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ブログ版 シュプリッターエコー

坂東大蔵のお夏狂乱―澄んだ哀しさ

2007-06-17 19:09:02 | ノンジャンル
 坂東大蔵さんはお城の町の姫路を拠点に活動を続けている舞踊家です。ことし77歳になるという大ベテランです。大蔵さんが主宰する一門の「おどりの会」が姫路市文化センターで開かれました。

 大蔵さんは「お夏狂乱」(常磐津)を踊りました。お夏というのは、清十郎という恋人との仲を引き裂かれたために気がふれて、姫路の城下をさまよい歩いたと伝えられる商家の娘のことなのです。井原西鶴が「好色五人女」で採り上げて、近松門左衛門も人形浄瑠璃にしています。大蔵さんは坪内逍遥の台本(大正2年初演)をベースにして、もとは独舞と群舞で構成されている作品を、お夏の独り踊りに再構成して演じました。

 とてもかわいくて、そして哀切なお夏ができあがりました。お夏が清十郎との恋に破れたのは17歳か18歳のころのことといわれてますから、思えばその4倍もの年の、それも男性の舞踊家が踊ったわけですが、そんなよけいなことはいっさい考えさせない、ひたすらに哀しいお夏の世界が舞台の上に現れました。目に鮮やかな赤の衣装が、なんとういういしく見えたことでしょう。

 舞踊というのは時空を超える魔法ですね。

 もっとも大蔵お夏のその澄んだ美学は、大蔵さん生来のまっすぐな心がシンにあってのことでしょうね。計算高い世俗の風に染まっては(40年、50年、60年と、ふつうはどんどん染まっていってしまうのですが…)、あの透明な哀しみは出てきません。

 やっぱり、精神、なんですね。
 

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