3年ぶりに乗った韓国高速鉄道・KTXは、次なるステージに進んでいました。
日本でいえば東海道筋に当たるKTX京釜(キョンプ)線では、これまで在来線を活用して走っていた東大邱~釜山間に高速線が開業。「ほぼ」全線開業となりました。
新線上に新慶州(シンキョンジュ)・蔚山(ウルサン)、さらに既存線上にも五松(オソン)・金泉(キムチョン)の4駅が開業。乗客も伸びてきているというKTXですが、新たに設けられた中間各駅はどのような姿なのか?初日に蔚山、最終日に五松駅をのぞいてきました。
【蔚山駅】完全なる空港スタイルの駅
蔚山市は、日本の政令指定都市に当たる「広域市」。人口109万人を数え、現代自動車の工場を擁する企業城下町でもあります。在来線の京釜線は経由しておらず、もっぱら航空機や高速バスがアクセスを担っていましたが、KTXは蔚山を経由。一挙、国の主要幹線筋に位置することになりました。
蔚山駅は、在来線とは別位置に設けられましたが、「新蔚山」ではなく蔚山と命名。在来駅の蔚山は太和江に改称しており、蔚山市のKTXに賭ける期待が伺われるようです。
釜山駅からKTXに乗れば、わずか20分で到着。以前、地下鉄で30分、さらに市外バスで1時間かけて同じ道をたどったことがあるのですが、それを知る身には瞬間移動の感覚でした。
ホームの裏は、山の中です。
駅舎には広告の垂れ幕がかかり、まるで空港のよう。企業城下町らしく、現代自動車の車も展示されています。
駅を出ると、駅舎と並行してバスとタクシー乗り場があり、これも完全な空港スタイル。しかもバスは「リムジンバス」と称します。ここまで徹底して空港的な駅は、日韓ではじめて見ました。
駅左手には駐車場も多数用意され、マイカーも主要なアクセス手段を担います。広大な駐車場で利用者を獲得している、九州新幹線の新玉名駅を思い出しました。
一方の駅舎右手には、広大な開発用地が。開業2年半にして空き地のままとは、分譲に苦戦中なのでしょうか? いっそ中継駅と割り切り、駐車場にしてしまった方が喜ばれるかも。
そして駅正面には、巨大なクジラのモニュメントが なかなかの存在感を示します。工業都市として有名な蔚山ですが、かつては捕鯨の街として名を馳せました。今もクジラ料理が名物で、海辺にはクジラ博物館もあります。
このような駅のため、列車が発着する時間を外すと、駅は閑散。列車の時刻が近づくにつれてバスや車で人が集まり始め、ソウル方面の列車が出発する前にはスーツ姿のビジネスマンでホームが埋まりました。平日の夕方とあって、出張帰りの利用が多かったようです。
KTXの開業以降、ソウル~蔚山間の航空機は大減便となったそうですが、その実力をまざまざと感じた蔚山駅の1時間でした。
【五松駅】世宗市とともに発展を期する
旅行最終日の5月6日、ソウルから新型KTX山河(左)に乗って、五松駅を目指します。
釜山まで行かず、途中の東大邱駅で終着となる列車ですが、ほぼ満席の盛況。月曜日朝イチの出張族がメインで、朝の東海道新幹線のような雰囲気が漂っていました。
約40分で五松駅着。停車する列車は多くないのですが、案外、大勢の人が降り立ちました。
五松駅は、在来線の忠北線の駅に併設されています。五松駅は僕が10年前に留学していた忠清北道にあり、忠北線もよく利用していました。当時の五松駅は旅客扱いを休止しており、駅周囲も閑散とした雰囲気でしたが、今はビルが立ち並んでいます。
九州新幹線の筑後船小屋が、普通電車のみの停車から、一気に大阪直通新幹線の停車駅に躍進した駅として話題になりましたが、それをも超える躍進劇を見せる駅です。
「湖南高速鉄道第1-1工区建設工事」。
現在、在来線を利用している湖南線KTXも、高速新線の工事が進行中。五松駅は、京釜線と湖南線の分岐駅としても計画されています。全通の暁には、晴れて乗り継ぎターミナルになります。
駅舎に出てみれば、ガラン…。店舗もほとんどなく、蔚山駅とは比較にならないほど閑散としています。大きな駅舎は道の玄関口としての威信でもあるだろうし、将来的な需要増を見越しての投資でもあるのでしょう。
数少ない店舗の中には、チェーン展開している鉄道テーマカフェ「DEL TREN」があり、鉄道ファンには見逃せません。
駅前も、ガラン…。
高架下には駐車場も設けられていますが、蔚山ほどの利用はなさそうです。
五松駅は、韓国の行政機能移転先の都市である世宗市の最寄り駅でもあり、アクセス路線としてBRT(専用道を使ったバス高速輸送システム)が4月15日に走りはじめた…と、現地に行ってから知りました。
帰ってから調べてみれば、ソウル市内や日本の気仙沼・大船渡線のBRTと異なり、クリチバのような立体交差もある本格的なBRTとのこと。事前に知っていれば、乗る時間を確保していたのに!
現在のところは20分間隔、それもガラガラで走っているような状況でしたが、行政機能移転が進むに従って活況を呈していくのでしょう。
五松駅の忠北線ホーム。1日上下各9本の発着しかなく、こちらには人っ子ひとりいませんでした。僕の留学先だった忠州へのアクセスにも一番便利なので、いずれまたこのホームから列車に乗る機会もありそうです。
KTXの一期開業の際に設けられた光明、天安牙山は、年月とともに発展を続け、停車するKTXの本数も増えてきました。蔚山と五松は明暗を分けているように感じましたが、この先10年で、いずれも大きな変貌をとげることでしょう。
旅行の際には、折に触れてその経過を見ていきたいと思います。
日本でいえば東海道筋に当たるKTX京釜(キョンプ)線では、これまで在来線を活用して走っていた東大邱~釜山間に高速線が開業。「ほぼ」全線開業となりました。
新線上に新慶州(シンキョンジュ)・蔚山(ウルサン)、さらに既存線上にも五松(オソン)・金泉(キムチョン)の4駅が開業。乗客も伸びてきているというKTXですが、新たに設けられた中間各駅はどのような姿なのか?初日に蔚山、最終日に五松駅をのぞいてきました。
【蔚山駅】完全なる空港スタイルの駅
蔚山市は、日本の政令指定都市に当たる「広域市」。人口109万人を数え、現代自動車の工場を擁する企業城下町でもあります。在来線の京釜線は経由しておらず、もっぱら航空機や高速バスがアクセスを担っていましたが、KTXは蔚山を経由。一挙、国の主要幹線筋に位置することになりました。
蔚山駅は、在来線とは別位置に設けられましたが、「新蔚山」ではなく蔚山と命名。在来駅の蔚山は太和江に改称しており、蔚山市のKTXに賭ける期待が伺われるようです。
釜山駅からKTXに乗れば、わずか20分で到着。以前、地下鉄で30分、さらに市外バスで1時間かけて同じ道をたどったことがあるのですが、それを知る身には瞬間移動の感覚でした。
ホームの裏は、山の中です。
駅舎には広告の垂れ幕がかかり、まるで空港のよう。企業城下町らしく、現代自動車の車も展示されています。
駅を出ると、駅舎と並行してバスとタクシー乗り場があり、これも完全な空港スタイル。しかもバスは「リムジンバス」と称します。ここまで徹底して空港的な駅は、日韓ではじめて見ました。
駅左手には駐車場も多数用意され、マイカーも主要なアクセス手段を担います。広大な駐車場で利用者を獲得している、九州新幹線の新玉名駅を思い出しました。
一方の駅舎右手には、広大な開発用地が。開業2年半にして空き地のままとは、分譲に苦戦中なのでしょうか? いっそ中継駅と割り切り、駐車場にしてしまった方が喜ばれるかも。
そして駅正面には、巨大なクジラのモニュメントが なかなかの存在感を示します。工業都市として有名な蔚山ですが、かつては捕鯨の街として名を馳せました。今もクジラ料理が名物で、海辺にはクジラ博物館もあります。
このような駅のため、列車が発着する時間を外すと、駅は閑散。列車の時刻が近づくにつれてバスや車で人が集まり始め、ソウル方面の列車が出発する前にはスーツ姿のビジネスマンでホームが埋まりました。平日の夕方とあって、出張帰りの利用が多かったようです。
KTXの開業以降、ソウル~蔚山間の航空機は大減便となったそうですが、その実力をまざまざと感じた蔚山駅の1時間でした。
【五松駅】世宗市とともに発展を期する
旅行最終日の5月6日、ソウルから新型KTX山河(左)に乗って、五松駅を目指します。
釜山まで行かず、途中の東大邱駅で終着となる列車ですが、ほぼ満席の盛況。月曜日朝イチの出張族がメインで、朝の東海道新幹線のような雰囲気が漂っていました。
約40分で五松駅着。停車する列車は多くないのですが、案外、大勢の人が降り立ちました。
五松駅は、在来線の忠北線の駅に併設されています。五松駅は僕が10年前に留学していた忠清北道にあり、忠北線もよく利用していました。当時の五松駅は旅客扱いを休止しており、駅周囲も閑散とした雰囲気でしたが、今はビルが立ち並んでいます。
九州新幹線の筑後船小屋が、普通電車のみの停車から、一気に大阪直通新幹線の停車駅に躍進した駅として話題になりましたが、それをも超える躍進劇を見せる駅です。
「湖南高速鉄道第1-1工区建設工事」。
現在、在来線を利用している湖南線KTXも、高速新線の工事が進行中。五松駅は、京釜線と湖南線の分岐駅としても計画されています。全通の暁には、晴れて乗り継ぎターミナルになります。
駅舎に出てみれば、ガラン…。店舗もほとんどなく、蔚山駅とは比較にならないほど閑散としています。大きな駅舎は道の玄関口としての威信でもあるだろうし、将来的な需要増を見越しての投資でもあるのでしょう。
数少ない店舗の中には、チェーン展開している鉄道テーマカフェ「DEL TREN」があり、鉄道ファンには見逃せません。
駅前も、ガラン…。
高架下には駐車場も設けられていますが、蔚山ほどの利用はなさそうです。
五松駅は、韓国の行政機能移転先の都市である世宗市の最寄り駅でもあり、アクセス路線としてBRT(専用道を使ったバス高速輸送システム)が4月15日に走りはじめた…と、現地に行ってから知りました。
帰ってから調べてみれば、ソウル市内や日本の気仙沼・大船渡線のBRTと異なり、クリチバのような立体交差もある本格的なBRTとのこと。事前に知っていれば、乗る時間を確保していたのに!
現在のところは20分間隔、それもガラガラで走っているような状況でしたが、行政機能移転が進むに従って活況を呈していくのでしょう。
五松駅の忠北線ホーム。1日上下各9本の発着しかなく、こちらには人っ子ひとりいませんでした。僕の留学先だった忠州へのアクセスにも一番便利なので、いずれまたこのホームから列車に乗る機会もありそうです。
KTXの一期開業の際に設けられた光明、天安牙山は、年月とともに発展を続け、停車するKTXの本数も増えてきました。蔚山と五松は明暗を分けているように感じましたが、この先10年で、いずれも大きな変貌をとげることでしょう。
旅行の際には、折に触れてその経過を見ていきたいと思います。