CS朝日ニュースターに「週刊鉄学」という武田鉄矢が司会する番組がある。
先週のゲストは「資本主義崩壊への道」という本を書いた広瀬隆氏。
広瀬氏によると、今やアメリカの知識人たちの認識は資本主義は崩壊したというものであるという。
今回のマネーゲームの主役ウォール街を現す言葉は傲慢・強欲・腐敗である。
株の大暴落で一瞬にして莫大な資産を失ってしまったという話があるが、しかしお金そのものがどこかへ消えたわけではなく、必ず売り抜けに成功した者がいるはずで、そのお金はどこへ行ったか。
タックスヘイブン(租税避難地)に行っている。それはたいていかつての大英帝国の島々だ。
世界中でマネーゲームに翻弄されその波のために苦しんでいる人々がいるのにそんな人々を尻目にマネーを溜め込んで知らん振りしている連中がいる。
ヘッジファンド=シティーバンクという図式で、そこに関わっている者達は、時期が来たらまた強欲なマネーゲームを展開することをあきらめていない。
だからこそ規制が必要なのだ。
広瀬氏は投機資金が実際の原油や穀物価格に影響するようなシステムが間違っていると指摘している。
主流の場で物を言う人たちは、すぐ資本主義と社会主義を線引きしたがるが、その呪縛に落ちてはいけない。
理論で線引きするのではなく、実際の社会・経済活動の中で、共に生きていける方法は何かと知恵を出し合うのがこれからの道ではないか。
バングラデシュの経済学者でノーベル平和賞を受けたムハマド・ユヌス氏が語る番組を少し見たが、ユヌス氏が提唱するのが社会的ビジネス。
社会の役に立ち、人々の幸福に貢献するビジネス。
ユヌス氏はバングラデシュの裕福な宝石商の息子に生まれ、少年時代はボーイスカウトの活動に熱心だった。アメリカで経済学の博士号を取得し、母国の大学で経済学の教授をしていた。
社会主義か資本主義かではなく、母国の貧しい人々が自立していくにはどうしたらよいか考えて始めたのが無担保の「グラミン銀行」だ。
我先にと儲けを目指す経済活動はやがては行き詰る。
山菜取りや漁業を思い浮かべてみればいい。たくさんあるからといって根こそぎ取ってしまえば、すぐ資源は枯渇してしまう。
持続して収穫できるように必要な分だけ取る、それを人々はルールにしてきたはずだ。
一部の強欲で傲慢で腐敗した者達だけが富を独占すれば、貧しい人々は消費もできず、社会は回らない。普通の頭があればわかる理屈だが。
公正取引委員会はコンビニ最大手のセブンイレブン本部に独占禁止法違反を指摘、改善要求をした。
具体的には、賞味期限の迫った弁当の値引き販売を禁止しているのは本部の力を利用した圧力としたということである。
セブンイレブンの各フランチャイズ店に対する圧力はこれにとどまらないが、そんなニュースのあとに地元新聞「信濃毎日」はセブンイレブンの最高責任者鈴木敏文氏のインタビューを掲載している。
「危機乗り切る経営、成功体験と決別を」と、もっともらしいことを言わせているが、鈴木氏主導の成功体験は、フランチャイズ店のオーナーを絞り上げての成功であって、暴力団の上納金とよく似てる。
鈴木氏は長野県埴科郡坂城町出身だそうで、だからなのか。このニュースを知った後ではこんなインタビュー実に白々しいが。
そして昨日(6月3日)の同紙には「コンビニ店経営者が労組」の記事が。セブンイレブン加盟店経営者70人が都内で会合を開き、年内にも「セブンイレブン経営者ユニオン(仮称)」を設立することを決めたというもの。
弁当類の値引き販売の容認とともに本部と加盟店の利益配分見直しなどを求めていくという。
「根こそぎもうけ主義」で、鈴木氏は「セブンイレブンいい気分」なのか。
76歳の鈴木氏。私はチャールズ・ディケンズの「クリスマスキャロル」の主人公、強欲・冷酷の商人スクルージを思い起こす。
スクルージは改心して、心の幸福を得るが、あの小説には博愛の神が介在していた。鈴木氏には「ご利益の神様」しかないか。