数年前まで、わたしはプロの人形劇をみたことがなかった。たまたま誘われていったのが、人形劇団クラルテの『有頂天家族』だった。森見登美彦氏の小説が原作の作品である。知り合いが用意してくれたチケットだったので、とてもよい席でみられたことももちろんあるが、とにかく驚いたのはそのスケール感である。空間が実際のステージの容積を遥かに凌駕する。自在なのだ。もちろん演劇とはもともとそんなものである。しかし、想像を超えた迫力が目の前に現れたのだ。
さらにわたしを釘付けにしたのは、役者たちの身体能力である。この作品では、ひとつの見せ場としていわゆる「アヒル歩き」で、舞台セットが転回される叡山電車のシーンがあった。コサックダンスのように屈んだ姿勢で走り回る大勢の役者の動きが、とんでもなく美しいのだ。
この「アヒル歩き」は人形劇役者にとって修得すべき動きのひとつなのだという。彼らはほとんどの時間を「けこみ」の内側で屈んだままで演じるからだ。後でわかったのだが、他国の人形劇では、人形を立って扱うのが一般的なのだという。日本のような操演方法はとても珍しいのだ。そしてこの作品では、普段は表に出さないこの動きを、けこみを取り払い、あえて見せ場にしていたのだ。まさに人力の凄みである。
まあ、百聞は一見にしかず。
もしも興味を持たれたのなら一度舞台をご覧いただきたい。来年早々、馬場のぼる原作の人気シリーズ『11ぴきのねこどろんこ』が関西6ヵ所で上演される。
残念ながら高速アヒル歩きは、けこみの内側に隠れているが、ねこたちが動く度に、大人でも「うわ~っ」とみとれてしまうことうけあいなのである。
日程があえば、ぜひ。
さらにわたしを釘付けにしたのは、役者たちの身体能力である。この作品では、ひとつの見せ場としていわゆる「アヒル歩き」で、舞台セットが転回される叡山電車のシーンがあった。コサックダンスのように屈んだ姿勢で走り回る大勢の役者の動きが、とんでもなく美しいのだ。
この「アヒル歩き」は人形劇役者にとって修得すべき動きのひとつなのだという。彼らはほとんどの時間を「けこみ」の内側で屈んだままで演じるからだ。後でわかったのだが、他国の人形劇では、人形を立って扱うのが一般的なのだという。日本のような操演方法はとても珍しいのだ。そしてこの作品では、普段は表に出さないこの動きを、けこみを取り払い、あえて見せ場にしていたのだ。まさに人力の凄みである。
まあ、百聞は一見にしかず。
もしも興味を持たれたのなら一度舞台をご覧いただきたい。来年早々、馬場のぼる原作の人気シリーズ『11ぴきのねこどろんこ』が関西6ヵ所で上演される。
残念ながら高速アヒル歩きは、けこみの内側に隠れているが、ねこたちが動く度に、大人でも「うわ~っ」とみとれてしまうことうけあいなのである。
日程があえば、ぜひ。
(キヌガワ)