■ディア・フレンズ
JFN系列全国ネット 2007年6月14日(木) 11:00-11:30
DJ:赤坂泰彦
GUEST:佐野元春
Playlist
荒地の何処かで / 佐野元春
All Right Now / Free
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■内容の一部を抜粋
・アルバム『COYOTE』のレコーディング・メンバー
「ドラムスが小松シゲル、彼はノーナ・リーブスというバンドに在籍しています。ベースが高桑圭、彼はグレート3ですね。現在カーリー・ジェラフという名前でユニットをやっています。そしてギターが深沼元昭、彼はプレイグス、今はGHEEE(ギー)という新しいバンドを結成してやってますね。この3人、プラス僕を含めて4人がサウンドの核を務めています」と元春。
・なぜ彼らを起用したのか?
「これまで僕はザ・ホーボーキングバンド、そうですね、約10年一緒にやっています。レコーディングにライヴに互いにいろんな景色を見てきましたね。そのバンドと10年目にして『THE SUN』というアルバムを作り、そのプロモーショナル・ツアーで東京の有楽町でコンサートをやったんです。その夜集まってきてくれたオーディエンスのおかげでもあるんだけれども、素晴らしいライヴだったんですね。レコーディング・アルバムとしての『THE SUN』、そしてそのとても充実したライヴ、この二つを経験して、ひとつ、なんかザ・ホーボーキングバンドとのコラボレーションでのよい帰結がそこにあったような思いになり、じゃあその次に自分は何をするのかと考えた時にとても当たり前の言い方になってしまうんだけれども、"Back To Basic"ですよね。自分がロックンロール音楽にはじめて触れた時のあのフレッシュな感覚に戻ろうと。そういう風に思って、僕よりずっとヤンガーなミュージシャンたちに集まってもらってレコーディングしました」と元春。
・いかにクリエィティブにスパークできるか
「まず、みんなやっぱり音楽好きですし、何よりも彼らは僕の音楽を多感な頃に聴いていた3人ですから、すでに佐野元春が何者かみんなわかってくれている。だからゼロからのスタートじゃなかったような気がするんですよね。僕がたくさん曲を彼らに持っていって、僕が演奏すると彼らがアプローチしてくる、そのうちに段々できてくる。本当にセッションから生まれてきたサウンドです。で、僕もコラボレーション好きです。しかし、コラボレーションというのは僕が考えるには年上も年下も関係ないです。僕も二十代の時に、例えば米国のミュージシャン、例えばザ・バンドのガース・ハドソンとか、UKのハモンド・プレイヤーのジョージィー・フェイムだとか、その当時自分よりもずっと年上のミュージシャンとコラボレーションしましたけれども、その時に感じたのは、もちろんリスペクトはあるけれども、両者がスタジオの中で出会ったんだったならば、いかにクリエィティブにスパークできるかというのが一番大事なことですね。だから、そうなると誰が年上で、誰が経験あって、誰が年下かなんて、僕にとって関係なかったですね」と元春。
・荒地の何処かで
赤坂「映像は浮かんで来てたんですか?」
元春「確かにありましたね。アルバム作る前にシナリオを書きましたから。誰かいい映画監督がいたらそのシナリオを映画化してもらってもいいと思うんだけれども、シナリオはありました」
赤坂「シナリオを書いてその中から曲をイメージしていったんですか?」
元春「コヨーテと呼ばれる男がいて、そしてコヨーテと呼ばれる男と過去関係があった女性がいて、そして道行き偶然に出会う彼よりずっと若い男なんだけれど、瞳の奥を見ると自分と同じような孤独を抱えてる男だったり、そうして幾つかの人物を設定してストーリーを組みました。結局、現代を荒地として捉えてみたんですね。現代を荒地として捉えてそこにコヨーテを往かせてみようというのが最初の僕の発想だった」
・Part.1/Part.2
「今回このアルバムでは、12曲入ってるんですけれども、Part.1、Part.2って分けたんです。Part.1に6曲、Part.2に6曲ですね。赤坂さんだったらわかるかもしれないけれど、僕たちブラック・ビニールの時代に育ってきて、A面とB面というのがあった。針を置いてA面だいたい20分ですよね。そして一息ついて、盤をひっくり返して、お茶かなんかすすって、また新しい気持ちでB面の最初から聴きはじめる。で、やっぱり20分。僕はあの流れる時間というのがすごい好きだったんです。自分の好きなソングライターや、自分の好きなバンドのレコードであれば20分聴いたらへとへとになっちゃうんですよね。今CD時代になって平気で全20曲とかね、70分とかあるけれども、僕はそんなに集中力続かないですね。コンピレーションだったりベストだったりしたら話は別だけれど、自分の好きなソングライターや、自分の好きなバンドの新譜を紐解いて聴こうという時には、そうですね、音がはじまってから20分くらいで集中力が切れちゃう。で、そんなこともあるので僕のほうから今回『COYOTE』も、このアルバム、Part.1、だいたい25分くらい、Part.2、また25分くらい、自分で区切りました。で、聴く人の自由に聴いていただいていい。今日はPart.2から聴こうと思って、Part.2、25分、僕のほうで起承転結つけました。Part.1も起承転結ついてます。だからそんなふうにして自由に聞いてもらえればなと思っています」と元春。
☆TOYOTA SOUND PORTRAIT
今日のトーク・セッションのテーマは「ラジオ・デイズ」。
・ラジオ・デイズ
赤坂「昨日リリースされたニュー・アルバム『COYOTE』の6曲目です、[ラジオ・デイズ]というタイトルの曲が収録されています。佐野さんはいつもサンプル盤を業界に配る時には"親愛なるDJたちへ"という手紙を必ず添えてくれます。今回もそうでした。ありがとうございます。[ラジオ・デイズ]、ラジオの現場にいる人間にとってこんなにうれしいタイトルはないですけどね」
元春「僕自身もメディア、テレビ、ラジオというのがあるとしたら、どちらかというとラジオが好きです。これまでラジオとの関わりをいうと'80年代には僕の番組を持っていました。僕の番組というか、僕がナビゲーションするね、番組があって。約6年間続いたその番組[モトハル・レディオ・ショウ]なんていう気取った名前をつけてましたけれども。これは本当にいい番組でね、思い出が一杯詰まってますね」
赤坂「そして今回、[ラジオ・デイズ]という楽曲を作られたわけですけど。佐野さんが学生の頃聴いていたラジオから流れていた曲っていうのは、リアル・タイムの曲に心の琴線が弾かれたわけですか? それとも'50年代とかの曲だったんですか?」
元春「小さい頃、多感な頃というのはいつも自分のそばにラジオがありましたね。そして気に入りのDJも何人かいました。記憶に残っているのは二人です。糸居五郎さん、そしてもうひとりが鈴木道子さんですね。糸居五郎さんはもちろん僕よりもずっとずっと大人のDJでした。で、かける曲もメイン・ストリームの曲じゃなくてR&Bとか黒っぽい曲をかけていた。しかももちろん彼の選曲でしたよね。で、独特の言い回しもあり、子供心にかっこいい大人だなってイメージしていた。実際お会いしたことはもちろんないんだけれども、喋り口から何か音楽への愛情も感じたし、またジェントルな紳士のようなね、そういう部分を子供心に感じとっていた。だから彼が流している曲というのは、もちろんチャートにも出てきてないし、ヒット曲ではなかっんだけれども、糸居五郎さんが推薦してくれる曲なら確かなんだろうって、僕はそう思ったんですね。そして聴いた。実際、その中から自分のフェイバリットなR&Bがたくさんあります。もうひとりの鈴木道子さん。これはやっぱり僕も思春期でしたからね、ラジオから流れてくる女性の声に震えましたよね。やはり大人の女性のしっとりとした声で、で、僕はね、はじめてリクエストをしてみようと思ったんです、その番組を聴いていてね。昔でいうところのリクエスト・カードですよね。ハガキにリクエストを書いて彼女に送って、読まれたらいいなと思ったら本当に読まれたんです。ですから人生ではじめて送ったリクエストが一番の気に入りのDJに読まれたということが、いい意味で本当に、それでますます音楽が好きになりましたね」
赤坂「ガッツポーズだったじゃないですか?」
元春「ええ。ベッドの中で転がりまわっていましたね」
赤坂「わかる、僕も経験あります。天下取ったような気持ちですよね(笑)。自分の名前が電波を通じて今一体何人の人が聞いたか、その時、佐野さんリクエスト曲なんだったんですか?」
元春「[ウッドストック]という曲。1970年でしたね。僕がちょっとませていたので、自分のお兄さん、お姉さんが聴く曲の中から選んで、また、やっぱり年上の女性DJに送るわけですから、彼女に気に入ってもらえない限りは。ええ。自分の好きな曲を送るっていうよりかは、彼女が番組の中で紹介していた曲の中から[ウッドストック]という曲をリクエストして、しかもハガキですから、もう週に何百通も来ることを考えれば、どうにか目立たなければと思い、ハガキの周囲を赤く塗りました。束ねた時にその赤が目立つように」
赤坂「なるほどね。きっと1枚1枚読んでる中で、あれ濃いぞ内容、と思ったんでしょうね。構成されててね(笑)。気持ちが伝わりますもんね、ハガキってね。読んでもらいたいっていう。さて今日の佐野さんからのリクエスト・ナンバーをお送りしましょう。これもフリーの[All Right Now]。これもいいですねぇ。僕も好きな曲ですけれど、イメージではどんなドライブですかねぇ?」
元春「これはなんかUKの田舎を走って行きたいですねぇ」
・『COYOTE』初回盤
DVDが付いてる。「君が気高い孤独なら」のミュージック・クリップとレコーディング・ドキュメントが入ってる。
・ライヴ・ツアー
「ライヴはもちろん予定しているんですが、今はまだ詳細が伝えられるだけ組んでないので、決まり次第また番組リスナーにお伝えしたいと思っています」と元春。
・リスナーへのメッセージ
「いろんなポップ・ミュージックが世の中にあると思うんだけれど、その中でどのレコードを選ぶのかは、もちろんリスナーのみなさんの自由ですけれども、この『COYOTE』というアルバム、僕の自信作ですのでちょっと頭の隅に入れといてください」と元春。
・人生のゴールに音楽の神様から何か賞をもらえるとしたら?
元春「コヨーテ賞?」
赤坂「ふふふ。コヨーテ賞。ちょっとバッドで。尖がっていただろうと」