田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ANORA アノーラ』

2025-02-13 09:53:33 | 新作映画を見てみた

『ANORA アノーラ』(2025.2.6.東宝東和試写室)

 ニューヨークでストリップダンサーをしているロシア系アメリカ人のアニーことアノーラ(マイキー・マディソン)は、ロシア人の御曹司イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会い、彼がロシアに帰るまでの7日間、1万5000ドルの報酬で「契約彼女」になる。

 パーティにショッピングにとぜいたく三昧の日々を過ごした2人は、休暇の締めくくりにラスベガスの教会で衝動的に結婚する。だが、ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が娼婦と結婚したとのうわさを聞いて猛反対。離婚させるべく、現地でイヴァンの世話をする男たちを2人のもとへ送り込んでくるが…。

 ショーン・ベイカー監督が手がけた人間賛歌の物語。昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。今年のアカデミー賞では作品、監督、主演女優、助演男優(ユーラ・ボリソフ)、脚本、編集の6部門でノミネートされた。

 前半の『プリティウーマン』風のシンデレラストーリーから一転し、中盤は逃亡したイヴァンを尻目に男たちとアノーラが繰り広げる壮絶でコミカルなやり取りとイヴァンを捜す追跡劇が中心となる。そしてイヴァンの正体が明らかになる終盤へと続く。一見めちゃくちゃなカオスにも見えるが、実はちゃんとした三幕構成になっている。

 その中で、身分違いの恋という古典的なシンデレラストーリーのその先をひたすら下品に描き、ソフィスティケート(洗練)されていないスクリューボールコメディ(突飛な行動を取る登場人物が出てくる喜劇)として見せる。これが現代風でリアルということなのかもしれないが、好みは分かれると思う。

 アノーラが幸せを勝ち取ろうと全力で奮闘する姿を等身大で演じたマイキー・マディソン。セクシーなだけではなくパワフルなヒロインの、その先にある悲しさまでを表現したところには感心した。オスカー受賞もあるかもしれない。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「BSシネマ」『風とライオン』

2025-02-13 07:22:19 | ブラウン管の映画館

『風とライオン』(75)(1977.1.22.渋谷全線座.併映は『さらば愛しき女よ』)

 1904年、モロッコのタンジールで、アメリカ人のペデカリス夫人(キャンディス・バーゲン)と2人の子どもがリフ族の首長ライズリ(ショーン・コネリー)に誘拐された。事態は国際紛争となり、アメリカのセオドア・ルーズベルト大統領(ブライアン・キース)は大西洋艦隊をモロッコへ向かわせる。一方、誘拐されたペデカリス夫人は確固たる信念を持つライズリに温かな感情を抱くようになるが…。

 ジョン・ミリアス監督の豪快な演出、ビリー・ウィリアムズの撮影、ジェリー・ゴールドスミスの音楽も魅力的。『アラビアのロレンス』(62)を思わせるところもある映画。コネリーがやたらとカッコいい。特にライズリが馬に乗りながら銃を持って去っていくラストシーンは感動的ですらある。バーゲンもなかなかよかった。

 黒澤明が大好きなミリアスは、西洋的な合理主義ではなく、東洋的な思想に傾倒しながら伝説を語るところがある。また、この映画はジョン・フォードの『捜索者』(56)からの影響も受けているという。

 高校時代に、リフ族とセオドア・ルーズベルトとの関係についてリポートを書いて褒められた思い出がある。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする