本日の高住神社の状況です。
◆晴れ
◆9℃
近頃、山野草の盗掘が起きています。
登山者や愛好家はもちろん、私たちも季節の風物として小さな草花を探すのが日常の楽しみのひとつなのですが、先日見つけた花が根ごと引っこ抜かれてなくなっていました。
岩場の隙間から生えていたので、掃除で引っこ抜くこともなく、シカの食害も考えられない場所。
あきらかに人為的な窃盗です。
まずひとつに、神社は公園ではありません。
植物を折ったり動物を捕まえたりしてはいけません。むしろ公園ですら禁じているでしょうし。
植物の稀少性に関わらず、「かわいい花だ。持ち帰って育てよう」などと軽い気持ちで摘んではいけません。
所有権の主張をしているわけではなく、モラルの問題です。
余談ですが、以前有名ホテルでの神前結婚式の奉仕をした際、従業員用トイレに「落書き禁止」と書かれていたのを思い出しました。
一流ホテルの関係者にそんな低俗なことをする人間がいるのかと落胆したのですが、悲しいかな、わざわざ警告を貼らないといたずらがやまないのが実情なんでしょう。
山のルールでいうなら「とっていいいのは写真だけ 残していいのは足跡だけ」そして持ち帰っていいのは思い出だけです。
こうした草花も自然に生えているから絵になり美しさが際立つのであって、あなたの家先では輝きません。
そして、動植物は子孫を残すために生きています。
花は植物の生殖器なのはご存知ですか?あなたにとって奇麗な花も、植物にとっては長い季節の間でわずかな時間を選び、その生涯をかけて子孫を残そうと懸命に花を咲かすのです。
決してあなたを愛でるために咲いているわけではありません。
木々岩々を覆うコケは保水力を貯えそこに根差す草花の蜜を集めにハチが飛び交い、地面に落ちた枯葉も分解者によって養分となりキノコ類を育て、それを餌とする昆虫を狙って小動物がうごめく。そしてそれら昆虫や小動物を採餌し繁殖するため、南方から長い距離を移動し鳥たちが飛来する。
すべてこうした生態系からできていて、我々人間は生態系の輪から外れながらも、知らず知らずに自然の恩恵を享受し生きているのです。
「俺ひとり採ったところで大した影響はなかろう?」・・・みんながその意識だったらどうなりますか?
植物を根絶やしにするのは簡単、けれど復元することは難しい。
私たちも境内環境を整えるため落ち葉掃きや草取りをしますが、参道や護摩焚き場など必要最低限の範囲でしかしません。草ボウボウを雑とみるか自然とみるか、街中の神社のように人工的な整然ばかりが美ではないと思います。自然との調和が自然界と人界の境である神社の持つべき本来の姿ではないかなと、それが私たちの心を豊かにしてくれると思っています。
山奥の神社で人が生活する以上、やはり自然に悪影響を与えてしまう部分も多々ありますが、人が住みやすくなるために自然を壊すのは間違いです。それに伴う史跡や建造物といった歴史や文化も守るべきだと・・・。
話が少し脱線しましたが、人の身勝手さを優先してはならないということです。
上の写真は急に生えてきたキノコ。アミガサタケの仲間かと思うのですが、盗掘が横行すると花期を楽しみにしている人たちのためにこうした写真もあげられなくなってしまいます。現に登山ブロガーや野鳥観察家の間では、本当に稀少なものはインターネットにアップしなかったり、場所を秘匿して載せる風潮になっています。私たちもそうした情報を共有しても発信しないよう心掛けています。盗掘のみならず人が殺到して踏み荒らすこと自体が悪影響だと思っていますので、そのあたりは観光誘致との兼ね合いもあって線引きが難しいところではあるのですが・・・
ただ、霊山たらしめる尊厳を保つことが我々神社の役目であり、人間の持つ敬虔さをうながすことで山での蛮行愚行を防ぐことになるのかなと考えています。
このブログを読んでいる方で、もし神社で動植物をつまもうとしている人を見つけたらダメですよと注意してください。いえ、この神社だけではなく英彦山全体でです。
何度も足を運びたくなるような神社にそして英彦山にするため、互いに啓発し協力し合い、継承すべきこの天然無垢な自然を、そして文化を、守ってゆきましょう。