母と県庁所在地の百貨店へ。
入口のドアをくぐり抜け、母がエスカレーターに乗ろうとするとピピピピーとおまわりさんのような笛が鳴った。
というわけではないけれど、
女性の職員が母の方に歩み寄ってなにか声をかけている。
小声なので何を話しているのかわからないけれど、振り返った母を見るとマスクをしていない。
ああ、マスクをするように注意されてるんやと思った。
母も耳が悪いのか、よく話が飲み込めないのか、わからないけれど、ちょっと、女性の職員と母が向き合って、膠着状態になっている。
僕はたぶんコワモテではないとおもうけれど、頭が丸刈りで目がでかいので職員を威圧してはいけないと思って、そばには行かず、ドアの脇のアルコールスプレーのあたりでそれを見ていた。
どうも、話が進展しないようなので、母を手招きで、僕の方に呼んだ。
話を聞いてみると、マスクはトートバッグの中にあるという。
ところが、そう簡単に見つかりそうにない。
椅子に座って落ち着いて探したらと促したけれど、コロナで椅子も少ない上に硬い椅子しかおいてない。
もう探しているよりも百貨店の隣のスギ薬局で買ったほうが早いと思った。
職員の人は、よかったらマスクをお出ししましょうかと言いたげだったけれど、それもちょっとシャクというか恥ずかしいと言うか、なんとなく買いに行った方がいいと思った。
母にこの硬い椅子に座って待っているようにと言ってダッシュしてマスクを買って戻ると母はいない。
あれ、と思っていると先程の職員の方が「お連れ様が5階エレベーター前のソファでお待ちです」と言った。
何?マスク無しで強行突破して5階まで行ったんか?と思いつつ、職員の人に「それは おおきに わかりました」と言って5階へ。
ソファのところで待っていると母がトイレから出てきた。
見ると、マスクをしている。
「結局、職員の人にマスクもらったの?」と問えば「カバンの中からマスク出てきた」と母は言う。
まあ、それはよかったけれど、なんか息のしにくそうな分厚いマスクをしている。
職員の人に5階で待つと伝言してから5階に行けるのも人生経験かと思ったりする。
地下の食品売り場へ。
「ちょっと、きゅうりの奈良漬けないか見てよ」と母が言う。
僕は人に聞くよりもパッケージの説明を読んで商品内容を知るタイプなのでパッケージを見ても、瓜そして大根 というのはあるけれど、きゅうり というのはない。
なにかの間違いやないかと思って「本当にきゅうりの奈良漬けってあるの」と問えば「ある」と自信を持って母は言う。
店員の人にも「きゅうりの奈良漬けないかね」と聞いている。
「ちょっと、きゅうりの扱いはございません」と店員の方は答えている。
僕は瓜という字をみながら、亡くなった義理の叔父が
「瓜に爪あり、爪に爪なし」(うりにつめあり つめにつめなし)と漢字の覚え方を語呂で教えてくれたことを思い出す。
本当に、旧制教育を受けた人に教えてもらったことって七七の語呂で耳に入りやすく記憶に残りやすいなとおじのことを思い出す。
きゅうりの奈良漬けはあきらめて魚肉練り製品のコーナーへ
「母がこのちくわどう?」と問うのでパッケージを見ると裏に小さくサマサと書いてある。
「これ、ヤマサってなってるよ。そういえば昔よくラジオで『豊橋名産ヤマサのちくわ』って言ってたな」と僕。
「豊橋名産ヤマサのちくわ ここにある」と母が自分の真下のあたりを指さして言う。
見るとパッケージに、そのまんま 大きいロゴで「豊橋名産ヤマサのちくわ」と書いてある。
それで、母は、豊橋名産ヤマサのちくわ をかごに入れた。
そのまんま 買うことになってしまった。
いやに耳に残っているサウンドロゴだなと思って 豊橋名産ヤマサのちくわ と指を折って数えてみると
七七ではないけれど八七で、まあ言えば七七の字余りの形になっている。
これだったら、そのまま大相撲の懸賞で「この取組には豊橋名産ヤマサのちくわより懸賞があります」とアナウンスしても違和感がないどころかキレイに収まりすぎと心のなかで考えたりする。
買ったのもを袋詰することになって、氷が必要になった。
「氷いくついる?3×3で9つくらいか」というと母は「そうやね」という
それで9つ氷の袋(甲子園のかちわりのような袋)を持っていくと、母は「こんなにいらん3つで十分」という。
本当に話が通じているのかどうかわからないと思いつつ、余った氷を冷蔵庫に返しに行く。
返した瞬間、今はコロナだから「一度取り出したものを戻すな」 と言われたらどうしようと思って、ちょっと周りを見たら、誰もいない。ホッとした。
次からは、ちゃんと余らないように氷を取るか、戻すときにはアルコールスプレーをしてから戻すか真剣に考える。
でもアルコールスプレーのアルコールは飲めないはずだから、それもまずいかと思ったりして、、、。
まあ、今日は結果オーライでよかったけれど、、、
気をつけないと こういうご時世だから。
それはともかく いちにち いちにち 無事に過ごせますように、それを第一に願っていきたい。