神主の用いる道具、装束は様々ありますが、欠かせないものの一つに『笏(しゃく)』があります。
身近なところで言えば、雛人形で御内裏様の持っている物でもあります。外見は変哲のない木の板ですが、“作法に威儀を保つため”のものとして、神主は必ずこの笏を持って祭事をご奉仕します。 (※ただし女性神職は笏の代りに閉じた扇を用いています)
笏。上が少し幅広になった木の板です
祭典の様子。祝詞を奏上する傍らで祭員が笏を手にしています
“教科書などにある聖徳太子の絵には、当時持つ習慣が無かったはずの笏が描かれているので、本人の絵ではないのではないか” という議論があったのをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
笏は元々、唐の時代の中国で、「典儀(てんぎ)」と呼ばれる儀式の司会進行役が手元に持つ、メモやノートの役割をするものであったようです。
日本には養老3年(719年)幾つかの服制と共に渡来し、官人に笏を持つことが定められました。「笏」は本来「コツ」と読むのですが、「骨」を連想させるので日本では「シャク」と読まれるようになりました。
唐の時代、礼服姿の典儀。「典儀」という役割自体は今の祭事にもあります
今でも笏の裏面に式次第を書いた紙などを貼ることが認められていますが、そうでなくてももう1300年近く用いているものです。無しでは落ち着いてお祭りができないというのが正直なところですね。