『路上音楽』に出てもらった大宮の中野唖蝉坊さん
には話したろうか。私の家には、とんでもなギター・ポ
リッシュがある。
何と30年間、使い続けても、まだ現役なのだ。持ち
上げて振ってみても、まだ、中に十分な液物が確認でき
る。
メーカーは、モーリス。購入したのは、私が中学校1年
生の時。栃木県足利市の当時、まだ十字屋の近くにあった
コグレ楽器で。剥がれかけた紙のパッケージには600円と
ある。忘れもしない。当時、大したお小遣いもない私は、
同じモーリス社の1000円のポリッシュと迷ったが、こちら
を手に入れた。
あれから、約30年。その後に、ギブソン、ヤマハ、ギル
ド・・・。色々なメーカーのポリッシュを買ったが、こい
つだけは、まだ現役なのだ。こいつに触れると、もはや驚
きを越え、「恐怖」の気持ちさえ起きてくる。
肯定的に想像すれば、恐らく、当時のギター・メーカー
は、「600円で商品をご購入いただいて、3か月程度で
使い切っていただいて、次は・・・」などと、ビジネス的
な計算などしていなかった(あくまでも想像なのだが)。
「お客さまが楽器を拭くのによい商品を」というシンプ
ルな気持ちでつくっていたのではないか。
昨今は、社会の色々な分野にコンサルタントと呼ばれる
薄気味悪い人達が入り込んで、もっともらしいノウハウを
語っている。恐らく、100人のコンサルタントと呼ばれる
人達がいれば、まともな人達は3人位か。
せめて自分が長年連れそう楽器とその周辺のもの位、純粋
に使い手の事を思ってつくった職人や会社のものを使いたい。
このギター・ポリッシュと同じような出会いを期待したい。
路上音楽情報紙『ダダ』編集発行人・青柳文信