京都の秋を彩るイロハモミジの紅葉にはまだ早いのですが、
山では一足早くハウチワカエデの色付きが見られます。
このカエデは、名前でも分かるように、葉の形が天狗の持つ羽団扇に似ています。
また、あまり一般的ではありませんが、メイゲツカエデ(名月楓)という呼び名もあって、
これは、秋の名月の下で紅葉の落ちるのが見られるという意味から、
紅葉のライトアップが流行っている今と比べると随分優雅な観賞法です。
ところでカエデは現在「楓」という漢字が使われていますが、これは本来マンサク科の「フウ」を意味し
本種を含むカエデ科とは植物学上、全く別の植物です。
大きな違いとして、カエデ科の葉が対生するのに対して、マンサク科フウ属の葉は互生します。
にも関わらず、この字が使われるのは、葉の形が似ていることによります。
これとは別に「鶏冠木」という漢字も使われますが、これは赤く紅葉した葉をニワトリの
鶏冠に見立てたものです。
語源をさらに日本の上代まで遡ると、万葉名では「かへるで」(蛙手)で、おそらくこれが転訛して
カエデとなったものと思われます。
(参考)「我がやどに もみつかへるでみるごとに 妹をかけつつ 恋ひぬ日はなし」
大伴田村大嬢(万葉集)
ハウチワカエデ<カエデ科 カエデ属>