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ブログ版 シュプリッターエコー

北村美和子 個展 07 -vesper-

2007-12-13 02:13:47 | 美術
会期は明日12/13(木)までである。いや、もう日付も変わってしまった。いずれ当ホームページ「Web版」に別記者による評が掲載される予定であるが、このブログ版の記事をご覧になって一人でも多くの方が会場に足を運ばれることを願う。
北村美和子の絵は、鋭い。それは一種神経的な鋭さである。
わたしたちが何を美しいと感じるか、どんな光景にどうしようもなくひかれるか、これは、どうだろう、果たして「精神」の問題だろうか。
むしろわたしたち各々の感覚器それ自体に備わった傾向、きわめて生理的な傾向にわたしたちの精神があちらへこちらへ連れ回されている、そうではないだろうか。
「わたしは見たものしか描けないんです」と画家は幾分寂しげに話した。これは謙遜だろうか。それとも自嘲だろうか。だが彼女の作品に対してみればわかること。確かに彼女は「見たもの」を描いているのだとしても、しかし彼女は、わたしたちに見えないものを見ている。
いや、見えないというのは正確ではないかもしれない。見ているはずなのに、わたしたちの「精神」がそれを捉え返すときにはもう見えなくなっているもの、受容器としての感官が、何の束縛もなしに浴びるように受けている光、おそらくその光なのだろう、それが北村さんの画布を充たしている。
鈍らされることのない、神経のゲージも振りきれんばかりに享受されている光、しかし北村さんの描く光は、まぶしいというよりは、深い。目をくらます光量でなく、そこにあるのは、確かな光の質量である。そう、目はそうして、光の重さをも捉えているのだろう。
いわゆる「抽象」である北村さんの作品がこんなにわたしたちをゆさぶるのは、それがまさに感官の像だからではないだろうか。
感覚のイデア(原像)に、わたしたちの感官が対面してしまったという驚き。
画材を油絵の具に替えての再出発である。次の作品展が、そしてもう、ただただ待ち遠しい。
最終日12/13は16時まで。場所は神戸市中央区山本通り、ギャラリー島田deux(電話078-262-8058)。