囲碁には、定石というものがある。「ある局面において、双方最善を尽くした手順として知られているもの」である。
しかし、アマチュアだと「最善を尽くした」というあたりがあやしく、相手が定石通りに打ってこないことが多い。定石から外れた手順は外れた方が不利になるはずだが、必ずしもそうならないのは「結果」である定石の本道の知識しかなく、先人が調べたであろう脇道を自ら確かめていないのが原因。
ところで、プロも必ずしも定石通りに打つわけではない。上の図は、高尾九段の実戦。普通は、黒□を打って、白△の抜きの後、黒○とカケツグのが定石。□を決めず、黒17と逆側にカケツイでいる。
また、張/井山戦でも、張棋聖が□、井山名人△のあと、張棋聖が17と定石と逆にカケツイでいる。
ここらの理由については、「月刊囲碁ワールド8月号」を読んでいただきたい。
プロにとって、定石の体系は頭の中に入っているが、周辺の局面の状況によって評価が変わったり、相手が新手を打ってくる可能性がたえずあるわけで、いわゆる「定石」として認識しているのではないのだろう。日々の試行・検討のあとを振り返ってみると、それがいつの間にか定石と呼ばれていたということではないかと思う。
最新の情報に触れるには棋譜を読む必要があるが、最近、そのような最先端の検討について、月刊誌や単行本で紹介してくれる棋士がいるのが嬉しい。