竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

凧三角、四角、六角、空、硝子   芥川龍之介

2019-04-11 | 今日の季語


凧三角、四角、六角、空、硝子   芥川龍之介


凧は正月に揚げられることが多いことから、古くから春の行事とされてきた。三角凧、四角凧、六角凧、奴凧、セミ凧、鳥凧……洋の東西を含めて種類も形も多種多様だが、この時代のこの句、晴れあがった春の空いっぱいにさまざまな凧があがっているのだろう。名詞を五つならべて「、」を付した珍しい句だが、「硝子」とはこの場合何だろうか? 空にあがったさまざまな形の凧が、陽をあびてキラキラして見えるさまを、あたかも空に硝子がはめこまれているように眺めている、というふうに私は解釈する。また凧合戦で相手の凧の糸を切るために、糸に硝子の粉を塗って競う地方があるというけれど、その硝子の粉を指しているとまでは考えられない。私が生まれ育った雪国では、雪のある正月の凧揚げは無理で4、5月頃の遊びだった。上杉謙信などの武者絵の六角凧がさかんに使われていた。私の部屋の壁には森蘭丸を手描きした六角凧が四十年近く前から飾ってあり、今も鋭い目をむいて私を見下ろしている。掲句は大正5年、龍之介25歳のときの句だが、同じころの句に「したたらす脂(やに)も松とぞ春の山」がある。『芥川龍之介俳句集』(2010)所収。(八木忠栄)

少年期に千葉県野田市の母の実家へ良く行った
近くの関宿というところで大凧を揚げるのを観た記憶が鮮明に残っている
畳10畳の大凧も珍しない
太いロープに何人もの若い衆が附いてあげる
時にはおりからの風に乗って
人が何人も大空へ宙刷りになったりしたものだ (小林たけし)



【凧】 たこ
◇「紙鳶」(いかのぼり) ◇「凧揚げ」 ◇「凧合戦」 ◇「絵凧」 ◇「奴凧」 ◇「字凧」
細い竹を骨として紙をはり、糸をつけて風力によって空高く揚げる玩具の遊技。陽春の行事とするところが多い。凧は、もともと子供の遊びではなく、村々の年中行事で間の競技として行われた。

例句             作者

泣き虫は泣かせておきぬ凧 足立律子
萱山に凧あげて友なかりけり 大須賀乙字
凧一つ揚げて山河を眩しくす 木村敏男
住吉に凧揚げゐたる処女はも 山口誓子
連凧を揚げゐて二十世紀末 庄中健吉
茫々と平城宮址やいかのぼり 鍵和田?子(ゆうこ)
凧揚げの日がな一日沼の荒れ 岩出千代子
几巾きのふの空のありどころ 蕪村
新月といふほどのもの凧のへん 阿波野青畝
連凧の太白山を目指しけり 佐々木潤子


コメントを投稿