長い間が空きましたが、テキスト第4巻の紹介を進めます。
テキスト第4巻第1部は「道徳教育の基本」について解説しています。第1部の前半で基本的方向性に関する学校道徳教育の目的や歴史をおさえ、後半では道徳科授業の内容・方法に関する基本的事項をおさえるように構成しています。
具体的には、第5~9章では、道徳科授業のつくり方を順次解説しました。第5章では、学校の教育活動全体を通した道徳教育の中の道徳科授業、という考え方を示しています。1時間の道徳科授業の指導案を編成することを想定しているので、先に授業の主題設定の基本的方法を解説していますが、主題設定には、取り扱う道徳的価値そのものを体系的に理解し、年間指導計画や単元(ここでは一定の目標・内容に基づく教育活動のまとまりを単元と呼んでいます)のなかの1時間として計画することに留意できるように解説しています。
第6章では、児童・生徒理解(児童観・生徒観)から出発する道徳科授業を目指して、児童期・青年期初期(思春期)における道徳性の発達をどのように理解し、授業づくりにどのように反映させるかについて解説しています。道徳性の発達については、幼児期からの発達を踏まえて、コミュニケーション能力や認識能力の発達との関連から考察しているのが特徴です。道徳性の発達に応じた授業づくりについては、コールバーグのモラルジレンマ授業の理論を基盤にしました。
第7章では、道徳科授業にかかわる教材研究の視点や方法について考察しています。教材の特性を生かさずにしゃくし定規に定型的な授業しても、考え議論する道徳科授業は実践できません。また、教材なしで日常生活だけを題材にして授業しても、広く深く考え議論することは難しいと考え、章の内容を構成しました。
第8章では、授業展開をどうやって計画するかについて考察しています。授業段階についてはいろいろな事例がありますが、ここでは最もスタンダードな導入・展開・終結の意味をきちんとおさえて計画できるようにしています。また、道徳科授業の展開を考える上で最も重要なものは児童生徒の活動だと考え、そのための考え方を3つ提示しています。さらに、板書案についても基本的なことを解説し、ノートに写すための板書ではなく児童生徒が考え議論するための板書を目指すことを提示しています。そして、附録として、恐縮ながら私がつくった指導案もつけました(研究用として扱ってください)。第4巻で論じていることを具体的な指導案に落とし込むとこうなる、という例で、あくまで本書の学修を助けるための資料です。
第9章では、道徳科授業の評価について解説しました。正直言ってまだ結論が出ているとは思えない領域ですが、検討しないわけにはいかないので、最低限これだけはおさえたいというところを説明しています。道徳科評価における最低限の観点として選んだのは、「自律的思考」と「多面的・多角的視点」、「自分自身との関わり」です。なお、私の提案では、「多面的・多角的視点」は「自律的思考」の高次なものとして段階的に関連づけました。
以上の通り、初学者向けの限界のある内容ですが、テキスト第4巻第1部は、目的から指導案の書き方までを通して道徳教育の理論と方法を考察するように構成しました。初学者はもちろん、新指導要領または2015年の道徳科設置以降の道徳授業の基本を整理しておきたい人にも、ぜひ参考にしていただければ幸甚です。
白石崇人『教育の理論④道徳教育の理論と方法―道徳を考え議論するために』Kindle、2022年。
第1部 道徳教育の基本
第1~4章 [前略]
第5章 学校の教育活動全体の中で道徳教育を計画するには?
1.主題に基づく学習指導案
(1)日時・場所・学級に応じた主題設定
(2)主題設定の基本
2.価値内容の理解と項目の体系性
(1)主題と価値内容の理解
(2)内容項目の体系性
3.年間指導計画・単元のなかの道徳指導案
第6章 発達に応じた道徳教育とは? ―児童・生徒観に基づく指導を目指して
1.児童生徒の実態(児童観・生徒観)に基づく指導案
2.道徳性・社会性の発達段階―幼児・児童期を中心に
(1)発達とは?
(2)児童期の道徳性・社会性の発達
(3)思春期における道徳性・社会性の発達
3.道徳性発達を支援する授業
(1)コールバーグの道徳性発達理論
(2)モラルジレンマ授業
第7章 道徳教育では何をどう教えるか? ―教材・活動観に基づく指導を目指して
1.道徳科指導案における教材観
2.道徳教育の教材
(1)道徳科の教科書
(2)読み物教材と生活経験に関わる教材
3.道徳教育の教材研究・開発
(1)道徳教材は何のためのものか?
(2)道徳教材の研究ポイント
(3)教材開発のポイント
4.教材研究と授業展開
(1)小学校低学年教材「かぼちゃのつる」を事例として
(2)小学校中学年教材「大切なものは何ですか」を事例として
第8章 道徳科の授業をどのように展開させるか?
1.導入・展開・終結
(1)展開・終結部の布石としての導入部
(2)考え、議論する段階的な展開部
(3)教師でなく児童生徒がまとめる終結部
2.子どもの反応を予想した計画
(1)台詞集的な教授・学習過程を避ける
(2)教材を読み、理解を深め、共通理解する
(3)考察を深めるための話し合い・ワーク
3.多様な板書
附 録 道徳科学習指導案(例)
第9章 道徳教育をどう評価するか?
1.道徳科の評価に関する基本的考え方
2.道徳科の評価規準の考え方
テキスト第4巻第1部は「道徳教育の基本」について解説しています。第1部の前半で基本的方向性に関する学校道徳教育の目的や歴史をおさえ、後半では道徳科授業の内容・方法に関する基本的事項をおさえるように構成しています。
具体的には、第5~9章では、道徳科授業のつくり方を順次解説しました。第5章では、学校の教育活動全体を通した道徳教育の中の道徳科授業、という考え方を示しています。1時間の道徳科授業の指導案を編成することを想定しているので、先に授業の主題設定の基本的方法を解説していますが、主題設定には、取り扱う道徳的価値そのものを体系的に理解し、年間指導計画や単元(ここでは一定の目標・内容に基づく教育活動のまとまりを単元と呼んでいます)のなかの1時間として計画することに留意できるように解説しています。
第6章では、児童・生徒理解(児童観・生徒観)から出発する道徳科授業を目指して、児童期・青年期初期(思春期)における道徳性の発達をどのように理解し、授業づくりにどのように反映させるかについて解説しています。道徳性の発達については、幼児期からの発達を踏まえて、コミュニケーション能力や認識能力の発達との関連から考察しているのが特徴です。道徳性の発達に応じた授業づくりについては、コールバーグのモラルジレンマ授業の理論を基盤にしました。
第7章では、道徳科授業にかかわる教材研究の視点や方法について考察しています。教材の特性を生かさずにしゃくし定規に定型的な授業しても、考え議論する道徳科授業は実践できません。また、教材なしで日常生活だけを題材にして授業しても、広く深く考え議論することは難しいと考え、章の内容を構成しました。
第8章では、授業展開をどうやって計画するかについて考察しています。授業段階についてはいろいろな事例がありますが、ここでは最もスタンダードな導入・展開・終結の意味をきちんとおさえて計画できるようにしています。また、道徳科授業の展開を考える上で最も重要なものは児童生徒の活動だと考え、そのための考え方を3つ提示しています。さらに、板書案についても基本的なことを解説し、ノートに写すための板書ではなく児童生徒が考え議論するための板書を目指すことを提示しています。そして、附録として、恐縮ながら私がつくった指導案もつけました(研究用として扱ってください)。第4巻で論じていることを具体的な指導案に落とし込むとこうなる、という例で、あくまで本書の学修を助けるための資料です。
第9章では、道徳科授業の評価について解説しました。正直言ってまだ結論が出ているとは思えない領域ですが、検討しないわけにはいかないので、最低限これだけはおさえたいというところを説明しています。道徳科評価における最低限の観点として選んだのは、「自律的思考」と「多面的・多角的視点」、「自分自身との関わり」です。なお、私の提案では、「多面的・多角的視点」は「自律的思考」の高次なものとして段階的に関連づけました。
以上の通り、初学者向けの限界のある内容ですが、テキスト第4巻第1部は、目的から指導案の書き方までを通して道徳教育の理論と方法を考察するように構成しました。初学者はもちろん、新指導要領または2015年の道徳科設置以降の道徳授業の基本を整理しておきたい人にも、ぜひ参考にしていただければ幸甚です。
白石崇人『教育の理論④道徳教育の理論と方法―道徳を考え議論するために』Kindle、2022年。
第1部 道徳教育の基本
第1~4章 [前略]
第5章 学校の教育活動全体の中で道徳教育を計画するには?
1.主題に基づく学習指導案
(1)日時・場所・学級に応じた主題設定
(2)主題設定の基本
2.価値内容の理解と項目の体系性
(1)主題と価値内容の理解
(2)内容項目の体系性
3.年間指導計画・単元のなかの道徳指導案
第6章 発達に応じた道徳教育とは? ―児童・生徒観に基づく指導を目指して
1.児童生徒の実態(児童観・生徒観)に基づく指導案
2.道徳性・社会性の発達段階―幼児・児童期を中心に
(1)発達とは?
(2)児童期の道徳性・社会性の発達
(3)思春期における道徳性・社会性の発達
3.道徳性発達を支援する授業
(1)コールバーグの道徳性発達理論
(2)モラルジレンマ授業
第7章 道徳教育では何をどう教えるか? ―教材・活動観に基づく指導を目指して
1.道徳科指導案における教材観
2.道徳教育の教材
(1)道徳科の教科書
(2)読み物教材と生活経験に関わる教材
3.道徳教育の教材研究・開発
(1)道徳教材は何のためのものか?
(2)道徳教材の研究ポイント
(3)教材開発のポイント
4.教材研究と授業展開
(1)小学校低学年教材「かぼちゃのつる」を事例として
(2)小学校中学年教材「大切なものは何ですか」を事例として
第8章 道徳科の授業をどのように展開させるか?
1.導入・展開・終結
(1)展開・終結部の布石としての導入部
(2)考え、議論する段階的な展開部
(3)教師でなく児童生徒がまとめる終結部
2.子どもの反応を予想した計画
(1)台詞集的な教授・学習過程を避ける
(2)教材を読み、理解を深め、共通理解する
(3)考察を深めるための話し合い・ワーク
3.多様な板書
附 録 道徳科学習指導案(例)
第9章 道徳教育をどう評価するか?
1.道徳科の評価に関する基本的考え方
2.道徳科の評価規準の考え方