里古りて柿の木持たぬ家もなし (松尾芭蕉)
柿 (秋の季語:植物)
渋柿 樽柿 さわし柿 干し柿 ころ柿 吊るし柿
甘柿 きざわし(木淡) こねり(木練)
熟柿(じゅくし) 木守・木守柿 串柿
季語の意味・季語の解説
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柿の原産地は中国と考えられているが、日本における栽培の歴史も古い。
日本の柿栽培は有史以前に始められていたらしく、古事記や日本書紀の中に記述が見られる。
柿は日本人の食生活・食文化に最も浸透した果物である。
晩秋、ある程度古くからある集落を歩くと、枝もたわわに実がなっているのを、あちらこちらで見かける。
柿には様々な種類があるが、口の中で渋み成分のタンニンが溶け出す「渋柿」と、タンニンが口の中でも溶けない「甘柿」の2種類に大きく分けられる。
このうち渋柿は、渋抜きをしてからでないと食べられないが、渋抜きの方法もいろいろある。
いくつか例を挙げてみよう。
・「樽柿」は、空いた酒樽に渋柿を納め、アルコール分によって渋みを抜いたもの。
・「さわし柿」は、柿を塩水につけて温めたり、焼酎を振りかけて何日か置いて渋みを抜いたもの。
・「干柿(干し柿)」は、渋柿を天日に干して渋みを抜いたもので、「ころ柿」「吊し柿(吊るし柿)」とも言われる。
いずれの方法も、日本人が大切に守っていきたい生活の知恵である。
一方、甘柿は木になっているうちに熟し、枝からもいですぐに食べられるため、「きざわし(木淡)」「こねり(木練)」などと呼ばれる。
なお、熟柿(じゅくし)は、よく熟れてやわらかくなった柿で、秋季の独立した季語として扱われることが多い。
また、収穫後に木の枝に一つだけ残された実は木守(きまもり)・木守柿(きもりがき・こもりがき)と呼ばれ、こちらは独立した冬季の季語として扱うのがふさわしい。
最後に、串柿とは、十個の柿に串を通してから干したもので、正月に橙(だいだい)とともに鏡餅に添える。
鏡餅を三種の神器の「鏡」、橙を「玉」、串柿を「剣」に見立てているらしい。
季語の用い方・俳句の作り方のポイント
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柿は古くから日本で栽培され、私たち庶民の食生活・食文化の中で重要な位置を占めています。
里古りて柿の木持たぬ家もなし (松尾芭蕉)
古りて=ふりて。古びての意味。
日本人は、渋柿から樽柿、さわし柿、干し柿などを作る生活の知恵を身につけ、また、渋柿を品種改良して甘柿を生み出すなどして、柿を庶民生活になくてはならない果物にしてきました。
そのためか、柿を季語に詠んだ俳句には庶民の生活感あふれる句も多いようです。
参考にしましょう。
まさかりで柿むく杣が休みかな (水田正秀)
杣=そま。きこりのこと。
バラードをかけ柿もぎを眺めをり (凡茶)
また、葉の落ちた木の枝になる柿の実も、皿の上の、控え目だけれど深みのある甘さを持つ柿の実も、心にしみるような秋のかなしみを胸に抱かせます。
しみじみとした一句を詠んでみましょう。
甲斐がねの入日まばゆし柿の照 (小島大梅)
甲斐がね=甲斐が嶺。
柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺 (正岡子規)
参照 http://haiku-kigo.com/article/170053696.html
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