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美学に敗れた白鵬

2015-05-10 21:29:00 | スポーツ、オリンピック
 横綱の白鵬がいきなり小結の逸ノ城に敗れました(夏場所、初日)。
 立ち合いからがっぷり右四つになったとたんに、逸ノ城が右を抜いて突き落とし。
 ほとんど動きというような動きのない、むしろなにかの間違いのような、あっけない一番でした。

 いかに白鵬とはいっても、相手はマンモスのような怪物です。
 四つに組んでしまっては、ちょっと勝ち目がありません。
 立った瞬間に、ぼくのようなシロウトでも、あっ、やばい、と思わずうめいたのでした。

 白鵬もむろん危険は承知の上だったことでしょう。
 どんなワザでもやわらかくこなせる白鵬です。
 これまでどおり、その気になれば一蹴する方法はいくらでもあったのです。
 それでも四つにいきました。

 やっぱりそこには理由があったのだと思います。
 ぼくも、やばい、と思うその裏で、そうだな、これしかないな、と納得してもいたのです。
 そう感じさせるものが、かれの体が濃厚に発散していました。

 夏場所の初日です。
 横綱にふさわしい姿で堂々と受け止めたい、それがかれの心にみなぎっていた強い意志だったと思います。
 それがかれの美学です。
 美学を貫きたかったのです。

 しかし逸ノ城には美学などという余計なものへのこだわりはありません。
 勝機があればなんでもやるのが、このハングリーな若者の流儀です。

 近衛部隊の美しい大佐がゲリラと戦うようなものでした。

 白鵬のこの初日の敗戦は、今場所をとても難しいものにするでしょう。
 いつかどうしても来ることになる引退を一、二年早めることになるかもしれません。
 しかし近来まれに見るこの美しい横綱には、そうするほかなかったといえるでしょう。

 それが白鵬という男の宿命でもあるのです。

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