蘊蓄cafe

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「コンピュータVSプロ棋士―名人に勝つ日はいつか」 (PHP新書)

2011年01月22日 | 書籍レビュー
[感想:★★★--:面白い]
「コンピュータVSプロ棋士―名人に勝つ日はいつか」 (PHP新書)
 昨年10月11日、正式な対局で将棋のプロが初めてコンピュータに敗れた。この本は、その対局がどのようなものであったのか簡単に解説している。それによると、コンピュータは対戦相手の清水女流王将に最適化され相当の自信を持って挑んだもののようである。どのような戦略をもって対戦するのかはコンピュータが判断するのではなく、カスタマイズした人間が与えるのである。清水女流王将も十分にコンピュータを研究しつくした上での対戦であった。それらがどのような着手に現れたのかが興味深い。


「私が一番受けたいココロの授業 講演編 与える者は、与えられる―。」

2010年05月03日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
 以前、囲碁棋士の梅沢由香里さんのブログで紹介されていたの「いのちのバトン」(志村季世恵)という本について書いたことがあるが、また、「私が一番受けたいココロの授業 講演編 与える者は、与えられる―。」(比田井 和孝・比田井 美恵 (著)、ごま書房新社)という本が紹介されているのを見かけた。このテの本は沢山でているし、書かれていることが当たり前だったりするので私はほとんど読まないのだが、梅沢さんが飛行機の中で涙が止まらなかったと書かれていたので、このGW中に読んでみたところ、これがヒット! 涙が止まらなかったというのは過大ではない。

 「やり方」の前に「あり方」が大事と簡明に説明しているが、語られていることは奥が深い。視点が変わりまスなぁ。他の人と同じことをしても「あり方」が違えば結果が違ってくる。

 なお、著者は、もう一冊「私が一番受けたいココロの授業―人生が変わる奇跡の60分」という本を出しており、本田宗一郎とディズニーランドの話は感動モノ。しかし、昨年出版された「私が一番受けたいココロの授業 講演編 与える者は、与えられる―。」の方が筆者の主張がより詳しく書かれていて分かりやすく、エピソードも多く読みやすい。GW中に気軽に読むのにオススメしたい一冊。


「囲碁定石事典」

2009年12月25日 | 書籍レビュー
 高尾紳路九段の「基本定石事典」の出版がアナウンスされてからいつの間にか1年以上もたったが、ようやく2月上旬に発刊が決まったようだ。
 これほどまとまっていて手頃な定石事典は、昭和50年に発刊された石田芳夫本因坊による「基本定石事典」が唯一のものだった。実に34年も前の出版になる。事典としてまとめるには全ての変化を調べなければならず大変な労力になるだろう。一人ではとても無理で、そうそうできるものではない。定石は絶えず進化しており、待ち望んでいた人も多いのでは。

「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著、新潮文庫)

2009年09月30日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著、新潮文庫)
 これまで、サイモン・シンのノンフィクションは「宇宙創生」「暗号解読」と読んで、いずれもすばらしかったが、この「フェルマーの最終定理」も、数学を知らない人に数学を面白く語る希有な一冊であり、すばらしい。これまで300年もの間誰も解けなかった「フェルマーの最終定理」をワイルズが1995年に証明した。この本では、この快挙について、数学よりも人間に焦点をあてて書かれている。中学や高校で我々が習った数学は面白くなかった。それは、教えていた教師自身が「数学」を本当に知らないからなのだと思い至った。

「いのちのバトン」(志村季世恵、講談社文庫)

2009年07月17日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「いのちのバトン」(志村季世恵、講談社文庫)
 少し前に紹介した「いのちのバトン」だが、つい最近7月15日に文庫版が講談社文庫から出版された。中身は単行本と同じだが、あとがきに悲しい近況が書かれている。

 それによると、3年前にご主人を海で亡くされたという。一緒だった娘さんには、それが自分のせいだったかのように思われ、心の傷となったようだ。


「いのちのバトン」(志村季世恵、岩崎書店)

2009年07月04日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「いのちのバトン」(志村季世恵、岩崎書店)

 囲碁棋士の梅沢由香里さんのブログで、志村季世恵さんの「いのちのバトン」という本が紹介されていた。書籍のタイトルにも興味を引かれさっそく購入し読んでみたが、梅沢由香里さんが号泣というのもけっしてオーバーではなく、オススメしたい1冊。

 著者はバースセラピストという仕事をされており、「人は大きな苦しみを持つと、孤独な気分になります。するといつのまにか人や自然とのつながりを忘れてしまったりするのです。解決方法を探そうにも、考えは空回りし、良いアイデアはなかなか浮かびません。たとえ誰かに適切なアドバイスをもらったとしても、実行する気力も萎えています。そんな時にそのかたわらで、そっと耳を傾けたり、つながりを心に取り戻したり、悩みのためにうまく片づけられなくなった心の中を整理整頓するお手伝いするのが、私の仕事なのです。」と書かれている。

 この本には、出会った事例が紹介されていて、最期まで母親として生きることを見いだす女性の姿、消耗した母親を小さな子供達が支えようとする姿、母親に自分を受け入れてもらいたくて必死に生きている2歳の女の子の姿・・・など涙なくしては読むことができない。良い書籍に出会い、それをまた紹介できるのは嬉しい。

 あとがきには、「ほんとうのことを言うと、私は患者さんが亡くなると、ものすごく落ち込むので、原稿どころではなくなります」と書かれている。



「暗号解読(上、下)」 (サイモン・シン著、新潮文庫)

2009年05月03日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「暗号解読(上、下)」 (サイモン・シン著、新潮文庫)
 「宇宙創生」でもそうだったが、著者は、暗号解読という難しい内容について、その手法・歴史をやさしく解説するだけでなく、それらにまつわる人間ドラマを描いているのは見事である。

 文字の頻度分布の解析による暗号解析手法は、20年以上昔に月刊ASCIIというコンピュータ雑誌に解析プログラムが掲載され興味深く読んだ記憶がある。さらにこれでもかこれでもかと暗号は高度になっていくが、その度に解読してしまう人が現れるのだ。暗号戦は国家と国家との戦いでもある。暗号が解読されたために命を落とす者、英仏があきらめたドイツのエニグマ暗号解読をポーランドが成し遂げるなど感動のノンフィクションである。先に紹介した「宇宙創生」だけでなく、こちらもぜひオススメしたい。

 面白くてあっという間に読んでしまうというのが難?

「宇宙創成(上、下)」 (サイモン・シン著、新潮文庫)

2009年04月18日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「宇宙創成(上、下)」 (サイモン・シン著、新潮文庫)
 これは面白い! 上巻を飛ばして下巻から読み始めたがそれでも十分面白い。宇宙はどうやってできたのだろう・・・、宇宙の果てはあるのか・・・誰もが一度は思うであろうテーマである。ここで「宇宙」とは「星」でも「銀河」だけでなく「宇宙全体」そのもののことだ。宇宙ができたところを見た人はいないのに、現在よく知られている「ビッグバン理論」に誰が、どのようにしてたどり着いたのだろうか。

 科学は、「理論(モデル)」と「データ(観測値)」からなる。「理論」はどんどん変わっていくが、「データ」は変わることなく事実として残り曲げることはできない。科学者は様々な「データ」からそれらを説明できる「理論(モデル)」を作り上げる。このため沢山の「理論」ができあがるが真理は1つだけだ。新しいデータを説明できない「理論」は捨てられる。

 宇宙創生の研究には、極めて多くの分野の研究者がかかわっている。量子力学・物理学・数学・・・そしてある研究者は「データ」を提供し、ある研究者は「理論」を提供する。感動するのは、自分のデータの中でノイズや異常値とも思える結果を安易に捨てずにとことん追求する人たちの存在だ。それらは、必ずしも宇宙創生の研究のために行うものではないが、突然他の分野の理論やデータと結びつくのだ。「理論」でも壮絶なバトルが展開される。宇宙の始まりを「計算」して理論構築する人たち。この理論が正しければ・・・が観測されるはずだと予言する人たち。その予言をひょんなことから発見する人たち・・・とにかく面白いノンフィクションである。ぜひオススメしたい。

「恋人よ」

2008年10月07日 | 書籍レビュー

 よくできたドラマ「恋愛時代」の原作の作者ということで読み始めた野沢尚。
 「深紅」「烈火の月」「リミット」「破線のマリス」の次に選んだのが「恋人よ」。四分の1読んだところだが、設定がすごい。普通の作家が書くレベルからさらに一ひねりも二ひねりもしてくる。人間関係をこれほどにまで絡ませて均衡を保っている現状がどのようになっていくのかが興味深い。「空気に微粒子が秋の日差しに反乱を企てたように視界をハイキーに染め、人間の登場を紗幕のように飾った。」少々飾りすぎのような気もするが、どこからこのような表現が浮かぶのだろうか。

「リミット」(野沢尚)

2008年09月11日 | 書籍レビュー
[感想:★★★--]
「リミット」(野沢 尚、講談社文庫)
 「深紅」の2年前に書かれた野沢尚の小説。厚いので通勤電車で読むのに少々日数がかかった。先が読めない展開・構想はなかなかのもの。後半の24章、25章では、ここぞとばかりに筆が振るわれ、涙をさそう。臓器売買等を目的とした児童誘拐を背景に血肉の愛が見事に表現されている。そして、誰も想像ができないであろう結末が訪れる!出てくる悪役も皆悲しい。
 『連続幼児誘拐事件の謎を追う警視庁捜査一課・特殊犯捜査係勤務の有働公子。婦人警官でなく、一人の母親として事件の当事者となってしまった彼女は、わが子を取り戻すため、犯人のみならず警視庁4万人を敵にまわすことに…。驚愕の展開、そして誰も予想だにしなかった戦慄の結末。ミステリーの到達点。』


「リミット」

2008年09月02日 | 書籍レビュー

 野沢尚の小説「深紅」「烈火の月」のあと、順番としては「破線のマリス」かとも思ったが、「リミット」を先に読み始めた。
 これもなかなか凄そうだ。臓器売買を目的に子供を誘拐する・・・日本でである。まとまった金が必要になり、今度は身代金を要求する。映画「天国と地獄」を思い出す重厚な表現だ。テンポもいい。身代金の受け渡しに、著者はどのようなトリックを用意しているのか・・・

「烈火の月」(野沢 尚)

2008年08月31日 | 書籍レビュー
[感想:★★★--]
「烈火の月」(野沢 尚、小学館文庫)
 「深紅」の次に読んだ野沢尚の小説。北野武の映画「その男、凶暴につき」の原作だが、映画では現場で即興で直しが入り原形をとどめないほどとなり、不本意だったようだ。なかなか重厚で読みごたえがある作品だと思う。この小説の出版の5か月後に著者は亡くなってしまったのは残念だ。

読破「深紅」

2008年07月30日 | 書籍レビュー

 野沢尚の「深紅」を読み終えた。最後まですごい小説だった。1章の家族に何かあったと知らされて病院へ向かう少女の気持ちの描写の見事さ。2章の殺人を行うに至った男の上申書の迫力。そして、3章以降、家族を殺され残った女の子が正体を隠し、殺人者の子供との汚名を背負った女の子に接近する・・・心の中で「お前が知っている事件の全貌を話してみろ。上申書にも書かれていない事実が、お前の口から語られるのなら、しっかり聞いてやる。」と・・・そしてその心の奥底に見たものは・・・実に見事な小説だと思う。

 さて、次の一冊は、野沢尚の「烈火の月」にするか、J.P.ホーガンの「揺籃の星」「黎明の星」にするか。

「深紅」(講談社文庫)

2008年07月22日 | 書籍レビュー
[感想:★★★★-:ぜひ勧めたい!]
「深紅」 (野沢 尚著、講談社文庫)
 すごい、すごすぎる。この著者の筆力は何なのだろう。読み進むと、心臓の鼓動は速くなり、行を追う目線は驚きのあまりふらつく。これに比べるとそこらの作家の小説は子供の作文とさえ感じる。書き進められる文章に圧倒され、恐ろしいほどだ。まだ全てを読み終えていないが、途中でブログに書き込んだことはこれまでなかったはずだ。

『父と母、幼い二人の弟の遺体は顔を砕かれていた。秋葉家を襲った一家惨殺事件。修学旅行でひとり生き残った奏子は、癒しがたい傷を負ったまま大学生に成長する。父に恨みを抱きハンマーを振るった加害者にも同じ年の娘がいたことを知る。正体を隠し、奏子は彼女に会うが!?吉川英治文学新人賞受賞の衝撃作。』

「千里眼の復讐 (角川文庫 クラシックシリーズ 4) 」

2008年07月16日 | 書籍レビュー
[感想:★★---:平均レベル(人によっては)]
 「千里眼の復讐」(松岡圭祐著、角川文庫 クラシックシリーズ4)
 松岡圭祐の他のシリーズは、落ち着いた感じがあってよいのだが、「千里眼シリーズ」は段々質が落ちているような気がする。特に「千里眼シリーズ」で主人公岬美由紀の正体が明らかになってしまったので、それより過去が舞台となる「千里眼のクラシックシリーズ」は今一魅力に欠ける。今回出版された「千里眼の復讐」はどうも趣味が悪く、読後の爽快感がまったくなく、読み終わるなりゴミ箱に捨てた。