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冬薔薇を揺らしてゐたり未婚の指 日下野由季
この薔薇が真紅の大輪の薔薇だとすれば、未婚の指、には凛とした意志の強さが感じられる。やや紅を帯びた淡く静かな一輪だとすれば、その花にふれるともなくふれた自らの左手に視線を向けた作者の、仄かな心のゆらめきや迷いのようなものが感じられる。二十代後半の同年の作に〈降る雪のほのかに青し逢はざる日〉とある。雪を見つめ続けている作者の中に、逢いたい気持ちと共にひたすらほの青い雪が降り積もってゆくようだ。そう考えると、雪のように清らかな白薔薇なのかもしれない、と思ったりもするが、いずれにしても掲出句の、未婚の指、にはっとさせられ、冬の澄んだ気配がその余韻を深めている。『祈りの天』(2007)所収。(今井肖子)
侮れぬ棘の枯色冬薔薇 たけし
冬薔薇色のあけぼの焼跡に 石田波郷
冬薔薇墓碑に刻みし齢若く 京極杜藻
冬薔薇や賞与劣りし一詩人 草間時彦
一輪の冬ばら投げてフィギュア終ふ 小川濤美子
尼僧剪る冬のさうびをただ一輪 山口青邨
冬薔薇おや指姫のひそみゐる 角川照子
大寒の薔薇に異端の香気あり 飯田龍太
冬薔薇日の金色を分ちくるる 細見綾子
冬薔薇石の天使に石の羽根 中村草田男
逢うてまた別れを思ふ冬薔薇 木村敏男
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