四季の彩り

季節の移ろい。その四季折々の彩りを、
写真とエッセーでつづって参ります。
お立ち寄り頂ければ嬉しいです。

花吹雪

2021年04月02日 19時24分20秒 | 日々の歩み
 春彼岸を待たずに開花した桜も、弥生のつごもりに満開を迎え、卯月の初めに
花吹雪を散らしています。コロナウイルス禍の喧騒の中で春を先取りして咲いた桜も、
ゆったりと眺めることも叶わなかった千鳥ヶ淵緑道をはじめ、多くの桜の名所で染井吉野、
大島桜桜も含めて、いずれも見事に咲き切っていると感じます。

 横須賀走水の海の畔で春爛漫を演出した艶やかな桜も、今年は外出自粛要請もあり
人々の賑わいも、いまいちの状況の中で、静かに散り時を迎えていました。
走水の名が知られるのは、古事記や日本書紀に登場する日本武尊の東征の物語からです。
日本武尊が走水から上総に向けて出船した際、海が荒れて船を進めることができなくなり、
これは海神の怒りによるものだと考えた后・弟橘媛が、海に身を投げ神の怒りを鎮めたとの
伝説のある海辺でもあります。





なお、水源地の裏手の丘陵を挟んで走水神社があります。そこには弟橘媛の詠んだ
「さねさし相模の小野に燃ゆる火の 火中に立ちて問ひし君はも」
という歌碑が建っています。

走水で湧き水を汲みながら、細君共々桜吹雪を浴びて参りました。走水の水源地は
富士山の伏流水が、遠く三浦半島まで辿り、海辺に湧き出すといったロマンあふれる
伝説もあります。また、この水源は関東大震災の時にも枯れることなく、
今なお1日1,000m3の供給能力を持っているとのことです。

 この海辺の染井吉野、大島桜等は咲き満ちて、一斉に花吹雪のときを迎えておりました。
海辺の芝生の園を覆いうす紅に染める桜のトンネルも圧巻ですが、花吹雪が海に向かって
逆巻きながら舞う様。そこには花の命が秘める情念の凄さを、今更ながら感じさせられた次第です。



 その折の感慨等を織り込み、花吹雪に寄せて短歌を即興で詠ってみました。
なお、写真は走水の海を背景に咲き満る桜と、周辺の景観をデジイチスケッチしたものです。
    ☆ 咲き満る花も秘むるや情念の 想いのたけを散り際にみせ
    ☆ ゆく春の愁いとどめし花吹雪 海に向いてなおも逆巻く
    ☆ 走水さくら逆巻く花いかだ 憂い載せるも 寄せ浪静か
    ☆ 散る花を浮かべ逆巻く走水 憂いの春も つつみ連れゆく
    ☆ 花びらで埋め尽くさんや走水 コロナの春の記憶刻みて
    ☆ 花いかだ浮かべ曳きゆく走水 弟橘媛も幻にたつ
コメント (2)
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