ケンのブログ

日々の雑感や日記

業界のおじさん

2021年09月06日 | 日記
ちょっとしたご縁で、知り合いの建設業のおじさんと、おじさんの仲間の方とドライブ。

「いやあ、私も後期高齢者になりまして、本当に自動車保険料も上がってくし、大変です。
東京で高齢者の大きな事故もあったし、本当に私も考えなとは思ってます。ところで社長はおいくつですか」と仲間のおじさん。

「私は当年取って74歳です」と建設業のおじさん。

僕、とっさに頭の中で計算する、ええと、建設のおじさんは僕より25歳上だから今年84歳。
そうか、「当年取って74歳」は「十年(とうねん)取って74歳」の掛詞かと思いが至る。

後期高齢者が確か75歳からだから「当年取って74歳」は話題にも合致していて、しかも本当のことを話していて、お見事の二乗。神業(かみわざ)かもしれない。座布団10枚かなと思ったりする。

座布団10枚だと高すぎてこけてしまうかもしれないけれど。

「そうですか、私は当年取って65歳です」と仲間のおじさん。

そういえば、僕がまだ学生の頃、建設業のおじさんは歌を入れたカセットを僕にくださった。僕が「おいくらですか」と聞いたら、おじさんは「1000円ですがある時払いの催促なしです」と答えられて、未だに催促が来ていないことを思い出した。

「当年取って74」も「ある時払いの催促なし」も同じたぐいの言い方だなと思う。

男はつらいよの寅さんも雨が降ると「テキ屋殺すに刃物はいらねえ、雨の3日も降ればいい」と言ったりするけれど、こういう肉体系の業界の方の言い回しって独特だなと思う。

ちょっと道の話になって「僕は運転になれてないので道に迷わないために、細い道は通らずに時間がかかっても国道沿いに走ります」と僕。

「そうですか、あなたは王道を行くタイプですね。私はもっぱら裏道街道です」と仲間のおじさん。

そんなこと言われたことないし、運転が下手ということを言いたくて国道沿いと言ったのに僕、困ってしまう。

王道なんてとんでもない話だし。

何も言えないので、黙ってにやけていた。

「バイパスもへたに通ると立体交差で、行きすぎるのであまり通りません。昔の道沿いを走ります。結局そのほうが早いこともあります」と僕。

「そうです、案外バイパスは混むことがあります。昔の人間は昔の道を行きましょう」と仲間のおじさん。

「そうですね」と僕。

そういう言い回しに慣れていないので 「そうですね」 と答えるのが精一杯だ。

自動車が木曽川沿いを走り南に進路をとれば成田山(名古屋別院)というあたりを通った。

「ああ、成田山の近くですね。昔、親父に連れられて、成田山に車のお祓いに行ったら、成田山に登る街道は大渋滞。車のお払いに行って渋滞で事故になっては話にならんと思って引き返しました。そんで、近くの交通安全に全然関係ないお宮に行ったら、宮司さんに『めったにない客やから、仕事ができてありがたい』と喜んでもらえました。まあ、ご利益があったのかどうかわかりませんが」と仲間のおじさん。


そうか、成田山は交通安全か、そういえば南回りで大阪と京都を結ぶ私鉄の車両にも成田山の御札が連結部の脇に飾ってあったっけと思い出したりする、、、。

「南回りの私鉄は線路の幅がちょっと広くて新幹線と同じなんです。だから走行が安定してます」と話してくれた大阪のおじさんもいたっけ、、、。

太陽光パネルがいっぱいあるあたりを自動車が通過。

「パネルが伊勢湾台風みたいのが来て、もし一枚二枚とバラバラに飛んでったら、誰のパネルかわかりませんね」と仲間のおじさん。

「そういえば、そうやなも」と建設業のおじさん。

「パネルにもマイナンバーをつけて、新設のデジタル庁に届け出制にしたら、安全意識が高まるかもしれません」と仲間のおじさん。


僕はどう答えたらいいのかわからないので、適当ににやけている。

でも、やっぱり田舎で、こういうパネルの光景を見ているとそういうことも心のなかに浮かぶのだろうと考えていた。

「いやあ、総理大臣は誰がなっても、アフガニスタンみたいに拳銃で見張っておかんと、コロナの収束は無理かも知れません。でも、昔の憲兵やあるまいし、今の日本でそんなことやったら、反発食らうに決まっとるし。ワクチンも2回と言っとったのがいつのまにか3回になっとるし、もう本当にどうなるのかわかりません。こればかりは、本当に困ったことです」とおじさんは続けられた。

まあ、本当にこればかりはどうなるかわからないと僕も思う。口に出しては言わなかったけれど、、、。

しかし、業界のおじさんの話術もここまでくると立派な一つの芸だなと思う。

無料でその芸に触れさせてもらえることはありがたいことかも知れない。

All the world's a stage,

And all the men and women merely players.

この世は舞台 男と女はみな役者だ(お気に召すままより)

というシェイクスピアの言葉をしみじみと思い出す。

このシェイクスピアの言葉って、自分の人生を相対化して眺めるきっかけを心に与えてくれるし、その意味で、心によい影響を及ぼすものだなと思う。

それは、チャップリンの
「人生は近くで見ると悲劇だけれど、遠くから見ると喜劇だ」という言葉が僕の心に与えてくれる影響に似ているなと思う。

それはともかく、一日一日無事に過ごせますように、それを第一に願っていきたい。