『大いなる西部』(58)(2012.10.17.鎌倉市川喜多映画記念館)
一時期、妻と共に「お気楽映画談議」というブログをやっていた。その時の記事から。
夫…この映画の主人公はグレゴリー・ペック扮する東部から西部にやって来たマッケイ。ところが、本来ヒーローであるはずの彼の行動や言動が何だか身勝手に見えて感情移入ができないんだな。むしろ彼と敵対するチャールトン・ヘストン演じる西部の牧童頭リーチの方が魅力的だし、行動や心情にも一本筋が通っている。というわけで、この映画はヒーロー西部劇としてはちょっと異端なんだね。プロデューサーも兼任したペックが、あえて自分を損な役回りにしたのだとすれば、それはそれですごいと思うけど…。
妻…初めて見た時はペックのさわやかさにやられてしまいましたが、今回は違ったぞ。マッケイの空気読めなさ加減にうんざり。人の忠告を聞かない、自分が大好きな男なんだから。
夫…この映画はペックVSヘストンというヘビー級の対決に加えて、水源地をめぐるバール・アイブスとチャールズ・ビックフォードの旧世代の親父同士の対決、マッケイを間に挟んだジーン・シモンズとキャロル・ベイカーの女同士の対決が描かれているけど、そんな中、一人で右往左往するチャック・コナーズのドラ息子も結構いいんだよね。
妻…チャック・コナーズのダメダメぶりがかわいいです。
夫…後は、対立する両家の間をひょうひょうと渡り歩く牧童を演じたメキシコ人俳優のアルフォンソ・ベドヤがいいね。彼はジョン・ヒューストン監督の『黄金』(48)などにも出ていた名脇役だけど、残念ながらこの『大いなる西部』が遺作なんだね。
妻…そんな人いたっけ? 毎度、顔と名前が一致せん。『黄金』は私のベスト映画の一本ですが…
夫…ペックが乗る荒馬の世話をしていて、ラストでペックとシモンズと共に馬に乗って去っていく彼だってば。
夫…この映画の日本公開当時(1958)の批評を読むと「ウィリアム・ワイラー監督の横綱相撲」なんてことが書いてあって、すこぶる評判がいい。寂しいことに、今やワイラーの名前は、オードリー・ヘプバーンの『ローマの休日』(53)の監督としてしか語られないところがあるけれど、当時は巨匠中の巨匠という存在だったんだよね。
『これぞ映画遺産!!次世代に残したい名作映画96』
パンフレット(58・松竹事業部(SHOCHIKU KAiKAN CENTRAL THEATRE 1959 NO33.))の主な内容は
「大いなる西部の六人」「大いなる西部」印象的の場面/ルファス・ヘネシイ/激闘シーンに実に十四時間を費やす/物語/出演者の横顔/大いなる西部に就いて(南部圭之助)/ウィリアム・ワイラー大河監督とその足跡/西部劇の歴史・西部劇百科(南圭生)