巣や勃起機能に関する問題、肥満の問題(これは生活習慣ですが)、これらに関しても対応することによって生活習慣改善効果はさらに高まる可能性もあるということも言えるのかなと、私は理解しました。

 

 ご主人さんも、仕事や家庭環境の中で、様々な状況にあると思います。
 働き方、これまで長年継続した生活、自身の生活のバイオリズム、それがストレスを回避する行動であったり、習慣であったりもします。ご夫婦の話し合いの中で、今、何を一番大切に考え、ご主人さん自身ができる範囲で生活習慣を改善していくことが大切かなと思います。

 お聞きしていると、最近は、協力的なご主人さんが多いのはないかとも感じ、嬉しくも思います。

 食事、睡眠、運動、喫煙、飲酒など、少しでも生活習慣を改善していくことは、精子という問題だけでなく、今後の大きな意味での健康や長寿を実現し、天寿を全うする養生にも繋がっていくのだと思います。

 

 奥様のためにも、きっと出逢いを待ち望んでいる天使ちゃんのためにも、ご主人さんもできることを実践してみませんか
 実践しているご主人さんには申し訳ございませんが、流してくださ~い。

 

 当院では、ご夫婦で出来る 妊活セルフ灸 や 妊活指圧・マッサージ もご希望があればご紹介させていただきます。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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不妊症に対する鍼灸最前線 聴講 ~不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー~

2020年12月16日 | 不妊症

 少し前になりますが、第51回現代医療鍼灸臨床研究会(令和2年10月25日)にて、「不妊症に対する鍼灸最前線」というテーマで講座がありましたので、オンラインライブで参加させていただきました。 の続き第3弾

 午前中の基礎講座は聴講できなかったのですが、聴講した分を3回に分けて学んだ点や私の意見等も書いていきたいと思います。

 

 第1話 専門鍼灸師が実践する有効な治療方法とは?」【シンポジウム】

 第2話 不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割【教育講演】

 第3話 (本日)不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー【基礎講座】
      ※聴講できませんでしたが資料より

 

第3話【基礎講座】

不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー

 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科  安野 富美子 先生

 

 「不妊」、「鍼灸」をキーワードとして検索すると(2020年10月1日)、Googleで312万件、Yahooで316万件ヒットする現状です。その中で不妊に対する鍼灸治療の効果として、「妊孕性は高まるか」「出生率は高まるか」「体外受精前後の鍼治療は妊娠率を高めるか」など、鍼灸にエビデンス(科学的根拠)はあるのでしょうか?

 日本では、古くから不妊症や妊娠しずらいカラダの改善に鍼灸は頻用されてきましたが、不妊に対する鍼灸治療の論文は僅かであるのが現状です。

 諸外国で行なわれてきた鍼治療の臨床研究について紹介し、臨床研究の現状と課題をお話していただくのが、この基礎講座の趣旨でした。
 あっ、そうだオンデマンド(期間限定)で聴講できるのを忘れてました でも資料だけでも勉強になりました

 

体外受精(ART)における妊娠率に及ぼす鍼治療の効果ー世界初のRCT研究(2002年 Paulusら)ー

※RCT:「ランダム化比較試験」の略で、集団を無作為にいくつかに分けて、治療や介入の効果を比較研究する方法です。もっとも信頼のおける研究方法となっています。

ドイツ研究チームと中国武漢「同済病院」の合同研究

研究対象:ARTを受けている良質の胚を持つ160名の不妊患者

鍼治療を受ける群(80名)と受けない群(80名)にランダムに割り付け

評価:臨床妊娠(胚移植後6週間の超音波検査で胎嚢確認)

鍼治療:0.25×0.25mmの鍼を使用し、得気を起こした上で置鍼。10分後、再度、得気を起こすため鍼を回転(合計25分)

     鍼刺入深度;10mm~20mm(身体部位に応じて)

     胚移植前後に鍼治療

     (移植前)内関・地機・太衝・百会・帰来 (移植後)足三里・三陰交・血海・合谷・(耳鍼)

結果:鍼治療群 80名中34名(42.5%)、対照群 80名中21名(26.3%)の臨床妊娠確認(p=0.03)

鍼治療はART後の妊娠率を改善するために有用なツールであると報告

 

 鍼療法と生殖補助技術~コクランライブラリー2013ー~

※コクランライブラリー:世界中で実施されている治療や予防に信頼性ある論文を評価し、医療関係者、医療政策決定、消費者の意志決定に供するために収集されたデータのことです。随時、そのデータは更新されています。

論文検索エンジン(9つ、開始から2013年7月まで)から情報を入手

Cheongらが、ARTを受ける患者の鍼治療のエビデンスを上記よりメタアナリシス(MA)によりまとめたもの

※メタアナリシス:複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析すること。またそのための手法や統計解析のことです。

20件のランダム化比較試験を選択

鍼治療と対照群の比較

 ・胚移植時(14試験 3632例) 採卵時(6試験 912例)

 ・対照群;プラセボ鍼と無治療群に分かれる

 ・対象はすべて体外受精(IVF)患者

 ・排卵誘発、人工授精に対する鍼治療の効果報告はなし

評価:出生率、臨床妊娠率、継続妊娠率、流産率、副作用

主な結果:鍼治療群は無治療群と比較し生児出生率が有意に多かった
        偽鍼群との間に有意差はなかった

エビデンス:胚移植前後と採卵時の鍼のMAでは、
鍼治療による妊娠率と出生率向上、流産率の低下に関するエビデンスは十分に示し得たとは言えない

 

 体外受精を受けている女性の生児出生率に対する鍼治療と偽鍼治療の効果ーRCTによる検討ー

ウエスタンシドニー大学国立補完医学研究所(NICM・オーストラリア)の大規模RCT

対象:新鮮胚移植、顕微授精を受け、鍼治療を受けていない18~42歳の女性

オーストラリア、ニュージーランドの不妊センター16カ所で実施

研究期間:2011年6月~2015年10月末(フォローアップ期間 2016年8月)

比較:鍼治療群(424名)と偽鍼治療群(424名)にランダムに割り付け(平均年齢35.4±4.3歳)
    出生転帰のデータを取得できた809名(98.2%)で分析

主評価:生児出生率(数)

初回鍼治療:卵巣刺激ホルモン投与後6~8日目
 (治療部位)帰来、関元、気海、三陰交、血海が基本で、+中医診断に基づき選択した経穴;最大5経穴
 (治療方法)刺鍼後、得気を起こし25分間の置鍼 途中に再度、得気を得る刺激を加える

二回目鍼治療:①胚移植の1時間前 ②胚移植後
  ①帰来、地機、血海、太衝、関元、神門、内関、耳介部(子宮)
  ②百会、太渓、足三里、三陰交、内関、耳介部(神門)

対照群(偽鍼):Park鍼を用いて、経穴(ツボ)ではない部位に置く

結果:生児出生率=鍼治療群18.3%(74/405名)、偽鍼群17.8%(72/404名)
    両群間で有意差なし。

体外受精による不妊治療を行なう前後に鍼治療を受けても、生児出生率を高める効果は期待できない・・・?!

問題点:対照群に偶然にも胚盤胞移植が多かった。
     胚盤胞移植は新鮮胚移植に比較し妊娠率が高い(20~25%と30~60%との報告あり)

     偽鍼が非侵襲刺激で経穴に刺激を加えている
     もし期待できないというなら無治療群で比較するべきではないか
     日本では皮下に刺さない接触鍼や散鍼という技法もある

 

 胚移植の時期に行なわれる鍼治療~システマティックレビューとメタアナリシス~

※システマティックレビュー:臨床現場での疑問(クリニカル・クエッション)に対しての研究を網羅的に調査し、同質の研究をまとめ、偏りを評価しながら分析、統合を行なうことです。

RCTで行なわれた20件(2002~2018)を検討

アメリカ(4)、イタリア(3)、ドイツ(3)、オーストラリア(2)、ブラジル(2)、デンマーク(2),中国(2)、イラン(1)、イギリス(1)

サンプルサイズ:46~848名

評価:臨床妊娠率(20)、継続妊娠率(13)、出生率(14)

対照群のコントロール:無治療との2群(2)、偽鍼と無治療の3群(1)、偽鍼との2群(9)

治療方法:Paulus方式(7)、Paulus方式改良型(13)

治療のタイミング:胚移植前後(12)、胚移植前後+卵巣刺激(5)、胚移植前後+卵巣刺激+(または)黄体期(3)

偽鍼の種類:鍼を生殖点に関連しない場所に刺入(3)、非侵襲プラセボ鍼(6)

鍼治療と無治療;妊娠率(数)、出生率(数)は有意に高い、流産率(数)有意に減少

鍼治療と偽鍼治療:有意差はなし

これらの結果は異質性があった

有害事象が報告(5)吐き気、めまい、疲労感、眠気、胸痛、鍼の痛み、かゆみ

 

 不妊に対する鍼灸治療の現状と課題

【現状】

無治療と比較するとARTの補助治療として妊娠率や出生率に影響を与える可能性あり

偽鍼との比較では有意差なし

世界的にはエビデンスは未だ確率されていない

【今後の課題】

胚移植前後等の単回治療ではなく、日本で日常臨床で行なわれている一定治療を受けた場合の効果の研究が必要
 (加算効果・自然妊娠を望む患者さんへの効果など)

不妊治療にともなう心身のストレス緩和、採卵時の鎮痛効果、排卵誘発剤の副作用に対する対処、子宮や卵巣の機能改善による妊孕性の向上、他愁訴の健康管理などの効果を検討する(海外では検討している論文もある)

不妊に対する鍼灸治療の確立には多くの課題がある

 

 不妊症に対する鍼灸について聴講した研修会について3回にわたり書かせていただきました。

 現段階で様々な医学的観点から統計をとると効果的かどうかというエビデンスレベルについては鍼灸は低いという結果です。

 これはこれでしっかり受け止めるべき必要がありますが、まったく効果が無いということではなく、いくつかの医療機関では健康管理や妊娠率や出産率をあげ、流産率を少しでも低くするため鍼灸を取り入れていただいたり、鍼灸院と連携していただいているクリニックや病院もあります。

 人口や出産、結婚、仕事との関わり方、働き方は変化があるとしても、劇的に変わることはないと思いますが(コロナ渦では劇的に変化しましたが)、不妊治療に関する心身を取り巻く現状は、良くも悪くも変化するだろうと思います。
 そんな中、不妊症に関する社会状況も、その時々の社会情勢や政策により変化はあるにしても、この悩みを持つご夫婦がすぐに少なくなることは考えられません。

 最新の医療情報や社会情勢を踏まえながら、個人の開業鍼灸師としては、ご夫婦の天使ちゃんに出会いたいという願いの確率を少しでも高めるため、今後も不妊症にはチカラを入れて施術していきたいなと感じました。

 最後が一番長くなってしまいました。

 もし、妊活を行なっているご夫婦で鍼灸に興味のある方、カラダ作りに鍼灸を取り入れたいと考えられている方は、是非、ご連絡ください。ご相談承ります

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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不妊症に対する鍼灸最前線 聴講 ~不妊症の病態と東洋医学(鍼灸・漢方)が果たす役割

2020年12月15日 | 不妊症

 少し前になりますが、第51回現代医療鍼灸臨床研究会(令和2年10月25日)にて、「不妊症に対する鍼灸最前線」というテーマで講座がありましたので、オンラインライブで参加させていただきました。 の続き

 午前中の基礎講座は聴講できなかったのですが、聴講した分を3回に分けて学んだ点や私の意見等も書いていきたいと思います。

 

 第1話 専門鍼灸師が実践する有効な治療方法とは?」【シンポジウム】

 第2話 (本日)不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割【教育講演】

 第3話 不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー【基礎講座】
     ※聴講できませんでしたが資料より

 

第2話【特別講演】

不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割

 北里大学東洋医学総合研究所 漢方診療部

 松本レディース リプロダクションオフィス  森 裕紀子 先生

 

 鍼灸はカラダの外から経穴(ツボ)に刺激を与えることで気や血または津液を整える施術です。漢方薬はカラダの中から気や血を整えて、カラダを調整する治療です。ともにうまく患者さんのカラダに合致すると相乗効果を引き起こし、治癒力を高め合います。
 日本で漢方薬を処方できるのは医師であり、薬局でも販売することができます。私達、鍼灸師は基本的に漢方薬の処方や販売はできませんので、当院にご来院し漢方薬が必要あるいは希望する場合は、患者さんの状態に応じて漢方を処方していただける漢方専門医や、不妊症に詳しい漢方薬局を紹介させていただいております。

 病院で保険適応されるのは、袋に入った漢方エキス製剤であり、煮出して使用する生薬煎じ薬については出してくれる医院もありますが少ないのが現状です。そして、煎じ薬は保険適応外となります。

 

【森先生】

ー漢方薬ー

漢方薬は生薬を組み合わせたものであり、併用には注意が必要。

漢方薬にも副作用がある。

先生は、漢方エキス製剤でもお湯で溶いて服用するようにアドバイスしている。

先生のところでは、カラダの愁訴や腹診などの情報から「証」をたてる随証治療で漢方薬を選択している。

ー不妊症の漢方薬~よく使う漢方薬(例)ー

①当帰芍薬散、②桂枝茯苓丸、③加味逍遙散、④温経湯、⑤柴胡加竜骨牡蠣湯、⑥四逆散、⑦桂枝加竜骨牡蠣湯、⑧胃風湯、⑩補中益気湯、⑪八味地黄丸、⑫六味地黄丸、⑬芎帰調血飲

ー不妊症の原因別漢方治療(例)ー

②・③  多嚢胞性卵胞(PCOS)に効果的なことが多い。   
       駆瘀血剤になるので妊娠が確認されたら中止。

⑦・⑥  腹部の動悸やストレスの多い時。

⑪・八味丸  小腹不仁   ⑩  胸脇苦満

高プロラクチン血症は西洋薬が効果的。

曲直瀬 道三(戦国~安土桃山時代の医師)の「察証弁治啓迪集(さっしょうべんちけいてきしゅう)」の中に、「香附子を加えて血を増やす」と書かれており、産後の様々な症状によく使用する。

①夫婦生活が持てない、②卵管閉塞(ART適応)、③卵胞が育たない、④精子因子、⑤受精卵が育たない、⑥着床できない、について何例か症例を提示していただいた。

漢方治療により下痢が治った頃から薬の反応が良くなった例など、心身の調子を整えるだけで自然妊娠する例も多いのではないかと考える。

気を改善する漢方薬をよく利用する。

ー症例報告ー

ART、漢方、鍼灸を併用して妊娠に至った45歳女性を紹介。鍼灸では中条流の灸を中心に行なった。

ー漢方治療をいつまで継続するかー

北里大学東洋医学総合研究所に挙児希望を主訴に受診した109名の経過を検討。漢方治療を2年以上継続して妊娠に至った症例はなかった。

漢方治療においては約2年間が一つの区切りとなる可能性が考えられる。

(私の意見)
 クリニックでの不妊治療でも、鍼灸や漢方治療でも、”いつまで継続するか”ということはご夫婦にとって大きな問題だと思います。当院では、患者さんとお話しながら、”ご夫婦が納得がいくところまでお付き合いします”ということをお話します。
 年齢やご夫婦の環境や状況によって施術計画は異なってきますが、なかなか妊娠、出産まで至らない方とは、施術に関して相談しながら進めていきます。当院でも妊娠しやすいカラダ作りの鍼灸に関しては、今のところ2年以上継続されている方はおりません。

 そんな意味では、なるほどなと感じました。

ー不妊治療における漢方治療(先生の私見)ー

患者の心身のバランスを診て、足りないものを補い、余分であれば瀉す。

まず患者の訴えから判断。虚があれば、まずその虚から治療。

訴えがなければ所見から判断。 瘀血や血虚が多い。

何もない場合は腎虚と考え補腎する。

ー気をつけていることー

漢方治療のみで妊娠する人は多いが、効果を高めるためには養生は必要。

来院患者は晩婚化も手伝い、40歳を頂点とする山形のグラフになっている。

患者さんは自然妊娠にこだわって来院する方も多いが、35歳以上は妊孕性が急激に低下するため、漢方治療しながらもARTのタイミングを逃さないように必要情報を提供する。

不妊治療を行なうご夫婦は基本的に病気でない人が多い。治療の副作用や治療が長引くことによる気鬱など健康を損なわないようにすることが大切。

 

 森先生には漢方薬や治療方針を分かりやすく説明していただきました。特に不妊症の患者さんに対する考え方はたいへん勉強になりました。やはり漢方と鍼灸は患者の健康を回復するための車の両輪だよなーと思いました。

 鍼灸も漢方も不妊治療同様、継続するとなると経費もかかってきます。ここがネックではあるところなのですが、ご夫婦がはやく天使ちゃんと出会えるように、より効果的な方法を提案できればと思います。

 冒頭でお話しましたように、漢方薬も病院・医院で処方される製剤に関しましては保険適応となります。保険適応外のものは少し高価となりますが、生活習慣を整える生活(養生;食事、運動、睡眠、心のあり方の改善)を行なうことによりカバーできるところもあると感じますので、アドバイスさせていただきたいと思います。

 以上、長くなりましたが第2話を終了します。

 もし、妊活を行なっているご夫婦で鍼灸に興味のある方、カラダ作りに鍼灸を取り入れたいと考えられている方は、是非、ご連絡ください。ご相談承ります

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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不妊症に対する鍼灸最前線 聴講 ~専門鍼灸師が実践する有効な治療方法とは?~

2020年12月12日 | 不妊症

 少し前になりますが、第51回現代医療鍼灸臨床研究会(令和2年10月25日)にて、「不妊症に対する鍼灸最前線」というテーマで講座がありましたので、オンラインライブで参加させていただきました。

 午前中の基礎講座は聴講できなかったのですが、聴講した分を3回に分けて学んだ点や私の意見等も書いていきたいと思います。

 

 第1話(今回)専門鍼灸師が実践する有効な治療方法とは?」【シンポジウム】

 第2話 不妊症の病態と東洋医学(漢方・鍼灸)が果たす役割【教育講演】

 第3話 不妊症に対する鍼灸治療ー諸外国における臨床研究の現状と課題を中心としてー【基礎講座】
     ※聴講できませんでしたが資料より

 

第1話【シンポジウム】

1.女性不妊に対する臓腑経絡病証のアプローチ

 明治国際医療大学 はり・きゅう学講座  田口 玲奈 先生

2.不妊治療における中髎穴刺鍼の応用

 明生鍼灸院  木津 正義 先生

3.腹部・頸部圧痛改善による不妊症へのアプローチ

 アキュラ鍼灸院  徐  大兼 先生

4.腰仙部と下肢へのアプローチによる不妊症に対する鍼灸治療

 東京有明医療大学非常勤講師

 せりえ鍼灸室  小井土 善彦 先生

 

 上記の講師の皆様は、不妊治療をされている専門クリニックと連携あるいはクリニック内で鍼灸を実践されている先生方であり、そのあたりは私の理想とするところです。クリニックで連携するには、鍼灸が何に効果が期待でき、どのような効果を実際出せるのかを明示する必要があります。

 不妊症に限らず、病院やクリニックで鍼灸を実践されている所はカンファレンス等で、医療ベースの話の中で一人の患者をチームとして捉えていくことが必要であり、その環境の中で東洋医学の長所を活かしているのだろうと考えます。また、それが求められているのだと思いますが、それを実践されている先生方の話は貴重だと感じ参加しました。

 鍼灸院で妊娠しやすい身体づくりの施術を行ない、クリニックの不妊治療を実施する中で鍼灸治療期間中に体調が改善され妊娠、出産できた。これは当院でもよくあるケースです。クリニックでも、患者さん個人個人で詳細な診察を行ない、採卵や移植がうまくいかなかった場合は、様々な治療の工夫を行なっております。
 ここで考えなければいけないのは、鍼灸について何を目的に施術計画を行なうのか、そして、鍼灸は妊娠や出産という一大イベントを迎えるにあたり、どこに効果的に働いているのかを考えることです。

 患者さんの体調が良くなった!という満足度とともに、医学的にはどう妊娠に繋がったのか。
 また、20%~50%のご夫婦は不妊(妊娠を希望し、1年以上、夫婦関係があるにも関わらず妊娠に至らない状態)の原因が不明という報告がある中、この原因不明な部分の背後にあるものを改善できれば妊娠率や出産率が増加するのではないか・・・など考えるときりがありません。体調が改善しても結果が出ない場合も多くあります。

 だから様々な情報を取り入れ、自身の鍼灸臨床と照らし合わせ、少しでも参考になる情報があれば深掘りし、取り入れることができるものは取り入れていきたいと思っております。それが患者さんの利益にも繋がります。一組でも多くのご夫婦の笑顔を増やすための歩みです。

 

 さて、時間も経っておりますのでメモや記憶を辿りながら先生方の講義の中で得たものを覚え書きしておきたいと思います。自身の臨床の再考となることもございましたので収穫がありました。

 

【田口先生】

症例や研究結果を示していただきながら解説。

週1~2回の施術を3ヶ月間実施した症例では気血水スコア(寺澤先生作成)が有意に改善。とくに気虚・気うつ・気逆などが改善。

症例数は少なかったが37歳以上、37歳未満に分けて妊娠率を調査したところ有意とまでは行かなかったが、37歳以下では妊娠率向上の影響が示唆され。37歳以上では妊娠率には影響があったと思われるが妊娠維持が不能(流産)の例が多かった。

鍼治療の研究で血清の抗酸化力を調べた研究では、鍼治療を行なうと抗酸化力が増加し、生体の酸化ストレスを緩和させた。これは患者さんの不安を和らげ、気分の改善に繋がっていることが示唆。

また、これまでの研究から子宮内膜の肥厚やプロゲステロン濃度や卵巣血流の増加もみられらた。

症例を重ねて、鍼灸ではここまでできるよ、この状態は無理だよという適応と限界を明確にし最良の方法を追求する。

 

【木津先生】

鍼灸治療を1年以上継続しても妊娠に至らない18例、また胚移植を2回以上行なっても妊娠に至らない患者8例に仙骨の部分にある中髎穴刺鍼を行なったところ、前者で7例が、後者で4例が妊娠。後者では子宮動脈の血管抵抗も測定され有意に減少した。

中髎穴刺鍼は、子宮周囲の環境不良が疑われる症例の選択肢の一つであり、骨盤内臓器の循環改善が期待できる。

伊佐治の研究では、中髎穴刺鍼で男性の精子運動率が増加と報告。精漿中のPSAの値が増加しており、交感神経を介して前立腺の血流に良好な変化が起きたことを考察。また精巣血流の測定では、血管抵抗値の減少、血流速度が増加しており、副交感神経を介しての血管拡張作用だと考察。

患者の年齢、基礎疾患、体型などの個人的背景は様々であり、運動、食事、睡眠などの生活習慣改善をあわせて指導し、妊娠しやすい体づくりを目指すことが重要。

不妊治療を行なう年齢が上がっている。40代の妊娠、出産希望者が増えているからこそ、そこに鍼灸の価値もあるのではないかと考える。

 

【徐先生】

自律神経、免疫作用、血液循環、これらは生殖に関することだけに作用しているわけではなく生命を維持するため全身的に作用している。その観点から、生活習慣や患者さん自身の人生を見直してみることも大切。

不妊治療では甲状腺機能低下や慢性子宮内膜炎など不妊に影響を及ぼす状態を見つけ治療を行なう。これ自体は大切なことだが、なぜそのような症状が出現するに至ったのかを見つめることも必要。

先生の考えとして、妊娠そのものはカラダという大きな観点からはオプション機能と考える。まず優先すべきは自分の命。命を守るだけの備えが自分のカラダにあるかどうか。妊娠は自己の防御機能により抑制され、妊娠できないということも一理あるのではないか(これに関しては私も同意見でございます)。

妊娠、出産希望のご夫婦は、専門クリニックや婦人科での検査は必須。卵管閉塞や無精子症でいくら鍼灸を行なっても効果はない。私達にできること、できないことを知って患者さんにアドバイス。

心のケアは鍼灸師が行なうだけでは不十分かもしれないので、必要な場合は専門家を紹介してあげることも方法の一つ。

提携している京野アートクリニックで反復不成功の患者に鍼灸を実施すると妊娠率向上、流産率低下がみられたが、まだ症例数が少ないため、今後も症例集積を行なう。

頸部の筋肉・筋膜の圧痛や緊張を取ることは、脳神経の活動が良好になり迷走神経の作用向上の効果も期待され、交感神経過緊張改善の観点からも重要と考える。

腹部、特にみぞおち付近の筋緊張をとることは太陽神経叢の作用からも重要と考える。

 

【小井土先生】

妊娠力の低下は出産力の低下。

統合医療の一部として鍼灸を積極的に取り入れている森本 義晴 医師(HORACグランフロント大阪クリニック 院長、院では受胎鍼を実施)は、森をみる専門家として鍼灸師に期待を寄せている。

41歳の方で、腸管子宮内膜症のある患者の症例を紹介。東洋医学的、現代医学的両面から患者を捉えていくことが必要。

妊娠を希望して四年の間に21回の採卵、11回の移植、途中、何度かの流産を繰り返し44歳で出産。戻した時の胚は鍼灸治療三ヶ月経過後に行なった採卵による胚であった。

施術中、鍼灸をしながら刻々と身体は変化する。これをしっかり確認する。

妊活期間が長くなるほど女性は精神的に参ってくる。そのメンタルヘルスを支えていくという点においても鍼灸は非常に素晴らしい施術である。

 

 まとめ 

不妊症に対する鍼灸に関してのエビデンスという点においては、まだ現在の評価システムでは信頼性には欠ける。

しかし、患者の背景は皆違い、原因不明の不妊が多い。その部分の可能性を広げ妊娠あるいは出産の確率を高めるため、鍼灸を取り入れている医療機関も存在する(今回も医療機関と連携する講師)。

カラダの表面に現れる筋緊張や反応を改善するために鍼灸を実施することで、局所的には子宮や卵巣の循環改善、全身的には酸化ストレスを軽減し、自律神経機能を良好にすることで、カラダ自体の生命の力を上げることができる。そこからの妊娠、出産。

鍼灸を行なっているからそれでいい!ではなく、できる限り生活習慣改善のアドバイスや養生をススメることが重要。

妊娠、出産を臨み一年以上妊娠できないご夫婦は必ず専門クリニックや婦人科での検査は受けて欲しい。

鍼灸でできること、できないことを施術者が自覚する。

鍼灸は男性の精子機能の改善にも可能性のある施術。

 

 以上、長くなりましたが第1話を終了します。

 もし、妊活を行なっているご夫婦で鍼灸に興味のある方、カラダ作りに鍼灸を取り入れたいと考えられている方は、是非、ご連絡ください。ご相談承ります

 最後までお読みいただき、ありがとうございます

 

二葉鍼灸療院(金沢)

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