木洩れ日通信

政治・社会・文学等への自分の想いを綴る日記です。

反中・反韓政策で失う平和と経済の果実

2014年11月11日 | Weblog

山本直哉氏の満洲引き揚げの記録「松花江をこえて」について、前回のブログで書いたが、山本氏の父上のように、にわかには「日本の敗戦」を認めたくない気持ちというのは、情報が正しく迅速に伝えられていない場合、必ず起こるもので、その一つが「ブラジル日本移民勝ち組」という歴史事実だ。
山本氏の父上の場合はその後すぐに起こってくるソ連軍の侵入や、現地満洲人達の反応から、いやでも現実を受け入れるほかなかったであろうが、「ブラジル移民達」の場合は戦場からはるか離れて、奥地に入植した場合はラジオや新聞などの情報に触れることがなく、「妄想」が膨らみ、終戦の伝達書を偽りだとして、それを伝達した元大佐を青年達が暗殺している。
一方、日本の敗戦を受け入れた「負け組」はラジオで情報を得ていて、日本の敗戦を知っていたし、ブラジルの教育を受けていた人々もその事実を受け入れた。
同じく日本からの移民でありながら、「勝ち組」と「負け組」との間には情報の有無だけでなく、心理的違いがあった。
「勝ち組」の人達にとってブラジル移民の選択はあくまで出稼ぎ感覚。それゆえかどちらかというと貧しい人が多く、これに対して「負け組」はブラジルへの永住を覚悟し、腰を据えて仕事にとりくみ成功した人達が中心を占めていた。
元々は日本で食べていけないという事情から日本からはるか離れたブラジルに活路を見出した人達という意味では勝ち組も負け組も一緒だったはずだ。
祖国日本を離れ、いわば日本から捨てられた人々が最も愛国的になるという「倒錯した心理」に陥っていく。
その愛国者達の精神のよりどころが「天皇崇拝」である。
100年余り前、貧しさから脱出するために移民した人たちの悲願は成功して日本へ帰ることだった。そんな日本人たちの心を支えた天皇と皇室。
勝ち組による負け組への襲撃・暗殺事件により15人が犠牲に。ブラジル警察は実行犯以外にも2000人もの日系人を逮捕・拘束した。
翻って今の日本はかつての経済の成功者からどんどん貧しくなっていて、人々のフラストレーションは隣国の韓国・朝鮮、中国に憎悪を膨らますことで解消することに向かっている。
もし日本が反中・反韓政策をとらず、経済的協力関係を築くことに向かっていたなら、この20年ほどの間にアジアはもっと中間層が厚い階層となり、平和の輪を作ることになっていただろうに。

コメント
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