学校教員の働き方改革は急務である。働き方改革が進まなければ、教員数が不足して労働条件が悪化し、経験豊富で力のある教員が別の職種に流出する。すでにこの状況は各地で現実に起こっており、その結果、子どもたちによい教育機会や安全安心な環境を提供できず、保護者たちの不安は高まり、国家社会は次代の見通しに現実感をもてなくなり始めている。教員の働き方改革は各地で関係者の努力により徐々に進んでいるが、地域差・学校差が大きい。私は教員養成の現場で働く者だが、数多くの学生の意見や判断を見聞きする中でわかるのは、働き方改革の地域差・学校差が確実に学生を不安にさせており、そこに事実もデマも誇張も混じった虚実が入ってきて学生たちを動揺させ、学生たちの教員志望の気持ちを揺さぶっている。各地域・各学校の努力に頼ったこれまでの取り組みを超えて、全国・全学校の働き方改革をさらに加速させる必要がある。そのためには国の動きが重要になってくる。
全国の改革を加速するには、どうしても働き方改革の法的根拠の一つである給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の再検討抜きでは話にならない。2019年の改正時に導入された変形労働時間制は抜本的な働き方改革につながらなかった。実態調査や採用試験前倒し案などでお茶を濁す状況が続いていたが、今年度の教員採用試験の状況を踏まえて、やっと国会政党や文部科学省が具体的な動きを見せ始めた。
教育新聞20221118記事(自民党令和の教育人材確保に関する特命委員会11/16第1回会合+同委員長インタビュー)
教育新聞20221212記事(給特法のこれからを考える有志の会12/12院内集会)
教育新聞20221214記事(自民党令和の教育人材確保に関する特命委員会12/14第2回会合)
yahooニュース20221215読売新聞(文科省有識者会議開催12/20初会合予定)
どうしてもせざるを得ない時間外労働が教員の仕事に存在するのは事実である。給特法を改正するのであれば、調整額と手当の出し方を現状を改善するために見直し、適切に保障できるようにすることがまず必要である。そして、手当や調整額の見直しが同時に、長時間労働の改善と教育目的の達成の両方に寄与する仕事量の見直しにつながるようにしなければならない。少なくとも、2021年10月の埼玉地裁の教員長時間労働裁判のような判決が必然的に導かれるような現状を変えられるように、改正しなければならない。ただし、教員の働き方改革は給特法改正だけでは終わらない。さらに進んで、労働条件や働き方そのものを幅広く見直すことを法的に支える改革案が望まれる。
給特法改正の問題だけだと、教員調整額の引き上げや時間外手当の給付有無が目立った論点になりがちだが、調整額の引き上げだけでは長時間労働を容認することになりかねないし、予算が十分でない場合は手当の不払いや勤務時間の過少報告の強要などの問題状況を誘発することにもなりかねない。そんなことでは、現在最も解決すべき問題である「ブラック」イメージを払拭することはできない。調整額引き上げだけ、時間外手当給付だけ、の単独の手立て、つまり給特法改正だけでは解決できない。2019年の給特法改正時に両院で附帯決議が出たが、給特法改正だけでなく、より広い範囲で教員の労働条件に関する法的・行政的な再整備が必要だろう。
私は、教員の働き方改革を通して、外注できることはきちんと連携協働の仕組みをつくって外注し、外注できないことは早番・遅番のような教員同士の分担・連携協働の仕組みを整えて、その中で物事を進めて行けるようにすることが重要だと思っている。教育の仕事は、9時5時できっちり終わることができるようなものではない。このことを前提とすると、そもそも、教員が早朝から夜遅くまで一人で全部対応するような仕組みを改めなければ、教員の長時間労働問題はいつまでも解決しない。しかし、外注できない仕事もあるし、外注すべきでない仕事もある。外注することが子どもたちの教育環境の質を下げることにつながってはいけない。外注できる仕事なら、教育の質を保障するために教員と他職種・多様な人々とが連携協働できる仕組みが必要だし、教員がしなければならない外注できない仕事なら、教員同士が連携協働できる仕組みが必要である。早朝から教員が学校で子どもたちを出迎える必要があるのなら、早番の制度を整えるべきである。夕方から暗くなるまで部活動や補習を教員が世話する必要があるなら、遅番の制度を整えるべきである。早番・遅番の教員が情報共有してスムーズにバトンタッチできる仕組みが必要である。
このような視点からの教員の働き方改革は、現場や行政だけの問題ではない。教員の長時間労働は、教育に関わることすべてを教員が処理すべきと考えてきた、教職の専門性の考え方そのものが引き起こしたと考えることも可能である。そういう考え方には、これまでの教育学や教員養成のあり方が深く関わっている。教育学や教員養成もまた、教員の働き方改革に対する責任を重く受け止める必要がある。
全国の改革を加速するには、どうしても働き方改革の法的根拠の一つである給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の再検討抜きでは話にならない。2019年の改正時に導入された変形労働時間制は抜本的な働き方改革につながらなかった。実態調査や採用試験前倒し案などでお茶を濁す状況が続いていたが、今年度の教員採用試験の状況を踏まえて、やっと国会政党や文部科学省が具体的な動きを見せ始めた。
教育新聞20221118記事(自民党令和の教育人材確保に関する特命委員会11/16第1回会合+同委員長インタビュー)
教育新聞20221212記事(給特法のこれからを考える有志の会12/12院内集会)
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どうしてもせざるを得ない時間外労働が教員の仕事に存在するのは事実である。給特法を改正するのであれば、調整額と手当の出し方を現状を改善するために見直し、適切に保障できるようにすることがまず必要である。そして、手当や調整額の見直しが同時に、長時間労働の改善と教育目的の達成の両方に寄与する仕事量の見直しにつながるようにしなければならない。少なくとも、2021年10月の埼玉地裁の教員長時間労働裁判のような判決が必然的に導かれるような現状を変えられるように、改正しなければならない。ただし、教員の働き方改革は給特法改正だけでは終わらない。さらに進んで、労働条件や働き方そのものを幅広く見直すことを法的に支える改革案が望まれる。
給特法改正の問題だけだと、教員調整額の引き上げや時間外手当の給付有無が目立った論点になりがちだが、調整額の引き上げだけでは長時間労働を容認することになりかねないし、予算が十分でない場合は手当の不払いや勤務時間の過少報告の強要などの問題状況を誘発することにもなりかねない。そんなことでは、現在最も解決すべき問題である「ブラック」イメージを払拭することはできない。調整額引き上げだけ、時間外手当給付だけ、の単独の手立て、つまり給特法改正だけでは解決できない。2019年の給特法改正時に両院で附帯決議が出たが、給特法改正だけでなく、より広い範囲で教員の労働条件に関する法的・行政的な再整備が必要だろう。
私は、教員の働き方改革を通して、外注できることはきちんと連携協働の仕組みをつくって外注し、外注できないことは早番・遅番のような教員同士の分担・連携協働の仕組みを整えて、その中で物事を進めて行けるようにすることが重要だと思っている。教育の仕事は、9時5時できっちり終わることができるようなものではない。このことを前提とすると、そもそも、教員が早朝から夜遅くまで一人で全部対応するような仕組みを改めなければ、教員の長時間労働問題はいつまでも解決しない。しかし、外注できない仕事もあるし、外注すべきでない仕事もある。外注することが子どもたちの教育環境の質を下げることにつながってはいけない。外注できる仕事なら、教育の質を保障するために教員と他職種・多様な人々とが連携協働できる仕組みが必要だし、教員がしなければならない外注できない仕事なら、教員同士が連携協働できる仕組みが必要である。早朝から教員が学校で子どもたちを出迎える必要があるのなら、早番の制度を整えるべきである。夕方から暗くなるまで部活動や補習を教員が世話する必要があるなら、遅番の制度を整えるべきである。早番・遅番の教員が情報共有してスムーズにバトンタッチできる仕組みが必要である。
このような視点からの教員の働き方改革は、現場や行政だけの問題ではない。教員の長時間労働は、教育に関わることすべてを教員が処理すべきと考えてきた、教職の専門性の考え方そのものが引き起こしたと考えることも可能である。そういう考え方には、これまでの教育学や教員養成のあり方が深く関わっている。教育学や教員養成もまた、教員の働き方改革に対する責任を重く受け止める必要がある。