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山岳ガイド 江口正徳の仕事と日常

鬼ヶ牙という山について語ってみた

2020-06-11 11:11:19 | うんちく・小ネタ
鈴鹿山脈南部に位置し、割と頻繁に数多く出かけている鬼ヶ牙という山があります。


鈴鹿の岩と言えば先ず間違いなしに御在所岳の藤内壁周辺なのですが、この鬼ヶ牙はスケールこそ御在所岳に劣るものの面白さにおいては引けを取らない知る人ぞ知る山であり、僕の大好きな山の一つです。当方のプランでも今までに多くの方々に登っていただきましたが、500mに満たない(頂上が僅か488m)里山的な低山にも関わらず四方八方が岩で形成されていて「岩の殿堂」と言っても過言ではない岩山なのです。

そもそもこの鬼ヶ牙に興味を持ったきっかけは僕がまだ20代の頃に読んだ尾崎隆さんの著書「果てしなき山行」に鬼ヶ牙についての記述があってそれに惹かれたからに他ならない。
尾崎隆さんは1970年代~1980年代にかけて活躍した日本を代表する登山家(真の登山家、アルパインクライマー)で、僕にとって神的存在のまさにスーパースターなのである。
以前(2011年)にも当ブログにおいて記事を書いているので宜しければご一読くださいませ。
2011年5月のブログ記事 →→→「スーパースター」>

鈴鹿南部の山々に程近い地で育った尾崎隆さんが高校時代に本格的に登山を始め、以降頻繁に通うようになったのがこの鬼ヶ牙。その後経験を重ねてカラコルムの物凄い難しい山(ムスターグタワー南西壁)を登る為にトレーニング用の「道場」として毎日仕事帰りに寄ってトレーニングに励まれた場所。云わば氏にとっての原点とも言える山なのである。なのでそれほどの山なら是非とも行ってみたいと思ったのがきっかけでした。
詳しくは氏の著書にてどうぞ・・・


中公文庫 「果てしなき山行」 
表紙の写真の山がまさにムスターグタワー

ただそんなことも忘れていて随分と時も過ぎた2003年、とある山雑誌に「鬼ヶ牙」の記事が掲載されたことがあり、早速そこに紹介されていたルートを登りに一人出かけてみた。
花崗岩のスラブ主体の壁をロープソロで登って急な灌木帯、続いて上部の岩稜を抜けていくつもの山頂を越えて辿り着いた山頂。小さい山なのに随分と奥行きがあって登り応えがあったことを記憶している。初めてだったので余計にそう感じたのかもしれないが・・・。ただ頂上に辿り着いた時は、とても感慨深い思いとこんな小さな山にも関わらず大きな満足を感じた。
それは、「どんなに小さな山であっても、山を攀じ登って山頂に立つことは本当に楽しいなぁ~」という思いであった。


途中のスラブ壁


上部岩稜

コンディションによって易しく登れたり極端に難しくなったりがあるが、またここ2、3年の大雨被害の影響を受けて上部の灌木帯がゴッソリ剥がれてしまったり、ホールドだったところが崩壊してしまって以前より難しくなってはいるがそういう変化も受け入れながら頂上を目指して登ってこそバリエーションルートであり、本来アルパインというものだと思います。そしてそれを小さな山で行うから即ち「プチ・アルパイン」。そんな思いで楽しみながら登ってみられてはいかがだろうか。
という訳でとても思いの詰まった鬼ヶ牙について書かせていただきました。
既に登ったことのある方も二度、三度、未だ登ったことのない方は是非いかがでしょうか。

公募プラン →→→ 「鈴鹿 鬼ヶ牙 プチ・アルパインクライミング」








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