11月19日(月) 展示会最終日、一応私はフリーの日という事で他の人よりゆっくり とギャラリーに行くことにした。ミラノ在住の菅沼さんという方が市内を案内してくれると言うので、油布さんを連れて4人でドォーモへ、まずドォーモ近くの「RITA」というお店で昼食を、此処は市役所の職員が社食で食べるお店で、自分が欲しいものを指示して装って貰うという、好きな物が目で見て選べるお店だ。一般の観光客はまず入ることは無い。1階はピザッテリアになっており、その奥の階段を2階に上がる穴場的なお店だ。私はソーセージとコロッケ、パスタにポテトを少々。ミラノのレストランに入ってもメニューが解らなくて困るのだ、此処なら自分の好きなものを指示して注文できるので助かった。昼食後、直ぐ近くのリナシェンテというミラノ一番のデパートでウィンドウショッピング、美味しいワインを1本買って外に出た。2時にはギャラリーに帰って、3時からのドォーモ前での路上パフォーマンスの準備をしなくてはならない。大体どのあたりでパフォーマンスをしようか下見をしてからギャラリーに戻った。
竹篭教室の教材、ゴザ、座布団、水桶、霧吹き等等、それに毛利さんに看板を書いてもらった。「私達は日本から来た竹細工の職人だ!」「これは売り物ではありません、一緒に作ってみましょう、作った物は差し上げます!」とイタリア語に約した物を書いて貰った。この看板を立てておけば、もし、警察が何か言ってきても大丈夫だろう。私は何も考えないで直ぐ行動しているように思われがちだが、これでも、万が一を想定して準備しているのである。
3時10分、いよいよドォーモに向けて出発である。道ですれ違う人や市電の中からみんなが「何事か?」と不思議な顔をして見ている。3人の作務衣姿の男が、竹やゴザを担いで歩いているのである。まるで、チンドン屋さんみたいな感じだ。その回りをテレビカメラがウロウロ回っている。 10分ほどでドォーモの横に到着。さー、いよいよ始めるぞ!少し緊張もある。通訳に引っ張り出された村山さんも少し心配そうである。パフォーマンスの通訳を急遽、楓ちゃんから村山さんに変えたのは、もし何か警察に捕まったり、トラブルがあった時、押しの強い村山さんに対応してもらうためだ。まだ、20歳の楓ちゃんには少し荷が重い!
ゴザを広げて看板を立て、私が篭を作り出すと直ぐに人が集まってきた。看板を見て「私もやりたい!」「私も!」と手を上げてくる。回りも見物人が何事か?と集まってくる。1回の竹細工教室で5人と決めていた。あまり多くなると収支が付かなくなる恐れがある。ギャラリーで教えている時とは、又違った反応である。ギャラリーには最初から竹に興味を持った人が来ているのだが、この路上パフォーマンスはまったく関係の無い一般の人達だ。
最初はやはり若い人たちがチャレンジしてくる。頭を使って、慣れない手を使って一生懸命である。教える私も慣れないイタリア語を使って必死である。でも、全員楽しそうだ。喜喜として初体験を楽しんでいる。2組目、3組目としている内に段々と私もペースが出てきた。途中、やはりポリスマンが2回ほど見に来ていたが何も言わなかった。やはり、看板を書いておいて正解であった。本人も体験に参加したそうな顔をして。 最後の4組目の時は通訳の村山さんもいなくなり、全くの通訳ナシで篭を作らせた。私が話したイタリア語はウノ(1)、ドゥエ(2)、トレ(3)、クワトロ(4)、オット(8)、デェストォラ(右)、シニストォラ(左)、この7文字だけである。その他は訳の判らない中途半端な英語と何故か?少しだけのスペイン語が混じる。でもそれだけでも、手振りと目線だけでコミニュケーションできるのだ。これは本当に嬉しかった。寒い日だったので4組の竹教室をしただけで一応終了したが、ドォーモからギャラリーに帰る時は全員が達成感にあふれた顔をしていた。本当に楽しかった。教室に参加したミラノの人達のなんとも嬉しそうな顔が目に焼き付いている。
テレビ局のディレクターも、「現地の人の本当に嬉しそうな反応が面白かった!」と。みんなで興奮冷めやらぬ内にギャラリーに戻って来た。やるべき事はすべて遣ったという感じだ。17時以降もギャラリーにも結構お客様が来ている。これまで四日間の間に来てくれた人が再入場してくる場合が多かった。19時過ぎまでバタバタして閉場。これですべて終了だ。
今日はみんなで打ち上げという事になっている。メトロでミラノ郊外のレストランに、此処は通訳の村山さんお奨めの店である。一昨年、昨年と続けて今回が3回目の来店である。全員で14名。どの顔も此処まで遣り遂げた満足感にあふれている。我々、4人とサポートの浜名さん、奈須さん、現地サポートの村山さん夫婦、通訳の楓ちゃん、悦子、毛利さんの息子の卓人、隼人そしてテレビスタッフの田中さん、左藤さん。本当にみんなで作り上げてきた「お祭り」であった。これまでの道のりと関わったすべての人に乾杯!